よなかのショウタイム

 ああ‥‥行っちゃったなぁ‥‥


 ハナちゃんとマジョリカやドドたち見送って、MAHO堂からの帰り道。みんなでワイワイしゃべってるけど、やっぱ、まだ後ろ向いちゃうなぁ。

「ねぇ、どれみちゃん」

 からだ半分MAHO堂の方に向いてたあたしが急いで振り返ると、目の前でおんぷちゃんがどアップになってた。

「な!な、な、なに?おんぷちゃん??」

 あわてて、ばっ、っと離れたら、みんながこっちみて笑ってた。あちゃ。あたしだけ、ぼ〜っとしてたのかぁ。

「あさっては何の日か、覚えてる?」

 おんぷちゃんがまた近寄って、あたしの目をのぞきこんでる。‥‥あさって? って、きょうが3月の1日だから‥‥ああぁぁっ!!

「そっか!おんぷちゃんの誕生日、あさってなんだっけ!!」

 あっちゃぁ〜。卒業のことであたまいっぱいだったから、すぅっっかり忘れてた。

「今年のBirthday、お仕事オフなんだっテ」

「だから、パーティどこでやったらいいかしら、って話してたのよ」

 ももちゃんとはづきちゃんが、あたしの周りに寄ってきた。そっか、忘れてたのあたしだけなんだ。だめだなぁ、って頭軽く叩いてから、なんか変だな、って思った。だってさ、

「考えなくたって大丈夫じゃん。あたしたちには、おっきなパーティ会場があるんだから♪」

 ‥‥あれ? なんでいきなり、し〜んとしちゃったの??

「な?あたしの言ぅた通りやろ?」

 みんなの後ろでうで組んでたあいちゃんが、頭の後ろに両手回してため息ついてる。やれやれ、って感じで。 あたし、なんか変なこと言ったかな?

 そう考えてたら、あたしの肩に、ぽんっ、と手が乗ってきた。見たらはづきちゃんが、顔近づけて、

「どれみちゃん、もう魔女界は使えないのよ?」

 ‥‥え?

 ちょっとの間、あたしは何がなんだかわからなくなった。パーティの会場だったら、いつだって使えるMAHO堂のとびらの向こう側‥‥が魔女界で、それが使えなくて‥‥あ、そっか!!

「ちょ、ちょっと、どこいくの!?」

 おんぷちゃんの声が背中から飛んできたけど、かまってらんない。だって、今だったら‥‥

「あと2日だけ、魔女界のとびら開けといてもらってくるっ!」

「こらこらこらこら、待たんかいこらぁ〜っっ!!」

 ぐえっ。 いきなりおなかが苦しくなって、あたしはそれ以上走れなくなっちゃった。振り向いたら、あいちゃんがしがみついてる。

「そんなん言ぅたら、ハナちゃんたち困ってまうやんか!!」

 そのままがっしり、肩つかんできたあいちゃんの目、じっとのぞいてみた。そしたら、ちょっとだけ落ち着いたみたい。考えて、その手をよいしょ、って持ち上げて、

「やっぱ、もどる」

「まだ言うんかい!」

 にらんでる目が、よく見たら心配そうだよ。しかたないか。昼間がアレだったもんね。

「魔女界行けなくなったって、まだあるじゃん。MAHO堂」

 あたしが言ったら、あいちゃん、きょとん、としてる。やだなぁ、もう忘れちゃったの?

「だからさ、改装するんだよ!4年前みたいに!」

 追いかけてきたはづきちゃんが、あいちゃんと顔見合わせて笑ってる。

 うん☆これなら、だいじょぶ!

「あたしたちで、もっかい、もっかいだけつくっちゃお! あたしたちの、MAHO堂!!」

「あらためて見るト、すっごいネ」

 戻ってきたMAHO堂の中、ももちゃんがめずらしそうに見回してる。うす暗いMAHO堂。4年前にマジョリカたちに会ったときにもどったみたい。もう、ヨロイや変なかざりはないけど‥‥

「テーブルといすはあるのね。それじゃあ、テーブルクロスやカーテンの生地はわたしが持ってくるわ」

 はづきちゃんがテーブルの大きさ手で計ってる。あたしも手伝おうとしたら、奥のほうから声がした。

「みんな、ちょい来てみぃ!」

 あいちゃんだ。いつの間に奥行ったんだろ?

