しあわせ☆ももちゃん

「もうすぐ、1年だね」

 お姉ちゃんがいきなりそう言ったから、みんな、えっ、って顔でこっちを向いた。

「お菓子屋さんはじめてさ」

 2月もはんぶんまできたけど、まだまだ寒い日。お姉ちゃんたちといっしょに、MAHO堂に行くとちゅう。

「そうやって、と〜とつに話変えるくせ、やめてってば!」

 あたしも、もう1年も『お姉ちゃん』って呼んできただけど‥‥やっぱり、どれみはどれみだ。

「ぽっぷちゃん、そう言わんと。いつものことやん。
 ‥‥そやなぁ。料理だけでええかと思てたけど、お菓子もできるようになると、結構おもろいもんやったんなぁ」

「あいちゃん、もう無敵ね☆」

 はづきちゃんがそう言いながらMAHO堂のとびらを開けると、 キッチンの中からなにか聞こえてきた。

「フン♪フフフン♪フ〜ンフフン♪‥‥」

 はなうた?

「あ、ももちゃんもう来てたんだ」

 おんぷちゃんが中に入って、

「ずいぶん早いわね、ももちゃん」

「フフフン♪フフン♪フンフ〜ンフフ♪‥‥」

 声かけたけど、ももちゃん、はなうた歌ったまま。

「あら?」

 そりゃそうだよ。だって‥‥

「ねぇ、なんだかももちゃん、変じゃない?」

 あれれ??あたしには、はづきちゃんがなに言ってるのかわからなかった。だって、あそこにいるのって‥‥

 そう思っていたところに、

「入り口で固まって、みんななにしてるノ?」

 って声がした。みんながぱっ、とふり向いたら、そこにいたのは買い物ぶくろ持ったももちゃん。

「なにって‥‥え?あれ??」

「それじゃあ、あそこにいるのは‥‥」

「ニニよ。わからなかっタ?」

 そうそう。そんなの見ればわかるじゃん。もう、みんなふだんは外見しか見ないんだから。

「Thank youニニ☆じゃあ交代ネ」

 ももちゃんがキッチンに飛び込んだあとを、みんな笑いながら追いかけてく。

 でも、さっきももちゃんちょっとだけ、ふぅ、って息ついてた。あれって‥‥ため息かな?

 つぎの日は日ようび、あたしがMAHO堂に行ったら、やっぱり先にももちゃんがいた。

「も〜もちゃん、おっはよぉ〜♪」

「あ、ぽっぷチャン」

 ももちゃんは昨日とおなじで、何か作ってるみたい。

「ももちゃん、なにやってるの?」

「お菓子のおさらいヨ。いつも同じのばかりだと、忘れちゃうカラ」

 そっかぁ。同じ5年生でも、こうもちがうんだよね。

「ふ〜ん。やっぱさ、ももちゃんって、お姉ちゃんと違って、しっかりしてるよね〜」

「そうジャないヨ。もう1年もたつのに、日本語もちょっとしか上手になってないし、ネ」

 そっか、ももちゃんと会って、もう1年なんだ。

「そうネ、ちょっと考えちゃうワ。1年で変わったトコ、ないのかなぁ、っテ」

 あらら、またため息ついちゃって。ももちゃんでも、そんなこと考えるんだぁ。‥‥でもさ、

「あるよ」

 思わず口からこぼれちゃった。けどほんと。まちがいないもん。

「あるよ。そりゃあもう、ずっと、ず〜っと変わったとこ!」

「Really?‥‥ほんとに?」

 わかんないかなぁ?‥‥あ、そ〜ぅだ

「あ〜っ!信じてないんだ」

「ううン、そんなことナイけど‥‥」

「だったら、しょうこ見せたげる。い〜ぃこと思いついちゃったから♪」

「MAHO堂におばけが出るんですって?」

 はづきちゃんの声が、MAHO堂のドアごしに聞こえた。

「うん。わたしも聞いた。ぽっぷちゃんでしょ?」

 おんぷちゃんの声だ。そうそう。みんなに話してまわったのは、あたしだもんね。

「そうそう。あいつ、な〜んかたくらんでンだよね」

 ‥‥どれみ、覚えてなさいよ。

「まぁええやん。もともとお化け一匹飼うてるようなもんやしな〜」

 最後にあいちゃんの声。くふふふ。来たきた。

 あたしはキッチンの影にかくれて、みんなをまってた。

 ドアがちょっとづつ開いていく。

 あたしは後ろにかくれてるももちゃんに、ちいさな声で合図した。

「それじゃ、いっくよぉ!」

 

「ぽっぷ、ぽっぷっ!‥‥まったく、あいつ人を呼び出しといて、どこいったん‥‥」

 それっ!

 あたしとももちゃんが小さくとなえた魔法が、MAHO堂にひろがった。

 とたんに

「ぶへへっっ!なにこれ!?」

 目の前ぜ〜んぶまっしろ。ちょっと先までしか見えやしない。

「あいっつぅ〜‥‥こぉらぁ、ぽっぷ!いるのはわかってんだから、早く出て来ぉい!!」

 さぁて、ドアを閉めて、と。作戦開始ぃ!!

