四月一日、街ニ降ルぱふぇ


春休みも半分おわり。もうちょっとで中三かぁ‥‥なんかユウウツ。

和泉(いずみ) 和子(かずこ)‥‥わたしの親友がちょっと明るくなってから、そろそろひと月半。 なんかあったのかな〜、ってよくきいてると、なんか最近うちに帰ってないみたいなのよね〜。

親友としちゃ、ちょっと見過ごせないじゃない?

だから、きょうは遊びまわってるトコを押さえちゃうつもり。 ‥‥‥言っとくけど、わたしが遊びたいわけじゃないわよ。


四月一日、晴天。和子君は今日もこの部屋に泊まっている。

中学生が長い休みをあまり外にも出ずに過ごしているというのは、とても健康的とは思えない。が、お蔭で食生活がかなり改善しているのは確かなので、あまり口(うるさ)くも言えない。現に、今も昼食の良い匂いが鼻に届いている‥‥どうやら赤茄子(トマト)で何か作っているようだ。この一月(ひとつき)で、この種の西洋野菜にもずいぶん馴染んだものだ。

「いい天気ですね」

正午の時報と共に居間にやってきたのは(りょう)君だ。()(たけ)六尺弱の体は、私が知る限りでも屈指(くっし)の大男と言える。それでも私のほうが頭一つ高いのは親に感謝すべきか、あるいは怨嗟(えんさ)の念を持つべきか。

髪を気にする手には薄い黒の手袋。和子君がいる以上()むを()んことではあるが‥‥

「おお、了君。遅かったの。トオストが()めておるぞ」

私はそう言いながら、食卓の上にある皿を勧めた。

「あ、どうも。‥‥ちょっと追加の仕事がありまして、先ほどまで書き物をしていたものですから」

なるほど、徹夜というわけか。 昨晩と同じシャツにネクタイ姿で起きてきたことに違和感を感じていたのだが、これで得心(とくしん)がいった。

考えつつ、ふと視線が窓の外に出た。暖かい日差しが裏手の川にきらきらと映えている。

「あれ?」

同じく窓の外を見ていた了君が、突然妙な声を上げた。

「どうしたな?」

了君が指さす先では、人が道にうずくまっていた。ちょうど和子君と同じくらいの背格好をした、髪の短い女の子。淡い黄色の 上下つなぎ・・・・・ が花のように見える‥‥

(ワンピース)

いきなり、頭の中に声が響いた。ここ(しばら)く訂正を食らってなかったので、やたら(カン)(さわ)る。

「和子君、あの子は知り合いかの?」

気を取り直し、台所に向かって声をかけてみる。飛び出してきたのは洋風割烹着姿の‥‥

(エプロン!)

‥‥‥

うんざりとしている間に、洋風‥‥もとい。えぷろん姿の和子君がやってきた。小柄な体で窓から身を乗り出すため、私と了君の肩につかまっている。頭にぶつかってくるのは、二条に分けて縛った長い髪。

「あれっ?一美(かずみ)!?」

どうやら正解だったようだ。となると、 普通の子・・・・ がいつまでもあそこに居ては危ない。

「すぐに行ってあげると良い。あのままでは倒れてしまうぞ」

うん、と一言残してパタパタと賭けてゆく。あっという間に窓の下にやってきた彼女は、道端の女の子に肩を貸して、こちらに向かってきた。

「来るみたいですね」

了君の声に非難めいた響きが混じる。私はただ(うなず)くだけに留めた。和子君の知り合いなら、助けるのに躊躇(ちゅうちょ)するわけにはいかない。

たとえ、いかなる災厄を招くことになろうとも、だ。


ぜぇぜぇ‥‥なんか、とっても気持ち悪い。さっきまで、何ともなかったのに。

ほんと、ついさっき。そう、すぐそこの交差点を過ぎたところでなんか嫌ぁな気分になったんだ。それでも歩いてたら、もう、一歩あるくたびにどんどん気持ちが悪くなって‥‥もう、動けない───

「一美!どうしたの!?」

すぐ近くで、親友の声がした。わたしは、最後の力を振り絞って‥‥‥

「和子おぉっ!助け‥‥え!?」

目の前で、和子が目を丸くしてる。わたしはそれ以上に驚いてた。なんで、声がでるの?