 あたしたちが声のほうに歩いてくと、見慣れたものが見えてきた。

「Wow!キッチンちゃんと残ってるわ!」

 ほんとだ。み〜んな4年前にもどっちゃったと思ってたのに、ここだけ違うんだ。クッキングストーブに流し台に‥‥その奥にあいちゃんが立ってる。

「どしたの、あいちゃん?」

 キッチンのあいちゃんは、あたしたちを見ながらツン、ツン、って背中を指さした。

「冷蔵庫?‥‥あ、ちゃんと動いてるんだ」

「ちゃう、て。これや、これ」

 これ、って‥‥あ、なんかメモ紙が貼ってある。あたしはもちょっと近よって、よく見てみた。

「なになに、え〜と‥‥
 『冷蔵庫は3日まで置いておく。中身は好きに使え。 ――マジョリカ』‥‥マジョリカぁ!?」

 い、いつ用意したんだろ。こんなもの。
 片付けてたときにはなかったけどなぁ、って思いながら冷蔵庫のドア開けたとたん、みんなの動きが止まった。

「Unbelievable‥‥」

 うん。あたしは思わずうなづいちゃった。ももちゃんの言ってる言葉はわかんないけど、意味ならわかるよ。おっきな冷蔵庫に、あふれるくらい食べ物つめ込まれてんの見ちゃったら、みんなそう思うから。

「あ‥‥ああ、ここにもメモ貼ってあんで」

 あいちゃんの声、なんか遠くに聞こえる。メモ?

「えぇ〜っとぉ‥‥
 『残ったらあたしたちが使う。あとは心配するな。 ――マジョルカ』‥‥やて。みんなお見通しやな」

 なんだかな〜って思ってると、後ろからくすくす笑い声。みんなが振り返ったら、おんぷちゃんがキッチン入ってきて

「マジョリカもマジョルカも、わたしたちがMAHO堂でパーティしなかったら、どうするつもりだったのかしらね?」

「きっと、考えてもいないわ。そんなこと」

 はづきちゃんのひとことで、みんな大笑い。そうだね。マジョリカだったらそうかも。

「よっしゃ、ももちゃんはケーキ頼むわ! 料理はあたしが作ったる!」

 あいちゃん、ノリノリだ うんうん。こんだけ材料あるんだもん、なんでも作れるよね。もちろん、ステーキも‥‥っと。おんぷちゃんの誕生日だっけ。がまんがまん。

「‥‥あぁ、そういやおんぷちゃん。あさって、何時ぐらいから来れるんや?」

 え?‥‥あ、そっか。

「オフって言っても、午前中はパパやママがお客さま招待してパーティだから‥‥夜になっちゃうわね」

 おんぷちゃんが残念そうな顔してる。はづきちゃんとももちゃんも、顔見合わせてさびしそうな顔。けど、しかたないよね。あたしたちだけのおんぷちゃんじゃないんだから。

 でも!

「じゃ、夜はだいじょぶなんだね? だったら、あと二日もあるんじゃん☆ いっぱい準備しよ♪」

 みんなの顔、ちょっと明るくなった。そうそう、せっかくの誕生日だもん。がんばんなくちゃ。

「うん、お願いね。その代わり、わたしも何か用意してくるから」

 あれ?なんだかおんぷちゃんの声も楽しそう。でも、用意?

「用意って‥‥?」

 首かしげてるあたしたち見ながら、おんぷちゃんが口にゆび当ててた。

「ふふふ。な・い・しょ♪」

「う‥‥ふあぁぁ」

 いつのまにか、目の前が明るいや。あ〜、よっく寝た。

 学校がない、って思うと、ついつい寝ちゃうなぁ。うるさいぽっぷも学校だし‥‥もちょっと、ゴロゴロしてよ。

「どれみ、いつまで寝てるの? ちょっと起きなさい!」

 おかあさんの声が聞こえる。けど、気にしない気にしない。ふぁぁ〜ぁあ‥‥

「ほら、どれみ!!」

 え? う、うぁ、わぁっ!!

 目の前がぐるんっ、と一回転。気がついたら、あたしは床から、おかあさんのスカート見てた。

「いっくら春休み長いからって、寝っぱなしは許しません!」

 え〜‥‥けち。

「ん? なんか言った!?」

 あわわわわ! 考えただけなのに、カンいいなぁ、もう。 ‥‥あれ?なんだろ、じっと見ちゃって?

「どうかしたの?」

 そしたらおかあさん、急にニコニコしちゃって、

「べっつに〜」

 な〜んか、あやしいなぁ。

「そんなことより‥‥明日のパーティの準備行くんでしょ? みんな待たしちゃダメじゃない。ほら、起きた起きた!」

 あ、いっけない。はづきちゃんたち、もう行ってるよね。

「まったくもう‥‥もう小学生じゃないんだから、一人で着替えなさい‥‥よっと!」

 ブツブツ言いながら、あたしのパジャマはぎとってく。‥‥ちょっと寒いな。でも、おかげで目がさめたよ。

 すぐ着替えたあたしは、台所のジャム付きパンかじりながら、そのままMAHO堂に駆け出してった。

 ちらっ、て後ろ向いたら、おかあさんが手を振ってる。やっぱ変だな。準備っていってもパーティなのに、そんな見送りなんて‥‥あれ?そう言えば‥‥うわっ!

「お、おととっとっとっ‥‥わっ!」

 あたたたた‥‥足もつれて、すっころんじゃった。よそ見しながら走ったりするからだよ。こんなとこ、ハナちゃんに見られたらなんて言われるか‥‥

 って、そうじゃないよ! いま、なんか考えてて、足が『おるす』になっちゃったんだ。なに考えてたんだっけ‥‥あ。

「パーティのこと、おかあさんに言ったっけ、あたし??」

 あちゃ。遅くなっちゃった。
 MAHO堂のドアの前まで来たけど、ちょっと入りにくいなぁ。

 ドアベルなくなっちゃったし、ドアノブゆ〜っくり回して、そ〜っと中のぞき込めば‥‥あれ?なんか目の前に光るものが見え‥‥

「どおぉぉれぇみぃぃちゃあぁぁんん〜」

 どぉわあぁぁぁっ!! な、なに?光るものがせまってくるっっ!?

