おもたいとびら

「ほな、あいちゃん。また明日なー」

「おー、学校でなー」

 お昼前。古ぼけた家の前で、あたしはみんなに手ぇ振ったった。

 11月のわりに、吹いてる風がぬくくてええなぁ。あんま強い風やと、家が倒れるんやないか思てびくびくしてまうからな。

 そんなこと考えながら見送ってたら、いきなりみんな集まって、ヒソヒソやってん。なんや? 思たら、

「‥‥っせーの」

「「「誕生日、おめでとなーっ!!」」」

 ごっつ大声で‥‥道端で散歩してるおばあちゃんが(わろ)てるやんか。

「あはははは、おおきに、みんなおおきになぁ」

 あたしは苦笑いしながら、玄関のとびら閉めたった。顔がゆるんでもうてんの、自分でもわかるわ。あっちのみんな(・・・・・・・)に会う前に、洗って戻しとかなあかんな。

 玄関のとびらにカギかけて、あたしは家ンなか見回した。

 みんな、びっくりしてたなぁ。ほんま、古い家や。いままでパーティやってたテーブルといすが、部屋にまるっきり似合うてへんわ。

 ま、しゃあないんやけどな。

 ここは、マジョリードさんが日本に来てたとき建てた、MAHO堂になるはず(・・)の家やったんだから。


 去年のあたしの誕生日に、ハナちゃんがこのMAHO堂通って大阪に来てもうて。マジョリードさんと一緒に探すんで、ここのカギもろて。それからあたしは、ここに入れるようになったんや。

 あれから、もう1年かぁ。学校のみんなには秘密にしとったんやけど、家はおじいちゃんおるし、たまにはここで遊んでもええかもしれへんな‥‥ん?


 カチャ、カチャ‥‥


 ‥‥なんや、この音? 水でも出しっぱなしにしてもうたかな?

「あいちゃ〜ん、お皿はどこ片したらええのん?」

 ‥‥って、ちょっと待ちや?

 台所まで走って行ったら、背ぇの低い子がお皿(あろ)てた。もみじ色のきれいなミニスカートにセーター姿なんに、泡飛んでも気にせん、ちゅう感じでエプロンも着けんと。

「な、なんでまだおるんや!?」

 くるっ、と振り向いたひょうしに、丸いメガネがちょいとズレてん。中学で友だちなった、咲ちゃんや。

「なに言うてんねゃ? 後片付けに決もてるやん。
 ああ、食べ物ぎょうさん残ってもうたから、タッパ詰めといたで。持って帰り。‥‥それより、皿や。どこしまうん?」

 鼻の頭に泡ついてる。メガネかけ直したとき、ついたんやろか。

 ぽけっとした顔でこっち見てる咲ちゃんから目ぇそらして、あたしは、思わず頭おさえたった。

「昼までに終わらせなあかん、て言うてた誕生日パーティなんに、ちょい遅なってもうたやん? せやけど、みんなで手伝う言うたら気にするやろ思てなー、あたしだけ残ったんや」

 せや。咲ちゃんは、こういう子なんや。そやからすぐ友だちなったんやけど‥‥あぁ、もうじきみんな来てまう。なんとか、なんとかせな‥‥!!

「いや、ほんま別に片付けんでも、この家はあたししか使わへんし、明日でもええくらい‥‥」

 そう言うた瞬間、しまった! て思うた。咲ちゃん、目の色が違てる。

「なーに言うてんの! みんな手伝う言うてたんに、自分の誕生日パーティひとりで準備したんはどこの誰や!? この上あと片付けまでさせんちゅうなら、いっぺん根性叩きなおしたらな‥‥」

 言いながら、洗ってた包丁持って腕まくりしてん。まだキレてへんけど、こらヤバいっ!