「一美‥‥心配して走ってきた友達に、そういうことしていいと思ってる?」

いけない。目がマジだわ。とりあえず、痛くないけど胸を押さえてあやまっとこう。

よくわからないけど、和子が来てから、ふぅっ、と体が楽になったんだ。まるで、悪霊でも追い払ったみたいに。‥‥って、なに考えてんだろ、わたし。


和子の肩につかまって、川沿いの小さなマンションの階段を上がると、ぽつん、とひとつだけドアがあった。 そこがぱかっと開いて、出てきたのは背の高い男の人。

「ごめん、ちょっと友だちが気分悪くなっちゃって‥‥休んで、いいよね?」


玄関から中に入ると、四角いテーブルのある居間。その手前側の椅子に座らされた。さっき出てきた男の人が、黒い手袋をはめた手でコップを差し出してくれる。手にぴったりと貼りついてて、まるでお父さんが舞台で使ってるのみたい。

「え、と。舞台で使うのは白、だっけ」

「え?」

なんでもないです、って手を振って顔だけ笑ってみる。受け取ったコップからはレモンの香り。

「あ、気分だいじょぶ?」

男の人の脇から、和子がひょい、っと顔を出した。水色のキュロットにピンクのTシャツ。エプロンまで着けちゃって、ホントに自分の家にいるみたい。

わたしは、へいきへいき、と笑って答えた。 レモン水が入っていたコップを和子が受け取って、

「道端でしゃがんでるんだもん。心配したんだよぉ」

ってぶつぶつ言いながら別の部屋に入っていく。きっとあそこが台所なんだ。

「しばらく休んでゆくとよい。ふらついてたりしては、家の方が心配するじゃろう」

後ろから声がした。おじいさんみたいな言葉づかいだけど、ずいぶん張りのある、澄んだ声。

振り返ると、そこには白い和服姿の大きな人がいた。黒手袋の人も大きいけど、とても比べものにならない。

「よく来たのぉ。一美君」

「あれ、鉄生(てっせい)、一美のこと知ってたっけ?」

台所からひょこっ、と顔を出して和子が聞いた。手に紅茶のカップを持って。

うん。わたしは知ってる。この人は‥‥

「おお。和子君の友人で、奇術師をしておられる(いつき)殿の娘さんじゃろ」

「やっぱり!この前お父さんの代わりに舞台に立ってくれた人だよね」

白い着物の大きなひと‥‥鉄生さんが笑った。頭の上で縛ってる髪がゆれる。顔は若いのに、笑い方までおじいさんみたい。

「うむ。あれはなかなか楽しかった」

って言いながら、テーブルの横の椅子に腰かけた。東側の出窓に背中を向けてる。手袋の人はその反対側に、和子は四つのカップをテーブルに置いてから、わたしの正面に座った。

テーブルの上にはポットと砂糖だけ。テーブルクロスはざっくり編みの生成(きな)り麻‥‥たぶん和子の趣味。

紅茶はリプトンのティーバッグ。少しだけ砂糖をいれて、かぱっと飲みながらまわりの顔を見てみた。‥‥うん。この二人、間違いないわ。

「鉄生さん、って‥‥お父さんが折っちゃった足を治してくれた人。でしょ?」

「いや、違うのぉ」

紅茶をすすっている鉄生さんが、すぐに答えた。

あれ?おっかしいな。ぴったりなのに‥‥でも、嘘ついてるようには見えないけど‥‥

「あれをやったのは、この了君じゃ」

げふっ!