「ひどいわどれみちゃん! MAHO堂わたしたちで作ろうって言ってたのにぃ」

 あ、ああ、はづきちゃんか。びっくりした。

「ごめんごめん。学校ないからつい寝坊しちゃってさ。」

 ドアを背中で閉めながら両手合わせてペコペコ。ふぅ、ってひとつため息の音がしたんで、チロっ、て片目あけてみたら、はづきちゃん、じぃっとあたし見てる。でも怒ってるかお‥‥じゃないな。なんだろ?

「ね、どれみちゃん。パパやママの様子、変じゃなかった?」

 へ? なんで知ってるの?

「うん。おかあさんが、ちょっとヘンなんだよねぇ」

「どんな風?」

 ずいっ、とはづきちゃんが近づいた。手にカーテン生地持って。あたしは、閉めたばっかのドアにへばりつきながら、

「『ゴロゴロしてないで、さっさとパーティの準備行きなさい!』とかさ。パーティのことなんて言ってないはずなんだけどなぁ」

「そう‥‥」

 考えごとしてるはづきちゃんの手元が、きらっ、て光った。よく見たら‥‥げ!

「あ、あの、はづきさん? 手元のカーテンから、針が出てるように見えるんですけど‥‥気のせい?」

 はづきちゃんの目があたしとカーテンを何度か見て、そのままカーテンごと後ろにジャンプした。‥‥ふぅ。 あ、でも、さっきの言い方って

「もしかして、はづきちゃんとこも?」

 カーテンを指でなぞりながら針抜いてるはづきちゃんが、こっちに向き直った。

「ええ。なんだかそわそわしちゃって、いつもよりわたしに構ってくるのよ。ばあやも止めようとしないし‥‥あいたっ!」

 しまった、余計なこと言っちゃった! あわててはづきちゃんの指見に行こうとしたら、途中で足がずるっと。倒れた目の前にカーテンが‥‥

「痛ッッたあぁぁッ!!」

 針、ハリ、はり、あっちこっち針っっ!!

「なんや? ‥‥な、なにしてるんや!?」

 あ〜、あいちゃんの声がするけど目が開けらんないぃ〜。あいちゃぁ〜ん、たすけてぇぇ〜

「なんちゅうか、どれみちゃんらしいなぁ‥‥ほい、みんな消毒終わったで」

 なんか、ひっどいこと言われてるけど、気にしない。さっき真っ青になってあたしに飛びついたあいちゃん、見ちゃったもんね

「んで?どれみちゃんとはづきちゃんのおかあちゃんが、なんや変なんやて?」

 あ、そうだった。でもあたしが口開く前に

「そうなの。わたしとどれみちゃんのママ、なにか打ち合わせてるんじゃないかしら?」

 はづきちゃんに先に言われちゃった。まぁ、どっちにしても、あいちゃんには関係ない話だけど‥‥あれ?なんか考え込んじゃってる??

「‥‥実はあたしンとこもや。おかぁちゃん、朝起きてからあたしの顔見るたんびにくすくす笑ぅてんのや。わけ訊いても『なんでもない』しか言わへんし、な〜んや隠してる気ぃするんやけどなぁ」

 ありゃりゃ、あいちゃんもなんだ。おかあさんたち、なに企んでるんだろ?

 そんなこと考えてたら、いきなり

「あれェ〜??」

 って妙な声がキッチンの方から聞こえてきた。そういや、今日はももちゃんまだ見てないや。

「どしたの、ももちゃん?」

 あたしたちがキッチンに飛び込んだら、冷蔵庫に顔つっこんでたももちゃんが、こっち振り向いた。

「冷蔵庫の中、何か変わってルよ?」

「そら、あんだけ詰まってたとこから食べ物取り出したんやから、くずれてもぅたんやないか?」

 あいちゃんがそう言いながら冷蔵庫の中、のぞき込んでる。あたしも横から見た。うん。たしかに両側からくずれてる。けど、

「なんかこれ、奥ぅのほうから引っ張り出した、って感じだね」

「なくなってるものって、あるのかしら?」

 あたしのわきで、はづきちゃんが言った。あ、そっか。でも、ぎゅうぎゅうに詰まってたから、覚えてないなぁ‥‥

「‥‥そういえバ、ここに大きなプリンがあったようナ気がするけど」

 おお、さすがももちゃん。思わず背中ぽん、ってたたこうとしたら、

「プリンやて!?」

 いきなり大きな声。そのままつんのめっちゃった。‥‥まったく、プリンがどうしたってのさ。

 でも、顔を上げたら、みんなすっごくまじめな顔してた。

「‥‥ネ、あいチャン。いま、同じこと考えてるんじゃナイ?」

 ももちゃんも。

「ん〜?まぁ‥‥そやけど、なぁ。いくらなんでも、それは止めるやろ?」

 あいちゃんも。なんだか、あたしだけ仲間はずれだなぁ。

「そうよね‥‥あら?」

 はづきちゃんまで‥‥え?

