いっしょのひとり


11月ももうだいぶ過ぎて、そろそろまわりがそわそわしてん。 もうお菓子屋さんやないちゅうのに、キッチンは粉やクリームでいっぱいや。


ほいで、ちょいと横見ると、こっちはコゲコゲのかたまりがいっぱい。

コゲコゲの前には、ハナちゃんがちんまり座って、

「うぅ〜‥‥」

って、さっきっからずっとうなってん。


「ほぉラ、ハナちゃん。考えテもだァめだヨ。最初っからやりなおしィ!」

ももちゃんに教わってんから、食えんものにはならへんやろうけど‥‥

「そうそう、あいチャン。今日は主役なんだカラ、手伝っちゃだぁメ!だからネ

はぁ。ももちゃん、お菓子のことになると厳しいからなぁ。ハナちゃんも大変や。

そう思いながらキッチン出てこうとしたら、ハナちゃんががばっ、と跳ね起きた。

「ちっが〜うよ!台はちゃんとできてるもん」

指さしてる先見てみたら‥‥ああ、たしかに。コゲコゲの山やと思うたら、そん中にひとつ、きつね色の丸いのがあるわ。

「スポンジまでできタのなら、あとはクリームだけじゃナイ。なに悩んでるノ??」

「あわだたないの」

くちばし、ツンと出しながらハナちゃんが言うた。

あたしはももちゃんと顔見合わせて、思わず吹き出してしもた。ああ、あかん。ハナちゃんジロッてにらんでるわ。

「クリームなんて簡単や。材料しっかりはかって入れたら、あとは手やのうて体いっぱい使ぅて泡立てたらええねん」

ももちゃんがちろっ、と見てる。あたしは軽ぅ手ぇ振った。こんくらい、手伝ぅたうちにはいらへんて。

ハナちゃんが立ち上がって、ボールに材料入れてった。片手にボール、片手に泡だて器持って、

「体であわ立てる。からだ。からだ‥‥せ〜、のっ」

右手と左手を逆に回して、すごい勢いで泡立て始めた。やるもんやなぁ。ももちゃんも目ぇ開いて見つめてるわ。

「う、うぉ、うぉぉっとっとっと‥‥」

あ、ありゃ? なんや、動きが怪しなってきたな。まわしてるボールがヘンな方向行ってるわ。それ追いかけて、よろよろ歩いてもうてるやん。

「ハナちゃん。その辺でやめといた方が‥‥」

「うぁひゃ!」

あかん!


だっぱぁん!


あちゃあ。倒れそうになったハナちゃん、とっさに受けとめたんはええけど、

「うぁ!べとべとぉ〜」

あたしも一緒にクリームまみれンなってもぅた。

かっぽ〜ん‥‥


あぁ、よぉ響くわぁ‥‥

MAHO堂のお風呂、いつの間にこんなん広ぅなったんやろなぁ? ほとんどハナちゃんしか使わへんのに、あたしと一緒に入ってもまだ余ってるわ。

湯船の横にはは大きな鏡、せっけん入れにはあたしとハナちゃんのタップ。服と違て、洗濯機で洗うわけに行かへんしな。

んで、そのわきに‥‥ん?なんか大きなもんあるなぁ。丸ぅて、穴あいて‥‥なんやったろ、これ?

