あきのいちにち

「ふぁ…うぅ、さぶ」

寒い朝やった。はぁーっ、てはいた息が白ぉなるんをぼ〜っと眺めてから、あたしはいつもの通り、まくらのとなりに声かけたんや。

「ミミ、おはようさん」

う〜ん、っと伸びてたら、そのうち肩のあたりに乗っかって…こない。

「…ありゃ?」

まくらもとの水晶玉ん中、中身があらへん。ミミが早起きなんて珍しなぁ。

「ミミ、ミミどこや?」

おっかしなぁ。そこいら呼んでも応えてくれへん。…ってことは。ははーん、読めたで。

「さ、ちゃっちゃと着替えて朝ご飯にしょか……な!」

ばっ、て思いきり振り向いた…けどなんもおれへん。かくれてるわけやなかったんか。…ああ、もうこんな時間や。着替えて、とっとと行かなあかん。

「ミミ!あとからついてきぃな!」

からっぽの水晶玉つけたかばん持って、あたしは階段駆け降りてった。

「あいちゃんおはよー。なに?元気ないじゃん」

な〜んや調子出なくて、ぽてぽて坂道歩っとったあたしを、いつもの元気な声がどついてきた。

「どれみちゃんか〜、ん〜、実はなぁ、けさ起きたらミミがおれへんやんかー」

空向いて、目ぇひろげて歩ってても、なんやため息出てもうて。顔おろしたら目の前一面、赤いおだんご。

「え?やっだなぁ、あいちゃん。それってさぁ…」

び、びっくりした。思わず一歩さがって…あれ?いまなに言うたんや?…そう思うてたら、坂の上から大っきな声が聞こえてきた

「どれみチャン!ハリィ ハリアップ!急いデ!!」

「え?あ、ちょっと、ももちゃん待ってぇ!」

なんや?なんや??ももちゃん、えらい急いでんなぁ。どれみちゃんもペコペコあやまってん。1組なんかあったんかいな??

わけわからへん、けど元気だけは少しもろたみたいや。あたしはかばん持ち直して、教室に入ってった。

「おんぷちゃん、また寄っていくの?」

車の中のママにうなづいて、わたしはMAHO堂の中に入っていった。今日は朝からお仕事だから、その前にちょっとだけ。みんな学校なのはわかってるんだけど、ね。

「おっはよ …あら、誰か来てるの?」

キッチンの方でカチャカチャ音がするし、なんとなくあったかいし。

そう思って見ていたら、キッチンの窓からひらひらと何かがのぞいてた。青い…パティシエ服!?

「え?あいちゃん??」

おかしいわ。あいちゃん、もう学校にいるはずなのに…

「ロロロ?」

クッキーケースの脇から、ロロが飛び出してきた。そういえば、けさは見かけなかったけど、MAHO堂来てたんだ。

「ロロ、ロッロ、ロロロロ」

え?あ、そっか。今日って…でもそれ、あいちゃん怒らないかな? …そうだ!

「わかったわ。じゃ、お仕事終わったら来るから、わたしが来るまで待っててね」

「つづけて歌ってねぇ。じゃ、さん、はい♪」

5時間目。音楽の時間。西澤センセの、の〜んびりした声。

『し〜ずかぁなぁ し〜ずかな〜 里の秋〜』

口パクパクしながら、あたしはちらっと下を見た。きょう何べん目かもうわからへん。

『お〜背戸に 木いの実の〜落ちるぅ夜は〜』

水晶玉はやっぱからっぽ。ミミはどこ行ってんやろ…こんな寒い中…

「あ〜ぁッ!イラつくぅっッ!!!」

はぁ、はぁ、はぁ…あ〜、声出したらちょっとは楽なんな……あん?なんや静かやな…

「せ、せのおさん?先生、なにかいけないこと、した?」

顔上げたら、目の前に先生がどアップんなっとった。

「あ、いや、その…」

「先生は、先生はっ、ううぅっ…」

あかん、泣き出してしもたぁ。

「センセ、かんにんや。ちぃと腹立つこと思い出してしもうただけやん。な」

「やだ」

え?

「やだ。先生悲しいもの。お片づけしてくれなきゃや〜だぁ〜」

だぁ〜、もぉおッ!!