「どうしたの、はづきちゃん?」

 はづきちゃんの手が、冷蔵庫の奥のほうに入ってく。

「プリンのあったところに、またメモがあるわ。
 ‥‥うん、とれた。なんだか、ぐちゃぐちゃな字ねぇ‥‥あ!!」

 はづきちゃんの手元を見て、あたしはすぐわかった。これがなんなのか。そっか、そういうことだったんだ。

 顔を上げたら、みんながうなづいてる。

「ケーキに乗せようよ、これ」

 メモをそっとつまんで、ももちゃんに。ももちゃんも、だいじそうに袋にしまってくれる。

「そうね。わたしも、それがいいと思う」

「そやな。‥‥ももちゃん、ごっつええデコレーション、たのむで!」

 次の日は3日で、おんぷちゃんの誕生日。それにしても‥‥ふあぁぁぁ〜ぅぅぅ 眠いなぁ。

 昨日からな〜んか様子が変だから、おかあさんに声かけられる前に出てきちゃったんだけど‥‥ちょっとやりすぎたかなぁ?

 朝のMAHO堂。うす〜いもやの中に浮かんでるの見ると、まだ魔女界に行けちゃいそうな気がする。こんなに早く来るなんて、はじめてだもんね。
 くふふ♪一番乗りかぁ。ちょっと、面白いかも♪

 みんなで決めといた通り、ポストの中からカギとって‥‥あれ? カギがない。ってことは‥‥


「あ、どれみちゃん、おはよう」

 ドア開けたら、はづきちゃんが、いる。

「なんや、早いなぁ。もっと寝ててもかめへんのに」

 キッチンにあいちゃんも、いる。

「ふたりとも、なんでこんなに早いの?? あたし、一番だと思ったのに‥‥」

 あたしが指さしてる前で、はづきちゃんが苦笑い。

「ええ‥‥なんだか家にいると、ママがぺたっ、ってくっついてくるのよ。」

「あたしもや。ずっとニヤニヤしっぱなしやし、な〜んや居づらくなってもぅてなぁ」

 タオルで手ふきながら、あいちゃんもこっち来た。なんだ、みんなもそうなのかぁ。ホント、なにたくらんんだか。

「ま、いっか。せっかく早く来ちゃったんだし、ももちゃん来るまでに、片付けちゃおっか」

「そうね。あ、どれみちゃん。テーブルクロスはいいのがないから、ビーズで編むことにしたの。手伝ってね」

 にこにこしてるはづきちゃん。だけど‥‥ビーズっすか? もう機械ないから手編みなんすけど‥‥あ、だめだ。メガネ光ってる。あいちゃぁ〜ん‥‥

「さーて、っと。あたしはちゃっちゃと料理つくらんとなぁ〜」

 あぁ、たのみのあいちゃんが行っちゃうぅぅ。

「ん〜、ケーキは最後に焼くんやろうから、それまでにオーブン使うもん作って‥‥ありゃ??」

 あいちゃんが止まった。まんまるく開いてる目のさき見てみたら、いつの間にかドアが開いてて、

「おはヨ〜」

 ‥‥って‥‥ええっ?ももちゃんまで、なんでこんな早いの!?

「お、おはよ、ももちゃん‥‥どしたの?」

「‥‥ん?」

  あたしのとなりで、はづきちゃんがいっしょにコケた。だぁ〜‥‥もう、腕ぐみして、首かしげながら『ん?』って言われてもなぁ。

「なんかネ、ママがヘンなんだよ」

 え?

「変って、ももちゃんとこまで!?」

 起き上がって聞いてみたけど、ももちゃんまだ首かしげてる。右に、左に。

「うん。昨日の夜もず〜っトなんか探しててネ。いきなり『あったぁ〜』なんていうカラ行ってみたら『なんでもない』ってごまかすシ。
 出かけるときダッテ、『がんばってね〜!』だって。なんなんだロ??」

 う〜ん‥‥ってみんな腕組みしてる。気がついたらあたしも腕組みしちゃってた。間違いない。おかあさんたち、みんなしてな〜んかたくらんでるよぉ。

「なんかさぁ、もぅ、バリケード欲しくなってきたよ」

 あたしが思わずつぶやいたとたん、あいちゃんが吹き出した。つられてみんなも大笑い。って、あたしはマジなんすけど。

「まぁ、言いたいことはわかるけどな。気にしててもしゃあないやん」

 くちびるとがらせちゃったあたしの肩を、ぽんぽんってあいちゃんがたたいた。そだね。いま考えてもしょうがないか。
 ふぅ、って息ついて気をとりなおしてたら、

「それじゃ、準備早く終わらせて、おんぷちゃん来るまで一休みしましょ♪」

 目の前に、ビーズを山ほど抱えたはづきちゃんが迫ってきてる。‥‥はぁ、昼までに終わるかなぁ?