いろいろ見ながらの〜んびりしとったら、湯船の向こう側から、ハナちゃんがぽつん、て声出した。

「あ〜いこ、ホントにお泊りでよかったの?」

あン?なにいまさら言うてるんやろ。

「なんでや?」

「だって、だってさ。おかぁさんといっしょの誕生日の方がいいんじゃないの?」

‥‥ああ、それかいな。

そう言えばハナちゃんは、あたしら――お母ちゃんがいきなりいなくなるの経験してるんやったな。
特別な日にお母ちゃんに会えないんは、悲しい思うんも無理ないか。

「そやったら、ハナちゃんとは一緒にでけへんなぁ‥‥それでええのん?」

あたしが軽く言うたら、ハナちゃん、目玉広げて

「イヤ!ハナちゃん、ちゃんとおめでとうしたいよ」

それからすぐに目ぇ伏せてしもてん。

「‥‥でも、でもさ、ハナちゃん、あいこと毎日一緒だモン。 だったらお誕生日くらい、おかぁさんにゆずってあげなきゃダメかなぁ、って」

口までお湯につかりながら、ぶくぶく言うてるハナちゃん見てたら、なんや勝手に顔がほころんでまうわ。

「ハナちゃんはええ子やなぁ」

あたしは言いながら湯船の反対側まで行って、ハナちゃんのあたま、なでたげた。

「そやけど、ええんや。おかぁちゃんも、まだあたしが行くのに慣れてへんから、 かえって気ぃ遣ぅてまうし。 誕生日は毎年あるんやから、のんびりやっとってもええやんか」

お湯にぬれて、なでるとするっとすべる髪が、ぴょこんと持ち上がった。

「そっか。だったら、来年はゆずったげるね

ああ、元どおり、キラキラの目ぇがこっち見とん。やっぱ、ハナちゃんはこうでないとあかんな。

「おおきに。あははっ‥‥ほんじゃ、もうこの話はこれでおしまいや。さぁハナちゃん、あたま洗ぅたるわ。一緒にあがろ」

あん? なんや、ハナちゃんいきなりむくれてもうたな。‥‥あ。はっは〜ん。

「ほぉら、ハナちゃん。ちゃんとシャンプーせな、あかんて」

先あがって、ハナちゃんの両肩をよいしょ、っと引っ張り上げたら、湯船の端っこにしがみついてしもた。

「ぶぅ〜、やぁだぁ!ハナちゃん、おぼうしないとダメなの!!」

やっぱそうや。あの大きな丸いもん、シャンプーのとき使うぼうしやったんなぁ。

「ハナちゃんもう6年生やろ?そないなこと言わんと、ほら、目ぇしっかりつむっとったら、なんも痛ないって」

わきの下抱きかかえて、よいしょっと持ち上げてからそのまま座らせて。ええと、シャンプーは、っと‥‥

「だめ〜っ!だめダメだめダメだめぇぇ〜っっ‥‥うぎゃ!!」

髪の毛多いからなぁ。シャンプーするんはひと苦労やな。

「いった〜ぁい!!いたいイタイ痛いぃぃ〜ッッ!!」

あぁ、そやから目ぇつむっとれ、言うたんに。

「もう、すぐ流したるから‥‥」

「もう、イヤッ!ハナちゃん、痛いのなくすっ!!」

言いながら、ばっ、と手ぇのばして、何かつかんできた。あぁ、あたしのタップが落っこってるやんか。 ちゅうことは、いま握ったん‥‥うぁっ!!

「ちょ、ちょい待ちや。なんで見習い服なんか‥‥」

落ちたタップ拾って振り向いたら、ハナちゃんもう着替えおわってた。目ぇつぶりながら、両手ぐるぐるまわしてん。ま、まさか!?

「‥‥痛いのぉ〜ぜんぶぅ〜 消えちゃえぇっ!」

あ?わ! な、なんやぁ!?

「あれ?」

いてっ!‥‥ったたた。あぁ、もう。 ハナちゃん、いきなり魔法使ってはじき飛ばすんやもんなぁ。

「あれ?あ〜いこ?」

‥‥ん、なんや声遠いな?

「あ〜いこ、どこいったの?」

どこて‥‥んぁ?なんでこんな暗いんや? ハナちゃん、電気まで消してもうたんか。ッたく、しゃあないなぁ

‥‥ちょい待ちや。いま昼間やないか!?

「あれれれ?どこ行っちゃったのかな??」

ああ、後ろに明かりが‥‥って、どぁぁ!! なんでハナちゃんが窓の外におるんや!?

「もう上がっちゃったんだね。せっかちさんだな」

ちゃう、っちゅうねん!