「わーっ! わかった、わかったからそれ置いてんかっ!!」

 むすーってしてた咲ちゃん、ため息ひとつ吐いて、なんとか包丁手から離したったわ。‥‥もうしゃあない。あとは、バレんこと祈るしかあらへんわ。

 台所の脇にある、ちいちゃな廊下の突き当たり。そこに、とびらあるわ。ほかは古い日本の家なんに、ここだけ洋風になってん。

 あたしは、そのとびらによっかかって、向こうの音聞いてた。

 咲ちゃんが見たら、なんや思うやろな。間取り考えたら、このとびらの向こうは外のはずなんやから。


 コンコン‥‥コン、コンコン


 何度かとびらノックして、また向こうの音聞いて。そのうち、あたしは(わろ)てしもた。咲ちゃんがいまここに来たら、説明なんてでけへんわ。

「おーい、誰かおらへんのかー?」

 呼んでも、とびらの向こうはしーんとしてる。いっそ今日はこのまんまやったらええのにな。


 このとびらの向こうは、MAHO堂。美空町のMAHO堂と、ももちゃんのいるアメリカのMAHO堂や。

 ハナちゃんが大阪来たときに、3つのMAHO堂のとびら、みんなつなげてしもて。それからずーっとそのまんまになっとんのや。

 とびらはあたしらには開けられへんけど、向こうの声だけはいつでも聞こえる。そやから今日はとびらの前集まって、あたしの誕生日パーティやる‥‥はずやった。

「まっさか、咲ちゃんが残るなんてなぁ。考えてへんかったわ。はよみんなに知らせんと‥‥」

 思わずこぼしてもうてから、またとびらノックしようとしたら、

「うひゃぁぁっ!?」

 ()頓狂(とんきょう)な声が台所から聞こえてきたわ。な、なんや、いったい!?

「あ、あんた、誰や?」

 台所に戻ってそれ(・・)見たとき、あたしはそのまんま逃げよか思ったわ。

 咲ちゃんが指さしてる先で、見たことある大きなお団子ふたつ、揺れとったんやから!

「へへへ。どうも〜、春風どれみッス」

 それも、冷蔵庫から半分からだ出して。

「ど、どれみちゃん!? ちょい待ちや。あたしは今までとびら(・・・)ン前にいたんやで!?」

 お団子の間で、目ぇが泳いでる。‥‥もう、しゃあないなぁ。

 あたしはぽかーんとしてる咲ちゃん押しのけて、制服のブレザー着たどれみちゃんを冷蔵庫から引っ張り出した。

「ん〜、それがねぇ。とびらはとびらなんだけどさぁ‥‥」

 そのまま、台所のイスに座らせたったけど‥‥なんや、歯切れ悪いなぁ。

「ええから、正直言い?」

 どれみちゃん、黙ってうしろ指差したわ。その先見たら‥‥いぃっ!?

「れ、冷蔵庫の背中が抜けてんっ!?」

 冷蔵庫の中に入ってた思たら、ちゃうわ。冷蔵庫のドア、こっちでもあっちでも開いてるやん!?

「いや〜、あいちゃん来るまで、ちょっとなんか食べよっか、って思っただけなんだけどさ。開けたらすぐドアが見えるから、押してみたら‥‥こうなっちゃって」

 あ、あはは、あはははは‥‥ ふたりで顔見合わせて笑てしもた。お互い、顔ひきつらせながらやけど。

「どれみちゃ〜ん、だいじょうぶぅ〜?」

 あぁ、冷蔵庫からまた、よぉ知ってる声が聞こえてきたわ。

「はづきちゃんやな? とりあえず、この冷蔵庫閉めんといてー。帰れなくなるかもしれへんからー」

 言うてる間も背中に視線感じてるけど、振り向けへん。黙ってるのがよっぽど恐ろしわ。

 あぁ、こんなん、どない説明したらええ、っちゅうんやっ!!

「え? あ? あ、あいちゃん、これって‥‥??」

 考えてる間に冷蔵庫からはづきちゃんが、ゆったりしたスカート足に巻きつけながら出てきてもうてるし。

 もう、しゃあないなあ。この家はびっくり屋敷、あちこち仕掛けしてある、で、ええか。よっしゃ。

「い、いやぁ、咲ちゃん。実は、この家なぁ‥‥」

 でっきるだけ笑った顔で振り返ろうとしたとたん、

「No〜!! なんデ? どうしテ、トイレの向こうが和室なのヨぉ!?」

 あ、ああ、ああああああ――また聞いたことある声やぁ。もう、勘弁してんかぁ‥‥

「あー‥‥」

「ええと‥‥」

「うーン‥‥」

 出てきてもうた3人、台所のイスに座らせて、あたしはその前でへらへら笑てた。‥‥っちゅーか、笑うしかあらへんわ。もう。

 背中のみんな、顔つき合わせて考え込んでるわ。ああ、頼りにしてるんやから、はよ考えてぇな、みんな!