大きな音がして、テーブルクロスに()みができた。

「わしも手伝いくらいはしたがの‥‥どうしたな?」

げほげほ、むせてる黒手袋の人─了さん、かな─の背中を、和子がなでてる。

鉄生さんって、割とおちゃめな人みたい。

「鉄生先師(せんし)!!」

「仕方なかろう、隠しておっても、和子君が気まずくなるだけじゃ。わしらはタダでさえ目立つのじゃからな」

了さんが頭かかえてる。あはは。

「そうそう。お父さんに聞かされた『ムサい天使』そのままだもんね。すぐわかったよ」

言いながらわたしは立ち上がって、まだ頭をおさえている了さんにおじぎをした。

「お父さんの足をを治してくれて、ありがとうございました」

ふわっ、と髪の毛に何か乗っかった。軽いため息が聞こえたあと、ぽんぽん、って軽く叩いてる。

「たまたま治せてよかったよ。治せない怪我(けが)や病気はいくらでもあるんだから」

わたしはにっこり笑ってまた腰掛けた。了さんも仕方なさそうな顔で笑ってる。部屋の中でも黒い手袋なんておかしな人だと思ったけど、うん。悪い人じゃないんだわ。

わたしはよけといたティーバッグをまたカップに入れて、二杯目をいれた。そしたら、

「でさぁ〜」

舌っ足らずな、甘えるような声があたりに響いた。

和子がはっとして口元を押さえてる。な〜るほど。ここじゃネコかぶってるのか。

でも、ぜったい正体バレてると思う。だって男の人ふたりは、わざと目をつぶって紅茶飲んでるんだもん。

ちらちら見回して、だれも変な顔をしていないことを確かめてから、和子が言った。

「一美、こんなとこまで来て、なにか用じゃなかったの?」

「ああ、それならもう済んだんじゃないかな」

わたしの目をちらっと見て、了さんが言った。

「え?そうなの?」

「少なくともわしらに後ろ暗いことはないでな」

鉄生さんも、了さんと同じようにちらっと見てる。あははは、バレバレかぁ。

「?‥‥‥あぁっ! 一美、あんた変なこと考えてたでしょ!!」

「いや、だってさ、女子チューガクセーが夜な夜なオトコのマンションに入り(びた)ってるのよ。こんなおもしろい‥‥いたっ、痛いってば!!」

大きなクッションが、ばしばし当たってきてる。その向こうに和子の真っ赤な顔。あいかわらず、免疫ないんだから。

「まぁ、その辺にしておくんじゃな」

「本気で心配してくれる友達を殴るっていうなら、僕たちも承知しないよ」

ああ、なんかいいなぁ、この人たち。わたしも友達になりたい‥‥


殴るのに使ったクッションをイスの背中に戻してると、ふいに一美が言った。

「ね、『まじっく・ぴえろ』に入らない?」

一瞬。鉄生と了さんが目を見合わせてから、ふたりして笑いだした。

「わ、笑うことないじゃない!?」

一美は真っ赤になって怒ってる。鉄生がまぁまぁ、って手でなだめてるけど、ふくれた顔が戻ってない。

『まじっく・ぴえろ』は一美のお父さんが参加しているマジックサークル。足を折ったおじさんの代わりに鉄生がお面をかぶって出てたけど。あたしは知ってる。あれは、マジックじゃない、って。

「よいかな、一美君。鳥が空を飛ぶのを奇術とは呼ばんじゃろ?魚が海の底を泳ぐのものぉ。わし達もおなじじゃよ」

「こないだの、空中追いかけっこも?」

そうそう。鉄生と了さんが見せてくれた最後のマジック。舞台から空中に飛び出しての追いかけっこ。すごかったけど‥‥きっと、あれもマジックじゃない、はず。

「もちろん。あれはマジックなんかじゃないよ。そうだな‥‥ 和子ちゃん、片栗粉(かたくりこ)でもない?」

うん、って言って台所から粉を持ってくる。テーブルの上に新聞紙を乗せて待っていた了さんに粉を渡すと、30cmくらいのところから少しづつ落としていった。

さらさら、落ちていく。細かい粉が、まっすぐに


‥‥え?