もう、こんな窓どこにあったんや? 開けるすきまもあらへんし‥‥ええと、他に入るとこは‥‥

‥‥ありゃ?後ろにぼぉっと見えるんは、湯船やんか。シャワーもあるし‥‥ってことは。これ窓やない、鏡やん!?

「ハナちゃん、もうちょっと入ってくぅ‥‥」

だぁ〜っッ! ハナちゃん待ってぇな!! ここから出してぇ!!

はぁ、なんとかタップつかんどってよかった。そうやなかったら、はだかんぼのまんまやったわ。

あたしの目の前の鏡には、もうハナちゃん映ってへん。ちょっとヒビ入ってるんは、さっき体当たりしたせいや。 魔法も使ぅてみたけど、まるっきり効かへんなぁ。ハナちゃん手かげんなしでやってもうたんやな。

それにしても‥‥あ〜あ、ひとりぼっちなってしもたなぁ‥‥


どうやら、ここの作りはMAHO堂とおんなじみたいや。そやけど‥‥

「電気はないんかぁ」

スイッチぱちぱちやっても、明かりがつかへん。

まっくらな中、明るいのはあっちこっちの鏡。向こう側の明かりが入ってきてるんやな。

うすぼんや〜り明るいだけ。真っ暗いよりましやけど‥‥やっぱ、あかんな。暗いところにひとりやと、いろんなこと考えてまうわ。

いつもはみんなと一緒やから、考えるヒマもないけど、考えなあかんこと。

「あたしも、大人になるんやろなぁ」

ついつい言葉になってる。ひとり言なんて、あんま言うたらあかんのやろうけどな。

「おんぷちゃんは女優、ももちゃんはお菓子屋さん、かぁ‥‥」

二人とも、もう今すぐでもできそうや。 あたしは‥‥あたしは、どうなるんやろなぁ。


お母ちゃんのとこ手伝いに行って、介護ちゅうんが難しいのはよぉわかったわ。 これから、お母ちゃんと一緒に、助けおぅて、支えおぅて‥‥そんなん、できるんやろか? あたしは、あたしはやりたいこと、あってええんかな?


あかん。考えてたら寒なってしもた。あぁ、だれかおれへんか?もうだれでもええ、この際ババでもええわ。暗いとこもぅいたない。明かりは、明かりはどこや!?

「お〜んぷ、おっそ〜い!」

わたしがMAHO堂に入って、すぐ飛びついてきたのはハナちゃんだった。

「ごめん、ちょっとお仕事入っちゃったの。また後で出なくちゃいけないけど」

あ〜あ、むくれちゃって。まぁ、これはこれでかわいいんだけど。

あら?そういえば、今日のケーキはハナちゃんが焼く、って言ってなかったかしら。

「ハナちゃん、バースディケーキはできたの?」

とたんにぱっと離れてにっこり笑ってVサイン。

「もうバッチリ!」

「なぁにが『バッチリ』なんだか」

トントン、と階段のぼりながら、どれみちゃんが声をかけてきた。

「スポンジはなんとかなったけど、クリームひっくり返しちゃって、結局最後はももちゃんにデコレーションしてもらったんじゃない」

「てへへへ。失敗しっぱい」

ハナちゃん、頭をかきながら照れ笑いしてる。登ってきたどれみちゃんが、やれやれ、って顔してたけど、ふいにきょろきょろ見回して、

「そういえば、あいちゃんは?」

あら?