 ‥‥それにしても、咲ちゃん、さっきっから流しの前に立って、ぼーっとしとんなぁ。大騒ぎしたら縛らんとあかんか、て覚悟しとったんに‥‥こうなると、声もかけられへん。さぁて、どないしよか‥‥

「正直に言うしかないんじゃない? わたしは、信じてもいい子だと思うけど?」

 そやなぁ。咲ちゃんは、あたしがおんぷちゃんと友だちなんも知っとんのやし、

「まぁ、ちょっとくらい変なことあっても、わかってくれ‥‥」

 ちょい待ちや。

 咲ちゃんの顔、『ぼー』から『ぽかーん』になっとんで? それに今の声、どっから‥‥なんやとぉっ!?

「目玉が落ちるわよ、あいちゃん」

 台所の流しの上、おもっきし開いた窓から、ぴょこん、て髪のたばがゆらゆらしとるわ。

「お、おんぷちゃんまでやて!?」

 窓枠に足かけて、こっちに飛び込んできたんは、ほんまにパンツ姿のおんぷちゃんや。せやけど、なんでや?

「今日は仕事の打ち合わせやから夜に、って言うてたんに‥‥それに、なんでみんなと違うとっから来てんねゃ??」

 転びそうなんを、あたしの肩つかんで立ちながら、

「仕事ならちゃんとしてるわ。だってこの向こうは、マジョルカの事務所だもの」

 言うてるおんぷちゃんの言葉、遠くから聞こえてくる見たいや。なんなんや? なんでこないあちこちポコポコ繋がって‥‥ん?

 おんぷちゃんの肩に、見たことあるもんが乗っかってるやんか‥‥て、んなアホな!?

「おんぷちゃん、なんでロロ連れてんねん!!」

 むらさきのちいちゃなンが、ふわふわ目の前降りてくわ。そこにおんぷちゃんが手ぇ出して着地して‥‥

「事務所にいたら、来ちゃったのよ。ロロだけじゃないわ‥‥ほら、あいちゃんよ。出てきたら?」

 なんや、いやーな予感しながらおんぷちゃん見てたら、背中から青くてちっちゃいもんがひょこっ、と顔出しとん。

「ミ、ミミミ?‥‥ミ!?」

 あたしは、ばっと手を伸ばして、それつかんだった。

「ミ、ミミ? ミミミミ??」

 ちいちゃくて青いまんまる、目の前に持ってきて、あたしは思いっきり息すって‥‥

「こンの、ボケ妖精っ! なにさらしてんねや!?」

 自分の声で耳が痛なってもうたけど、もうかまってられへん。こいつは、こいつは‥‥っっ!!

「言い訳せんでもええわ! どうせ今年も寂しなって、ハナちゃんにムリ言うたんやろが!えぇっ!?」

 腕がなんや(おも)なった。お腹も。

「あ、あいちゃん‥‥」

「ダメよ、そんなに怒っちゃ‥‥」

 どれみちゃんたちが、あたしにしがみついてるんや。そんなん、見なくてもわかる‥‥けど!

「なんでや? どうしてや? ドドもレレも、ちっちゃいファファかて、みんなこっち来るん我慢してるやないか。ハナちゃんが、りっぱな女王様ンなるまでっちゅうて‥‥なのに、なんでミミだけでけへんねゃ?」

 目の前が、ゆらゆら揺れてまう。力が出ぇへん。あたしはみんなにしがみつかれたまんま、テーブルにミミごと腕なげだしてもうた。

「それは‥‥多分、しょうがないよ」

 背中から、どれみちゃんの声や。

「ミミは一番、あいちゃんのそばにいたんだもん。さびしい、って気持ち、一番知ってるんだよ」

 ‥‥せやな。どれみちゃんなら、そう言うやろ。せやけど、ちゃう。それで許したあかんのや‥‥

「なんであたしだけ(・・・・・)我慢でけへんのや‥‥?」

「ちょい待ちや。あいちゃん」

 顔上げて、またミミ見ようとしたら、横から声がした。いままで、すっかり忘れとった声や。けど、

「咲ちゃんには関係あらへん!」


 ヒュッ‥‥


 言うた瞬間、いきなり寒気がしたんで、机から起き上がったとこへ、


 ズドンッッ!!