「でゃぁっはぁ〜‥‥やっっと、終わったあぁぁ」

 テーブルにつっぷしたとたんに、ぼ〜ん、って時計が鳴った。目だけそっち見たら‥‥うぁ、もう3時じゃん。あんだけ早起きしてこれかぁ。

「どれみちゃん、お疲れさま。それじゃ、わたしはちょっと買い出し行ってくるわね」

 いってらっしゃ〜い、って頭の中で言いながら、あたしは手を振った。も、声も出ないよ。

 でも、はづきちゃんタフだなぁ。カーテンもテーブルクロスも、あたしちょこっとしか手伝えてないし。こんどは買出しかぁ‥‥あぁ、さっきリボンが足りないとか言って‥‥


 ぐるるぅぅぅぅ‥‥


「‥‥おなか、すいたなぁ」

 そういや、朝出てくるとき食べたっきりだっけ。これじゃパーティまでもたないよ。

 どっかになにか‥‥ん? うわぁ、いぃにおいがする いったいどっから、って、キッチンに決まってるか。あいちゃんたち、お料理作ってんだもんね。なんで今まで気づかなかったんだろ?
 ‥‥あぁ、足が、勝手に歩いてっちゃうよ。

 はづきちゃんには悪いけど、先たべてよっかな。へへ、おしょうばん、おしょうばん、っと♪

 キッチンに入ったら、あいちゃんの後ろ姿だけ。あれ?ももちゃんいないんだ。
 テーブルの上には、シュークリームがいっぱい‥‥ケーキはこれからなのかな?

 ま、いっか。それよりあいちゃんの方だ。あれだけ冷蔵庫いっぱいなら、きっと‥‥

「ねぇ、あ〜いちゃぁ〜ん

 エプロン姿でフライパン振ってるあいちゃんの肩に、めいっぱいの声出してあごのっけたら、

「ステーキやったら、ないで」

 あごがずるっ、と落ちた。ええぇぇ〜!? そ、そんなぁ。こんだけ、こんだけ食べ物いっぱいなのに、いっぱいなぁのぉにぃぃぃ〜

 がっくり床にへたり込んでると、上から、くくくっ、って笑い声。もう!ひとが落ち込んでるってのにぃ!

「しゃあないやん。冷蔵庫にあんだけぎょうさん食べもん詰まってるんに、ステーキ肉のスの字もあらへんねや。
 気ぃついたときは、思わず笑ぅてしもたわ」

 くっそぉ〜、マジョリカだな!

「まぁ、そう怖い顔せんと。今日はおんぷちゃんの誕生日なんやから、おんぷちゃんが優先や。あまりの野菜でチャーハン作っといたから、それでもつまんどき。な?」

 ん〜、それ言われるとなぁ。でも‥‥

「でもなぁ、つぎのあたしの誕生日は、ひとりなんだよねぇ‥‥」

 あはは、って笑いながら‥‥は言えなかった。口のわきが、ひくひくいってる。目の前が、すこしにじんで‥‥うぁっ!!

「あたたたたたッッ!」

 いきなりあたま抱えられたと思ったら、ぐりぐりぐりっって!

「いた!痛い! あいちゃん、ちょ、痛いって!」

「ま〜たそんなん言うからや。もぅ」

 ぐりぐり、はやめたけど、まだあたま抱えたまんまで、あいちゃんがため息ついてた。

「心配せんでも、またぎょうさん友達できるわ。どれみちゃんやったら」

 あたしは、あたまなぐられたような気がした。あいちゃんが、こんなこと言うなんて‥‥
 思わず突き飛ばそうとしたら、その前にくるっ、と背中にまわってぎゅって抱きしめられちゃった。

「せやけどな、どれみちゃんは、あたしの大親友や。あたしも、どれみちゃんの大親友や。これからどんなん友達できても‥‥また会ぅたときには、やっぱ大親友のまんまやて。あたしは、信じてるで」

 背中に、熱いのが広がってく‥‥と思ったら、いきなりばっとなくなった。

「あっか〜ん! コゲてまうやんかぁ!!」

 なんにもなかったみたいに、あいちゃんまた料理してる。あたしはそぉっと近よって、背中にかお埋めてみた。あはは、どきどきいってるよ。

「‥‥わかった。あたしも、信じる」

 チャーハン持ってキッチンから出る途中、ちょっと振り向いてみる。真っ赤になったあいちゃんが、フライパン振ってた。

「ただいまぁ」

 あ、はづきちゃんだ。ずいぶ遅かったなぁ、もう5時近くじゃん。

 まぁ、カーテンかけてテーブルクロスひいてただけだから、あたしもひとのこと言えないけど。

「遅くなってごめんね。帰りがけにおんぷちゃんのおうち、ちょっと見てきたわ。
 おうちのパーティ、いまさっき終わったみたいよ」

 へぇ、そっか。もうそろそろなんだ。

 あれ?なんかはづきちゃん、出てったときと違うみたい。ん〜っと‥‥あ、そっか。光ってるんだ。

「はづきちゃん、くちびる、なんかつけてるの?」

「え?‥‥あ、やだ」

 ポケットからハンカチ出して、ごしごし。ふき取ってる?‥‥って、ことは。

「あぁ〜っ! はづきちゃんずるい!おんぷちゃんちのパーティ行ってたんだ!!」

「え? あ、その‥‥パパがお呼ばれしててね、わたしがちょうど通りかかったから、連れてかれちゃって‥‥きゃ!」

 クンクン、クンクンクン。はづきちゃんの口もとから匂うこれ、いい匂い‥‥!!