「あいちゃんが、どうかしたの?」

言われてみれば、どこにもいないわ。声も聞こえないし。

「うん、そのクリームひっくり返しちゃったとき、あいちゃんが巻き添えになっちゃたんだよ。で、さっきまで二人でお風呂入ってたんだけど‥‥」

ちろ、っと二人の視線が重なった。

「知らな〜いよ。ハナちゃんより先に上がっちゃったんだもん」

変ねぇ。ハナちゃん置いて上がっちゃうなんて、あいちゃんらしくないわ。

「あら?あいちゃん、まだお風呂じゃないの?」

声のほうを見たら、洗面所の方からはづきちゃんが顔を出してた。

「まだお洋服の洗濯、終わってないけど‥‥」

わたしは、ちょっとだけ嫌な予感がした。目の前にある、ぱんぱんにふくらんだバッグ、これってたしか‥‥

「ハナちゃん、あいちゃんはいまなに着てるの?」

「え?う〜ん‥‥わかんない」

「今日はお泊りだカラ、着替え持って来てるんじゃナイの?」

キッチンの方から顔出したももちゃんが言った。 そう、わたしもさっきまで、そう思ってたんだけど‥‥

「このバッグ、あいちゃんのよね。開けたようには見えないわ‥‥」

「ちょ、ちょっと待っておんぷちゃん。それって、まさか‥‥」

はづきちゃんが真っ赤な顔で言った。わたしは軽くうなずく。

「あいちゃん、はだかのままどっか行っちゃったってこと!?」

‥‥いや、問題はそうじゃなくって。


わたしはちょっとだけ頭をおさえながら、お風呂場に行ってみた。

ドキン、ドキン、ドキン‥‥


はぁ。ようやく心臓の音がいつもみたいになったわ。ずいぶんかかってしもたなぁ。

あたしは、店の大きな鏡の前でしばらくしゃがみこんでた。ここが、一番明かりが入ってきたからや。

ちょっと落ちついてみると、いろんなことがわかってきた。 たとえば。どこの鏡も、もとの鏡とつながってるとか。

あたしの右手には、ハナちゃんの部屋から借りてきた手鏡がある。思ったとおりや。持ち歩いても、鏡の向こうはハナちゃんの部屋が見えてん。


あたしは、手鏡を懐中電灯がわりにかざしながら、MAHO堂を歩き回ってみた。

歩き回ってわかったんは、明かりがないだけで、あるもんみんなちゃんと動くこと。キッチンのコンロにオーブン、お風呂場のシャワーに湯沸し、トイレも洗面所も使えるし、冷蔵庫ン中には食べ物まであるわ。

「いきなり大ピンチ!っちゅうこともないみたいやな」

そやけど、はぁ‥‥

「なんも、誕生日にこないなことならんでもええのになぁ」

おまけに、いつもと違ぅてひとり‥‥

「だぁ〜ぁあっッ!!」

はぁ、はぁ‥‥あかん。ひとり、ちゅうんは当分考えんようにせんと。

お風呂場には、ミミとロロがいた。わたしに気づいたロロが、差し出した手のひらに飛び乗ってくる。

「ロロ、どうしたの?」

「ロ、ロロロ、ロ〜ロ」

え、ミミの手伝い? ‥‥そっか、ミミもあいちゃん探してるんだ。

「ミ!」

ミミが鏡の前で何か言ってる。わたしはその鏡をよく見てみた。

「ひび?」

鏡に、いく筋かのひびが入ってた。でも普通のひびじゃないわ。 だって、太いひびの向こうには、わたしが映ってない。映っているのは暗いお風呂場だけなんだもの。


鏡を見ながらいろいろ考えて、決めた。

「ロロ、ミミ。お願いがあるんだけど‥‥」

「間違いないよ。あいちゃん、ハナちゃんの魔法で飛ばされちゃったんだ!」

店の大きな鏡の前に戻って座ってると、向こうではみんなが集まって話しとった。

「もぉう!ハナちゃん、め!だよ」

「ごめんなさい‥‥」

しょんぼりして、ちょっとかわいそうやな。どれみちゃん、あんま怒らんといてや。

「あやまるのは、あいちゃん見つけてから! じゃ、みんなで手分けして探そ‥‥あ、あれ、おんぷちゃん?」風呂場のほうからおんぷちゃんが歩いてきた。肩にミミとロロ乗っけて。ミミ、何してんやろ?