 もんのすご、でっかい音と一緒に、なんか落ちてきた!

「コッルァアアッッ! なに避けてんねゃッ!?」

 まだゆれてるテーブルの上に、両手握った咲ちゃんのこぶしや。

「あたしが関係ないやて? よぉ言うたわ。
 そらそうや。たしかにあたしは関係あらへん? あらへんから、勝手にやらせてもらうで」

 キレたときにしか使わん両手ハンマー、ぱっと放した思たら、あたしの手からミミ持ってってもうた。

「あいちゃん、あんた何いじめてるんや。こんなちいちゃな子ぉ!?」

「へぁ!?」

 な、なに言うとんのや、咲ちゃんは?

「いじめなんて、するわけないやろ? あたしはミミ‥‥その妖精むかし育てとったんや。これはしつけ(・・・)っちゅう‥‥痛っ、ひはははははははっッ!!」

 片手がにゅうっと伸びてきて、あたしの口ひっぱってんッ!

「じゃっかっしゃいッッ!!
 手ぇの中入るくらいちいちゃい子ぉ、両手でにぎってるわ! むっちゃキツい顔の近くぅ、無理から持ってくるわ! ほぃでしまいにゃ、思いっきりどなりつけとンにゃでッ!?」

 そう言うて、ようやくあたしの口から手ぇ放したけど、今度は顔が近づいてきたわ。

「そんなんしつけ(・・・)やないわ。あたしは認めへんで。あいちゃん、あんたのやってんの、いじめ‥‥ん?」

 あたしと咲ちゃんの顔の間に、いきなり青いもんが浮いてん。ミミが、両手広げて、あたしの顔の前に‥‥

 そしたら、その向こうの顔が、いきなりリスみたいな笑い顔になった。

「ミミちゃんに免じて許したるから。ちゃんと話聞いたり。な?」

 咲ちゃん、そう言うてコンロの方行ったわ。フライパンのっけて、油しいて。

 目の前にいたミミは、いつのまにか手に乗っかって、あたし見上げてる。なに言おうか、迷ってるっちゅう感じで‥‥て、なに言おうか? ちょ、ちょい待ちや。まさか!

「咲ちゃん。あんた、ミ、ミミの言うことわかるんか!?」

 背中の方でおんぷちゃんたちが、息ころしてあたしら見てんの、そんときになって気がついた。

「咲ちゃん」

 コンロの前でフライパン振ってる後ろまで行って、おんぷちゃんが言うた。

「あなたは、なにも聞かなくていいの?」

 炒めなおしたケチャップライス、皿に盛って。薄焼き卵をぱっぱっ、て焼いて乗せたって。そんな咲ちゃんが、あたしたちをちらっ、と横目で見て、

「これは夢や」

 深めのフライパンに油入れて、火ぃ強ぉしてから、こっち向いたった。

「こないなとこにおんぷちゃんが居るんも、あいちゃんの東京の友だちがいきなり来てるんも‥‥」

「わたシはニューヨークだヨォ」

 後ろからももちゃんが口はさんだけど、

「ニューヨークでもエジプトでもなんでもええわ! ‥‥ンなとこからいきなり来てるんも、みんな、あたしが見てる夢だからや」

 まるっきり関係なしや。

「せやから、聞くことなんてなんもあらへんて」

 そう言ってる間も、冷めたから揚げを揚げなおしてる。ほんま、かなわんなぁ。

 ‥‥あれ? おんぷちゃんがニコニコしながら戻ってきて‥‥イスに腰かけてもうた?