「おまけに、おまけに‥‥ステェ〜キぃぃぃ」

「ご、ごめんなさいっ!!」

 ステーキ、すてーき、すてぇき、すぅぅてぇぇえぇきぃぃぃ〜‥‥


 パコン!


 あたたっっ!

「どれみちゃんは、さっきあたしのチャーハン食ぅてたやんか。はづきちゃん待たんと」

 ったぁ〜! あいちゃん、ぶあついおぼんで叩かないでよぉ!


 シャンシャン!


 あてっ、いててっ!

「シュークリームも、こっそりツマんでたヨネ?」

 ううぅ、なにも泡だて器で叩かなくたって‥‥

「もう!数が足りなくて、焼きなおしになっちゃったんだカラ!」

 ‥‥あちゃ。ももちゃんがじとぉ〜、ってこっち見てる。

「いや、その、い〜っぱい焼いてたから、ちょっとひとつ‥‥」

「ひとつ!?」

 あ、目がこわい。バレ‥‥てるよね、やっぱ。

「ひとつ‥‥のつもりだったんだけど、おいしくって、その‥‥ふたつ、みっつ、って‥‥」

 ぽんぽん、って、肩たたかれて振り向いたら‥‥はづきちゃん?めがねが‥‥

「ど〜れ〜み〜ちゃ〜〜んん〜?」

 光った!うひいぃっ!!

「あ〜、え〜っと‥‥ごめんなさい」

 あたま下げたとたんに、みんな大笑い。ぶぅ! なんか、あたしばっか損してるような気がするなぁ。

「遅くなっちゃったけど、リボン買ってきたわ。ふち飾りしてできあがりよ」

「あたしの方も、料理のしたく終わったで。あとはおんぷちゃんのかお見てからや」

 あぁ、そっか。もうおんぷちゃん来ちゃうんだ。‥‥って、あれ?

「そう言えば‥‥ももちゃん!?」

「ん?」

「ケーキ! 早く焼かなくちゃ!!」

 ‥‥あれ、ももちゃんとあいちゃんが、顔見合わせて笑ってる。なに?

「ケーキなら、できてんで」

 へ?

「で、でも、ももちゃん今朝からず〜っとシュークリームばっかじゃん。ケーキなんていつ‥‥」

「あ、わかった」

 あれ?はづきちゃん、手をたたいてにこにこ。わかんないのあたしだけ?

「まぁ見たらわかるわ。ほな、そろそろ運ぼか?」


 あいちゃんがキッチン行って、しばらくしたらキッチンのほうから山が来た‥‥山!?

「なに、これ?」

 山。運んでるあいちゃんがかくれちゃうくらい、おっきな、山みたいなケーキ。どうやって焼いたんだろ!?

 そ〜っとテーブルに置いたところでよく見たら、小さなゴツゴツしたのがアメでくっついてる。あ!これ‥‥

「シュークリームのケーキ!?」

 ももちゃん見たら、うんうん、ってうなづいてる。

「クロカンブッシュっていうノよ。いちど作ってみたかったんだケド、材料も時間もい〜っぱいナイとできないの」

 うっひゃぁ‥‥やっぱももちゃん、すごい。

 ちょっと、ぽけっ、としてるうちに、あいちゃんが料理並べてるし、はづきちゃんはテーブルクロスにリボンつけてた。

 ‥‥いっけない。あたしもなんか手伝わなきゃ!

 カランカラン‥‥


 MAHO堂のドアにガムテープで貼りつけたベルが鳴った。‥‥なんだかんだ言って、あたしが手伝えたのってこれだけかぁ‥‥

 だめだめ、落ち込んでる場合じゃない。テーブルの周りに集まってたみんな、いっせいにドアのほうを向いてクラッカーにぎってる。あたしもにぎって、せぇ〜の!

 ‥‥あれ? だれも入ってこない。ありゃりゃ?