「おんぷちゃん、いままでどこ行って‥‥って、ちょ、ちょっと、どこいくの?」

おんぷちゃんはそのまま店の出口に歩いてってる。あ、ドアんとこで振り向いたわ。

「ん?‥‥わたし、お仕事だから。それじゃ」

ぱたん、って閉まったドア見ながら、みんなあっけに取られてンなぁ。‥‥にしても、えらいあっさりやな。っちゅうことは‥‥

「お〜んぷ、どうしたんだろ?」

ハナちゃんがぽそ、ってつぶやいてる横を、 ミミとロロがふわふわ飛び回ってる。‥‥んにゃ、ミミとロロだけやない。

「なに、ニニ?ロロについてくノ?」

「レレ、あなたも?いったいどうしたの?」

「ドドも!?ちょっと、なにがどうなってんのさ!!」

妖精がひとかたまりになって、なんや、テーブルの上でゴソゴソやってんけど、ん〜、ここからやと見えへんなぁ‥‥

「ええぇぇッ!!」

な、なんや、なんや!?

「どれみチャン、声大きイ! マジョリカに聞こえチャウよ」

「ごめんごめん。‥‥わかった。じゃ、あたしたちはそのまま準備、ね」

え、え? ちょっと、みんななんでキッチンこもってまうんや?

お〜い、あたし探さんでええのかぁ!?

そのまま夜。あたしは、店の鏡の前にすわっとった。

真ん中の大きなテーブルにはケーキに食べ物。ケーキの上のロウソクは、あたしの12本とミミ用の4本。 そやけど、みんながおれへん。

さっきまでパーティの準備で忙しそうに走り回っっとったけど、今は電気も消してしもて、こっちと同じくらい薄暗い部屋や。

わからんのは妖精やな。あっちこっちの窓やらなんやらに貼り付いて、なにしてたんやろ?ミミもさっきこの鏡に頭ぶつけてたしなぁ‥‥まぁ、ええか。


ハナちゃんの部屋から持って来た手鏡には、カラのベッドが映ってる。 まだ部屋には戻ってへんみたいやな。はぁ、みんなどこ行ってしもたんやろ?


‥‥不思議なもんや。また薄暗い中でひとりになってもうたんに、昼間と違て、心臓ばくばくせぇへん。慣れたんかな?‥‥どんなことでも、慣れていけるんやったらええんかもしれへん。けど。

そう思いながら鏡の向こう見てたら、ヘンな光が浮かんでた。ヒョイヒョイ、って動いて、あたしが近づいたら消えてまう。何やろなぁ、思てまた座ってみたら、同じところに光が‥‥ん?あ! この手鏡や。

「そっかぁ。あっちの光、鏡でなら跳ね返せるんやな」

そうとわかれば、あとは来るのを待つだけや。

みんなはだませても、あたしはだまされへん。絶対、来る。


カタッ


ほぉら、来た来た。

「あら?」

あっちの月の光、ハナちゃんの手鏡に当てて、ドアの前に立ってる顔に‥‥

「何かしら、いまのひかり‥‥」

たのむで。気ぃついてや!!

「ひかるものなんて、ないわよねぇ‥‥」

もうちょっとや、おんぷちゃん、気づいてぇな!!

「まただわ。いまの、あの奥から‥‥あ、鏡」

こっち見とる、いまや!

「おんぷちゃん、おんぷちゃん、おんぷっちゃぁぁぁん!!」

これであかんかったら、もう、もう‥‥

「のど、見えてるわよ」

え‥‥?

目ぇあけたら、目の前におんぷちゃんが映ってた。

「ふふふ。みぃつけた」

「おんぷちゃん‥‥」

なんや気ぃ抜けて、ちょっと涙出てしもた。

「わたしの声は聞こえるのね?それじゃ話はあと。抜け出すのもね。とにかく、もう時間がないんだから。\par

よ‥‥ぃしょ、っと」

目の前がぐらぐら、っと揺れた思たら、だんだんテーブルが大きなってん。

「おんぷちゃん?鏡運んでんのんか?」

「ふぅ。じゃ、火をつけるわよ」

12本のあかりが、目の前についた。

「吹き消すのは無理よね。いいわ。せーの、で一緒に吹こ?」

せー、の、って息を思い切り吸い込んで、

「「ふ〜っ」」

ロウソクの火が全部消えたとたん、ぱっ、とあかりがついた。

「おめでと〜」

なんや、なんや?