「あ〜、もうわぁった!掃除でもなんでもしたるから、な、な、泣きやんでぇな」

もう、泣きたいんは、こっちやぁぁぁ…

バツ掃除も終わって、またかばんの水晶玉見て…ミミのやつ、とうとう戻って来ぃへんかった。まったくもぅ〜

「あああぁぁ!!ええかげんにしぃやっッ!!!」

「ど、どうしたの、あいちゃん?朝からずっとじゃない?」

ああ、あかん。掃除手伝ぅてくれたはづきちゃん、メガネずり落としてもうてる。

「ごめん。ごめんなぁ。…うん、実はな、ミミが朝からおれへんねんやんかー」

そしたら、はづきちゃんきょとん、て顔して

「え?…もしかしてミミ、あいちゃんに言ってないの?」

なんやて?

「ミミなら、きのうの晩からMAHO堂にこもってるのよ。わたしてっきり、あいちゃんには言ってるとばかり思ってたのに…」

あんんのぉアホ妖精!人の気も知らんと、なにさらしてんねん!!

「ねぇ、あいちゃん。そんな怒らないで、ね。ね」

学校からの帰り道。あたしはまっすぐMAHO堂へ歩いとった。腹にしがみついてるはづきちゃんがいなかったら走ってるとこや。

「いっくらはづきちゃんの頼みでもゆずれへん!なにがなんでも一発かましたらな!!」

階段おりて、CLOSEの看板横目で見ながらドア開ける。同時に、目ぇつぶって思いっきり、

「くぉおらぁ!このボケ妖精!出てこんかいッ!!」

息吸って目開けたら、ももちゃんとどれみちゃんが、ぽかーんとした顔で立っとった。

「えぇ!?なんであいちゃんがもう来てるの?はづきちゃん??」

「ごめんなさい。もう、わたしじゃ、押さえ、られなくってっ」

どこかにいるはずや。あたり見渡したら、キッチンからひょい、っと顔出したんは…あたし!!

思わずはづきちゃん振り切って駆け出そうとしたあたしを、どれみちゃんが抱き止めた

「ちょ、ちょ、ちょっとちょっと…ミ、ミミなんていないよ? これは…そう、これメカあいちゃんだよ!!」

目の前くら〜っときた。あいかわらず、センスきっついわぁ。気ぃとりなおして、あたしに向かってったあたしの目の前で、どれみちゃんが歯ぁ食いしばって大の字になってた。

「だめだよ、あいちゃん!ミミはさ、あいちゃんの誕生日にケーキあげたいからって、きのうからず〜っと作ってたんだよ!?」

11月14日。あたしの誕生日。テーブルの上のケーキには、11本のロウソク。そや。さっきMAHO堂に入ったときから…

「ンなもん、見たらわかるわ!」

あかん、ミミ見たときからガマンしとったけど、もう、目の前が、にじんでまう

「ケーキなんかより…ミミがおってくれる方がええ…て、言わんとわからんか!?」

にじんだ顔に、ちっちゃな体が飛びついてきた。みんなが、あたしの肩を抱いてくれる。

ああ、もう恥ずかしなぁ。…でもええわ。ミミがいてくれれば。

「もう始まっちゃってたの?」

どれみちゃんがぶつぶつ言いながら鳥手羽食べてるころ、入り口からおんぷちゃんの声がした。

「ロウソク買ってきたけど、何本にする?」

きょとん、としてた。みんな一緒に。

「え?…やだなぁ、おんぷちゃん。ロウソクならちゃんと11本あるってば」

笑いながら話すどれみちゃんの横から、あたしの前におんぷちゃんの手が伸びてきた。ロウソク、3本持って。

「あいちゃん、何本いる?」

「だから…」

なんか、あたしに目くばせしとんなぁ。3本?3本ちゅうと…あ!

「3本!もらうで!」

びっくりしたみんなん顔見ながら、あたしはロウソク3本、ケーキの真ん中に刺した。おんぷちゃんが笑いながら、火ぃつけてくれてん。

「さ、ミミ。吹き消してや」

肩にいたミミを両手ですくって、ケーキのまん前に連れてくと、

「ミ!☆」

ぷーっと風が吹いて、ちいちゃな火ぃが消えた。

「OH!ハッピーバースディね、ミミ!」

ももちゃんがわかってくれた。そうや、

「誕生日もいっしょやで、ミミ!」

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