「What?」

「なんや? おんぷちゃんとちゃうんか?」

 ももちゃんたちが首かしげてる。あたしが首だけちょっと伸ばしてよく見てみたら、なんか動いてるのが見えた。
 ぴょこん ぴょこん って、髪の毛のたば。

「やっぱ、おんぷちゃんだよ」

 なにやってんだろ? 立ち上がって、ドアまで迎えにいったら、ちょうどドア閉めたとこだった。

「‥‥ふぅ」

 おっきなバッグにもたれかかって。ひとつため息。なんだ、バッグの車輪が引っかかっちゃってたんだ。言ってくれればいいのに。‥‥だけど、気になるなぁ。

「おんぷちゃん、なに、その荷物?」

 腰くらいまであるバッグに、なんかいっぱい詰まってるみたい。なんだろ、横からちらっと‥‥

「ふふ♪まだひみつよ。奥の部屋においとくわね‥‥のぞいちゃ、だめよ」

 う〜ん、なんであたしにだけ言うかなぁ? もう、みんなクスクスわらってるしぃ。ほんとにのぞいちゃうぞ。

「ごめんごめん。どれみちゃんはもちろん、のぞいたりしないわよね?」

 ちらっと‥‥のぞけないなぁ、これじゃ。いつもだけど、やっぱ、おんぷちゃんにはかなわないや。


「おまたせ。じゃ、はじめましょ♪ きゃ!」

 奥の部屋から戻ってきたおんぷちゃんに、こんどこそクラッカーの雨! おめでとうの言葉がとぎれたところで、おんぷちゃんの目がやっぱり山に向いた。

「すごいでしょ! これ、ももちゃんが作ったんだよ!」

 Vサインしてるももちゃんと握手して、

「料理はみ〜んなあいちゃん!」

 力こぶ作ってるあいちゃんに親指立てて応えて、

「飾りつけは、はづきちゃん!きれいでしょ」

 にこにこ笑ってるはづきちゃんに手を振って、それから一言。

「‥‥どれみちゃんは?」

 あちゃ。それ言われるとなぁ‥‥

「あたしは‥‥ただ、ちょこっと手伝ってただけだよ」

 だれもフォローできないもんね。あはは‥‥あ!?

 おんぷちゃん、いきなりあたしの手首つかんで、

「だったら、わたしのも手伝ってくれるわね?」

 え?え!? そのままあたし引きずって、奥の小部屋に連れてかれちゃったぁ!?

 明かりつけても薄暗い部屋。引っ張ってきたあたしを置いといて、おんぷちゃんがカバンの中をごそごそやってる。

「あのぉ〜、おんぷちゃん?」

 ちらっ、とこっち見たけど、またごそごそ。あ〜あ、やっぱり、かな。

「やっぱ、おんぷちゃん、怒ったよね」

「なにが?」

 あぁ、言葉が痛いよ。しかたないか、あたしだけ‥‥

「あたしだけ、なにもやってないんだもんね。おんぷちゃんのために、って、みんながんばって‥‥」


 むにっ


 へ?

 一瞬なんだかわかんなかった。けど、気がついたら、ほっぺたが痛い‥‥

「い‥‥いはははは! ひょっほ、ほんふひゃん!」

 かおがのびてる! ぐにゅ〜って!ぐにゅぅ〜ってっ!!

「来たときから、な〜んか変だと思ったのよね。こぉら!」

 いたたたた‥‥あぁ、ほっぺたちぎれちゃうよ。って、なでてたあたしの前に、おんぷちゃんの人差し指がのびてきた。

「パーティMAHO堂でやろう、って言ったの、どれみちゃんでしょ?」

 いてて‥‥ん? あたしが、なに? あぁ、おんぷちゃん、ため息ついちゃってるよ。

「やっぱりわかってないんだから‥‥
 い〜い? どれみちゃんは、MAHO堂の思い出をくれたのよ?」

‥‥はい??

「昔に戻っちゃったMAHO堂でパーティなんて、気持ち悪いに決まってるじゃない。ふつうは。
 でもね、どれみちゃんが『やろう』って言うと、なんだかとってもステキな場所に思えてきちゃうのよ」

 いや‥‥いきなりそんなこと言われても‥‥って、うぁ! おんぷちゃん、突然あたしの手をにぎって、かお近づけてきてるよ!

「だから、ね。どれみちゃんのちから、もちょっと貸してほしいな。

 みんなの思い出になるもの、まとめて持って来たから。ね。ね♪」

 うぅ〜、うるうるの上目づかいって‥‥おんぷちゃん、それ反則だよぉ〜

 う〜、なんか、動くとキツいなぁ‥‥

 服をあっちこっち引っ張ってたら、おんぷちゃんが見に来た。

「キツい? サイズは合ってるはずだけど‥‥そうね、新しいし、もともと硬い生地だからしかたないわ。‥‥さ、いい?」

 よぉし、行ってみよう!


「おまちどうさま」

 おんぷちゃんが開けたドアの先に、テーブルでぼ〜っとしてるみんなが見える。つまんなそぅな顔して。

「あぁ、もう、主役がおらんでどない‥‥え!?」

「Wow!」

 おんぷちゃんに続いてあたしが並んだら、みんな目がまんまるくなってるよ。おんぷちゃんがクスクス笑う気持ち、なんとなくわかるな。

「それ、遠近学園の制服ね?」

「そうよ。どう?」

 おんぷちゃんが、くるっ、と一回転。あたしもまねしたけど、ちょっとふらつくなぁ。あはは。

「ええ! うん、ほんま、かっこええわ!」

「カッチリしてるけど、かわいい

「この前まで着てた見習い服みたいダネ!」

 おぉ! そっか。なんか着たことあるような気がしたんだ。これでぼうしあったら、見習い服じゃん。

「ふふ。気にいってくれたみたいね?」

 おんぷちゃんが笑いながら、背中にかくしてたカバンに手を入れた。あたしは、窓とカーテンすばやく閉めて回る。

「じゃ、みんなもね」

 カバンから取り出したのは‥‥

「「「え!?」」」

 もちろん、遠近学園の制服が三着!