「ハナちゃん、いっけぇぇっ!」

「‥‥あいこをぉ〜かがみからぁ〜出してぇっ!!」

う、うぁ、うわあぁぁ‥‥っ!!

引っ張られたあたしが、鏡にぶつかる思てぎゅっと目を閉じたら、顔から何かにぶつかった。ガラスみたいに冷たない、床や。

出られたんや!!

パーティの真ん中、ケーキの周りには、ミミたち妖精が座ってた。

今回は、ずいぶん働かせてもうたから、あたしからのお礼や。 さっき、鏡に頭ぶつけてたんは、あたしがどの鏡にいるか調べるためやったんやな‥‥そやけど、

「どれみちゃんたちひどいなぁ。わかってたんやったら、もっと早ぅ出してくれたってもええのに」

「ごめ〜ん。実はさ、ロロに止められてたんだよ」

頭かきながら、どれみちゃんがケーキのほう指さしてる。

「ロロに?」

ちらっ、と指の先見てみると、他の妖精の後ろにかくれて、そっぽ向いてん。

「そう。おんぷちゃんが戻るまで、だめ〜ッ!って」

「わたし、そんなこと頼んでないわよ?」

「きっと、ロロが気をきかせたのよ」

はづきちゃんが、レレと顔を見合わせて、くすくす笑ぅてる。

「まぁ、助かったんやからええけどな」

とりあえず話切って、他のみんな見てたら‥‥あれ、おんぷちゃん、手ぇケガしてないか?

じ〜っと見てたら、

「あ‥‥えへ、バレちゃった?」

「なにやったんや、それ」

「ちょっとね」

むかっ

「まぁたそんなん言うて! ちゃんと言わなわからへんてあれほど‥‥」

ダンッ、って机たたいて近寄ったあたしの前に、おんぷちゃんの手が出てきた。

「スト〜ップ! 今のセリフ、わたしが言いたいのよ」

え?

「ハナちゃんから聞いたわ。なにか、悩んでた

でしょ。お母さんのこと? それとも、将来のこと?」

あ‥‥!

「わたしは、女優になる。みんなもいつか、やりたいこと見つけて、それに向かって進んでいくわ」

考えてたことズバリ言われてしもて、あたしはうまく言葉が出ぇへんかった。

「でもわたしは、みんなを信じてる。いい、あいちゃん?わたしは、みんながわたしを信じてくれてるのも、信じてるの。あいちゃんが鏡の中でわたしを待っててくれるのも、ね」

そや。あたしも、信じてた。おんぷちゃんは絶対に戻ってくるて。

「いる場所はちがって、みんなみんなひとりでも、こころはいっしょよ。
だからわたしたち、大親友なんでしょ?」

なんや、目の前がにじんでるわ。みんながあたしの肩や首に抱きついてる。あぁ、もうこれ以上、なんも欲しいものなんてあらへん‥‥



「‥‥ところデ、なんでまだ見習い服着てるノ?」

ももちゃんの不思議そうな声で、あたしは現実に戻った。そういえば、なんで変身してたんやったかな?

「ああ、せやな。それじゃもとに‥‥」

「ちょ、ちょっと待ってぇっ!!」

なんや、はづきちゃんなにあわてて‥‥ あ。

「しもたあぁぁッ!!」

みんなの笑い声の中、風呂場に走るあたしの背中に、ももちゃんの声が追ってきた。

「あいチャンごめ〜ン!わざとじゃないノぉ!!」

「信じられるかぃッ!」

どなりながら走ってくあたしの後ろを、着替え持ってついてくる音がする。誰かなんて振り向かんでもわかってる。

大親友やから、な。

あさひはまぁだ?(後日談)

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