テーブルから15cmくらいのとこで、粉が散った。

ううん、散ってるんじゃない。すべり落ちてるんだ、まあるく。まるで、そこに見えない球があるみたいに‥‥

「これ!?」

了さんが目でうなずいてた。

「そっか、これに乗ってたんだ」

「実際にはもう少し大きいんだよ。あまり小さいと滑ってコケる」

突然くすくす笑い。一美だ。

「お父さん言ってたよ。舞台裏で何度か落っこってた、って」

「階段じゃないからねぇ。実際にはこの結界をふたつ、踏み台にしてたんだよ。蹴ったのをすぐ消して、次の踏み場所にまた新しく作らなきゃいけない。消すのが早すぎたり、作るのが遅すぎると‥‥ってわけ」

了さんは両手を広げて、バランスをくずしたポーズをとってみせる。くすくす笑うあたしたちにちょっと照れ笑いしてる。

「本番でも落ちてこそないけど、実は何度かコケてたりするんだよ」

「飛んだりとかは、できないの?」

一美が目を輝かせて鉄生に話しかけてる。鉄生は笑いながら首振ってた。

「わしはできんな。じゃが了君はできるのではないかな?」

話を振られた了さんはちょっと考えてから、

「できないことはないですけど‥‥僕のは舞台じゃ無理ですよ。屋根(こわ)しちゃいます。
狭いところを自由自在に飛ぶとなると‥‥(ほう)さんならできそうだなぁ。あ、でもあの人が飛ぶと舞台燃やしちゃうか」

「それじゃ(かく)さんは?赫さんは何ができるの?」

調子に乗って、あたしも聞いてみた。赫さん‥‥いつも杖を持ってる小柄な占い師のおじさん。ここんとこ、この部屋には来てないけど、あの人も鉄生と同じで、きっと変なことができるはず。

「そうだなぁ、赫さんの得意と言ったら、やっぱり水芸、かな」

「それはまぁ、やれと言われて、出来ないわけではありませんけれど」


え!?


みんなが声のほうを向いた。玄関には、小柄なおじさんが立ってる。薄い茶色の背広に帽子(ぼうし)、もちろん、手には亀の細工(さいく)をつけた杖を持って。

「あ‥‥ああ、赫さんか。お帰りなさい。
それで‥‥‥」

「私はやりませんよ。マジックでそれは反則ですからね」

「そうじゃなくて‥‥」

了さんは笑いながら、あわてて手を振ってる。

「朋さんの件ですよ」

あれ?っていうあたしたちの顔を見て、

「さっき言ってた人だよ。仲間に入れたいから、赫さんに説得をお願いしてたんだ。
で‥‥‥?」

赫さんは居間のすみっこにあったいすを了さんのそばに持ってきた。杖を大事そうにかかえながら座って、

「ええ、朋さんには承諾して頂きましたよ。ただ、あの人は‥‥その、私たちと違って まともな・・・・ 職業ですから、ね」

まとも・・・ って‥‥

「‥‥赫さんたちは、まともじゃないの?」

「まぁ、もの書きと占い師だからねぇ」

「休業するのに、あまり しがらみ・・・・ はありませんね」

了さんと赫さんが顔を見合わせて苦笑い。そんなもんなんだぁ。

「じゃ、その人は?」

「大学の先生なんだよ。数学を教えてる」

げ!!