「あ、あははは‥‥ピッタリやんか」

「わたしも‥‥ちょうどいいわ」

「わたしもダヨ。Why?」

 やっぱみんな、すっごく似合ってる! ‥‥けど、

「ねぇ、おんぷちゃん。みんなこんなにピッタリって、なんでわかるの?」

 こっそり聞いてみたけど、おんぷちゃん、ふふふ‥‥って笑うだけ。

 なんていうか、さすがだよねぇ。もう。

「みんな遠近の中等部に入ったみたいやなぁ」

 あいちゃんが、スカート気にしながら笑ってる。みんなも横でうなずいてる。

 そうだね。いっしょの中学だったら、きっとこんな風だったんだろうな‥‥

「みんな、着たわね? じゃ、ケーキの周りに集まって‥‥
 いい、撮るわよ」

 窓ぎわに置いた三脚の上のデジカメから、ピッ、ピッ、ってタイマーの音。どんどん早くなってくる音を聞きながら、あたしは、ちらっとみんなを見てみた。

 はづきちゃんがいる。あいちゃんがいる。おんぷちゃんがいる。ももちゃんがいる。

 みんな同じ制服で、ひとつの写真のなかに入るんだ。

「思い出、かぁ‥‥」

 つぶやいた瞬間に、フラッシュが光った。

「ふぅ。それじゃ、汚さないうちに着替えよっか」

 写真撮り終わって、ひと息ついてるところ。ちょっと暑くなってきたから窓に近づいていったら、

「あ、まだカーテン開けないで」

 おんぷちゃんの言葉に、みんなが振り向いた。おんぷちゃん、またカバンの中さがしてる。

 ゴソゴソ、ゴソゴソってやってるのが、ぴたっ、と止まったと思ったら、こっち向いてにっこり。なんか、いや〜な予感‥‥

「イッツ ショウタ〜イム♪」

 手に持ってるのって、‥‥ちょっと、それ!?

「青空中の制服!?」

「カレン女学院のも!?」

「あたしの中学のもあるやんか! おかぁちゃんがわざわざ見せに持ってきてた‥‥ああっ!!」

 そっか、おかあさんたちがニヤニヤしてたのって、これかぁ!!

「ももちゃんだけは制服がないから、ももちゃんのママの制服ね」

 なんだか、気が抜けちゃった。おんぷちゃん、用意よすぎだよぉ‥‥


 中学の、制服かぁ。なんか、照れくさいな。みんなもそうみたい。制服じっと見つめたり、かお埋めたりしてるよ。

「また写真撮るから、早く着替えてね」

 はいはい。

 ちょっと硬い遠近の制服脱いで、青空中のスカート着てみたら、足に当たるすそがやっぱ硬い。さいしょはみんな、こんなもんなのかなぁ。

 リボンむすんで、上着はおって‥‥よし、と。

 振り向いたら、みんなが違う制服になってた。


 茶色のブレザー着たはづきちゃん。

 チェックのスカートはいたあいちゃん。

 セーラー服姿のももちゃん。

 紺色ジャケットのおんぷちゃん。

 そして、紺ブレザーのあたし。


 みんなの中学の、みんな違う制服。なんだか、みんな知らない人みたいだな。

 さっきと違う、もうひとつの思い出の写真、か。

 ほんとだったら、ここにもうひとり‥‥あ。

「ちょ、ちょっと待って」

 おどろいてるおんぷちゃんの前で、あたしは脱いだばかりの制服を手に持った。

「ももちゃん、あのメモ、お願い!」

「メモ?‥‥Yes!」

 ももちゃんがおんぷちゃんに、あの冷蔵庫のメモ見せてる。きたない字のメモ。ひとことだけ『おんぷ おめーと』って書いてある‥‥

「これ‥‥ハナちゃん!?」

 うんうん、ってうなずきながら、ももちゃんがおんぷちゃんにメモ渡した。


 そっか、そだね。みんな、わかるんだ。


 はづきちゃんが、クロカンブッシュに紙巻いてくれた。

 あたしがその上から遠近学園の制服着せると、あいちゃんがアメをちょっとたらして、おんぷちゃんが、あのメモを貼り付けてくれた。

「おんぷちゃん、主役なんだからハナちゃんのそば、もっとくっついて」


 ほら、みんな、わかってくれてるよ。


「あいちゃん、リボン曲がってるよぉ」


 違う制服でいいじゃん。


「ももちゃ〜ん、スカート長すぎ!」


 おんぷちゃんの言うとおり、きょうはみんな、


「じゃ、いくよぉ! みんないっしょに!!」


 イッツ・ショウタイム!

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