 気がついたら、立ってンのあたしだけや。みんなイスに座ってるやん。テーブルの上には、さっきタッパ入れた言うた料理が、湯気たてておいてあるし。

「さぁ。残り物で悪いけど、これでまたパーティでけるやろ? ‥‥ほな、な」

 あたしの脇を、なんか通り過ぎてった。

 みどりのバッグしょって、咲ちゃんが玄関に歩いてってる。とっさにあと追いかけたら、いきなり振り向いてあたしの目ぇじっと見つめてきた。

「ええか? これは夢や。あたしの夢(・・・・・)なんやで?
 せやから、あたしがこの玄関出たら、もうこン中、いつも通りに戻っとんねん。‥‥ええな、あいちゃん?」

 言いながら、部屋の中見わたしてる。向こうが見えてる、冷蔵庫と、流しの窓と、トイレのドア‥‥

 あたしがなんも言えんで、ただ口を開けてたら、

「待って!」

 っちゅう大きな声。

「あいちゃんのこと、お願いだよ」

 どれみちゃんがイスから立ち上がって、じぃっとこっち見つめてるわ。

「せやから、夢やて言うて‥‥」

 どれみちゃん、真っ直ぐこっち見てん。4年も見てきた、ほんまに本気の顔や。あたしはのどが詰まってもうて、もう息がでけへん。

「あたしたちのことは夢でいいから。あいちゃんのこと、ぜったいお願いだよ!」

 咲ちゃんが、ほっぺかいてテレながら、こっくりうなずいたった。

 ふぅ。あたしも、やっと息がでけるわ。

 台所のテーブルでも、みんながなんや話し出してる。ふぅ。一時はどうなるか思たけど‥‥

「ほんま、ええ子やなぁ‥‥あいちゃん」

 なんや、思て咲ちゃんの目ぇ見たら、まじめな顔しとった。さっきのどれみちゃんに、負けへんくらい。

「今日のことは夢や。せやけど‥‥これから、どないする?」

 はっ、て息のんだまま、あたしは、またのどが詰まってもうた。

「来年の誕生日は、夢やないとええなぁ‥‥ほな、な」


 ゆっくり閉まってく玄関のとびら見ながら、あたしはまるで、閉じ込められた気ぃになってもうた。

「それじゃ、そろそろ終わりにしよっか」

 テーブルの料理もなくなって、ももちゃんの目がちょいトロ〜ンとしてきたころ、どれみちゃんがジュース入りのコップ上げて、最後の乾杯したった。

 なんやいろいろあったけど、みんなに会えて、ええ誕生日やったな。来年は‥‥んにゃ、いまは考えんとこ。


 あたしは、ほんま眠そうなももちゃん、トイレに押しこめて。

「こんどは、どこが開くかな?」

 なんて言うてるどれみちゃんたち、冷蔵庫に入ってくんを見送って。

「それじゃ、次はクリスマスね。今年はみんなに会うために、ちゃんとお仕事しなくっちゃ♪」

 そう言うおんぷちゃんを流しの上に乗せてから、あっ、て思って肩見たった。まだひとりおるやん。

「どないしたらええんやろ? いつまでもここにおるわけいかんしなぁ」

 肩の上からは、ミミが見返してくれてん。

 結局、窓やら繋げたわけ教えてくれへんかったし、まだ話したいんやけど、帰れなくなっても‥‥て、あん? いきなり、おんぷちゃんがミミ持ってってもうた!?

 見上げたあたしの前で、いたずらっぽい笑顔がこぼれてん。なんや、いったい??

「みんなの前じゃ言えなかったけど‥‥実はね、今回つなげるようにお願いしちゃったのって、ロロだったの。どうしても、わたしに会いたいから、って言ってミミ誘ってね。
 だから、わたしのとこからなら、ロロたち帰せるのよ☆」

 な、なんやとぉっ!?

 ちゅうことは、や。ミミ怒って、咲ちゃんにバラしてもうて、それ全部‥‥

「我慢できないのは、あいちゃんだけじゃないって・こ・と。じゃ

 ウィンクしながら向こうに飛び込んだおんぶちゃんの後ろで、窓が閉まってくわ。

「ちょい、待ちやおんぷちゃ‥‥ッツ!」

 あたしの指が、窓にはじかれたとたん、トイレと冷蔵庫がバタンッっちゅう大きな音で閉まったった。

 っったく、どいつもこいつも‥‥っっ!


「だぁ〜っ! なんでこないなときばっか重いんや、このとびらはっっ!!」

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