「これじゃ、まわりに何があるかわからないわ」

「おんぷちゃん、そっちたしか棚よ。気をつけて」

「あれ?いまわたし呼んだの、はづきちゃん?」

「あ、あら?じゃ、ここにいるのは…」

「あたし、なんだけど」

「あ。ど、どれみちゃんも、気をつけてね」

「はづきちゃぁ〜ん?」

 くふふふふ。やってるやってる。とりあえず、成功っと。

「ちょっと、集まってんか。これじゃお互いぶつかってまうわ」

 よぉし、それじゃ‥‥

 あたしは、ももちゃんの手を引きながら、あいちゃんの声のする方に歩いていった。

 

「やぁっと集まったみたいやな」

「あの、5人ちゃんといる?」

「5人…いるやろ?」

「なんだか、さっきから一人多いような気がするんだけど…」

「な、な、ちゃんと数えてみよ
 ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ‥‥ほら、5人や。おどかしっこなしやで、はづきちゃん」

「え?う〜ん‥‥ほんとに、みんないるわよね?」

「いま数えたやん。心配性やなぁ。それやったら、ひとりづつ名前言うてったらええやん。
 ほら、おんぷちゃん、どれみちゃん、ももちゃん、はづきちゃん、ほいであたし、と」

「そ、そうよね。
 どれみちゃん、あいちゃん、おんぷちゃん、ももちゃん、それで、あと私、と。だいじょうぶ、ね。ね」

「二人とも、ちょっと待って!」

 大声にびっくりして見てみたら、おんぷちゃんが青い顔で立ってた。

「なんやねん、いきなり‥‥」

「あいちゃん、いま『あたし』って、こっち指さしてなかった?」

「へ?」

「はづきちゃんも!『私』って言いながら自分のことさしてなかったじゃない!!」

「‥‥いま話してるのって、おんぷちゃん?」

 ぽそぽそって、いつもと違うお姉ちゃんの声。

「そうよ」

「あの‥さ。なんであたしの服着てるの?。頭もおだんごだし‥‥」

「なに言ってるのよ。わたしはいつも通り‥‥
 どれみちゃんこそ、なんでわたしと同じ髪形なの?服も着替えちゃって‥‥」

「うぁ!み、みんななんであたしの服着てるん? どれみちゃんも、ももちゃんも髪の毛短かなってるし‥‥!」

「ちょっとみんな落ち着いてぇっ!!」

 し〜ん、っと静かになっちゃった。さすがはづきちゃん。

 すぅーっとおもいきり息を吸う音がなんどかしてから、

「いい?私の目の前に、私が4人いるわ。みんなもそうじゃない?」

「そや。あたしの目ぇが間違うてるんか思たけど‥‥確かに、あたしや。あたしが4人いるで」

「わたしも、そう見える」

「あたしもだよ。服だけじゃなくて、顔も髪の毛もみんなあたしだ」

「だから、ね。これって、魔法じゃないかしら?」

 う〜ん。やっぱり最初に気がつくのははづきちゃんかぁ。

 そう、あたしとももちゃんで、みんなが自分と同じになる魔法と、方向がわからなくなる魔法かけたんだ。 これなら、だれがだれか、ぜ〜んぜんわからなくなる。と、思うでしょ?

「そういえば、さっきからももちゃんの声がしないわね」

「ほんまや。ももちゃん、どこや?」

「‥‥みんな同じに見えるから、だれがももちゃんかわからないよ」

「ももちゃん。どこ?」

「そうだ、一人づつ名前言えばいいじゃない。わたしから右回りにね。じゃ‥‥わたしは、おんぷよ」

「あたしはあいこや」

「私、はづきよ」

「で、あたしがどれみ‥‥あれ?あたしの右どなりは?」

「わたし‥‥おんぷだけど」

「ももちゃん、おれへんやんか!」

「でも5人いるわよ。どうして??」

「ああ、とうとうみんな声まであたしだよ。もぅ誰が誰だかわかんないよぉ!!」

 あ〜あ、やっぱりお姉ちゃんが最初に脱落かぁ。でもあたしの顔で言わないでほしいなぁ。

 ため息ついてたら、別のあたしが、目をつぶった。

「ちぃいっちゃな‥てのひらは‥ネモフィラの・は・な‥‥」

「こんなときなに歌ってんのさ、おんぷちゃん!」

 歌っていたあたしが、ちいさく、ふふふ、って笑って

「どれみちゃん、正解。
 そう。服も、髪も、声も、顔まで同じになったって、この歌だけでわたしにはみんながわかるわ。だって‥‥ね?」

「あ‥‥」

「そっか‥‥」

 あたしは、うしろにいるあたしに、声をかけた。

「ほら、ももちゃんも歌って」

 うしろのあたしは、ちょっと考えてから、歌いはじめた。はじめは小さく、だんだん大きな声で。

「ちぃ いっちゃナ‥‥てのひらは‥‥ネモフィラの ハナ‥」

 あったかい歌。ももちゃんの、ハナちゃんへの気持ちが伝わってくる歌。みんなといっしょ、 でもみんなとちがうママの歌。

 これがわかんなかったら、妹やめるよ、どれみお姉ちゃん!!

「あ!」

「うん!」

「ふふ」

「よ〜し」

「「「「みぃつけた!!」」」」

 四人のあたしが、あたしの後ろを見て笑ってる。 そのまま、あたしじゃなくなっていく。魔法が、とけたんだ。

 後ろから、あたしの肩にちょん、って手が乗っかった。振り向いてピースしたあたしをきゅ、って抱きかかえながら、

 

「エヘ。みつかっちゃっタ」

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