‥‥あ、いけない。声に出ちゃった。しかも一美と同時に。

了さんがあたしたちを見て、また苦笑いしてる。

あ〜あ。やっちゃった。

「朋さんが来て時間が取れるようなら、数学の勉強を見てもらうといいよ。きっと得意科目になるから。
───じゃあ、もう(しば)らくかかりますか」

赫さんは了さんのカップを使って、新しいティーバッグで紅茶をいれた。了さんはなんにも言わない。別に気にしてないみたい。

「手続きに時間がかかるだけで、休みは充分取れそうですよ。問題は、どれぐらいの期間を申請するか、です。ちゃんと決めておかないと」

「堅い商売だからなぁ‥‥わかりました。だいたい見積もっておきましょう───」

ぽんぽんと二人の間の会話をながめていたけど、なんか いごこち・・・・ 悪くなってきた。一美も同じみたいで、 さっきからな〜んかふくれてる。

しょうがないわ。ここは鉄生たちだけにしてあげよう。

「鉄生、まえにパフェ食べたいって言ってたよね。一美もいるし、作ってあげるね
ほら一美、台所いこ!」


お台所。あたしと一美は、パフェ作りにとりかかってた。

「ねぇ、和子」

「ん〜?」

って鼻で返事しながら、あたしは冷蔵庫をあさってた。たしか、紙パックの生クリームがまだあったと思う。

「ここってさぁ、新品みたいだよねぇ」

「ん〜」

イチゴも残ってたはず。たしか野菜室の方に‥‥


ぱこんっ!


あいたっ!!

「ちょっと一美、ボールで殴らないでよ。それ(かね)のでしょ!?」

「ぼ〜っとしてるからいけないの」

あのねぇ‥‥って言おうとして、気が付いた。一美のようすが、なんか変。

「どしたの、一美?」

声をかけたら、ぷい、って横向いて、うつわ探してる。あ、なんか腹たつ態度。

でも、一美がこういう怒りかたする、っていうのは以前(まえ)にもあった。あれはたしか‥‥ええと、そう。 お父さんのマジックを、ばかにされたとき───

「一美ぃ。ホントに鉄生たち『まじっく・ぴえろ』に入って欲しかったの?」

ぴくっ。一美の肩がふるえた。やっぱ、わかりやすいわ。

がばっと振り返って、

「だって、だってあれだけのことができるのよ!不思議な力?いいじゃない。わたし感動したわよ。落ちそうになりながら透明な球作ってたなんて。空飛んでる鳥だっていいじゃない!羽ばたかなきゃ、空だっていけやしないわ!!」

どうどうどう‥‥いまは手綱(たづな)が欲しいわ。切実に。

「だったらさ、みんなで食事して、そこでまた言ってみようよ。どうしてもイヤっていうのじゃないなら、きっとわかってくれるよ‥‥だから」

あたしは目の前の‥‥にっくき金ボールに生クリームをぶちこんだ。

「落ち着くまで、これでストレス発散してね」


出来上がったパフェを持って台所を出ると、ちょうど了さんが熱弁をふるってるとこだった。

「───ですから、同一時点に長時間存在するためには、その余計なエネルギーを別の方法で消費してしまえばいいわけです。たとえば───」

ちんぷんかんぷんな話で目の前がくらっ、としたけど、なんとか気をとりなおして、胸を張ってみる。

「お待たせ〜。ちょっとテーブル(かた)してくれる?
‥‥わ!!」

あたしの足が、何かに引っかかった。

「わ、わ、‥‥あわっ!!」

お盆から、パフェが浮いた。あたしは体をひねってなんとか()みとどまった。けど、パフェが‥‥

「あぶない!」

了さんがくるっと振り向いた、そのとたんに‥‥とたんに‥‥パフェのまわりに箱ができた。箱がピカって光ったら、中身がぜんぶなくなっちゃった!?

「い、い、いま、ピカって!ピカって消え!!」

「‥‥しまった」

あたしの手には、ただお盆があるだけ。そのお盆を、了さんがぼんやりした目で見つめてる。

「飛ばしちまった‥‥」

「どこに!?いつ!?」

初めて聴いた。赫さんの厳しい声。

「この真上‥‥上空およそ750m」

「時間は?」

「約‥‥15分後。15時28分35秒ないし40秒」

え‥‥っと‥‥

「どういうこと?」

「わかりやすく言いますとな‥‥」

赫さんが頭をかきながら、あたしたちの方に向きなおった。ちょっと顔が青い。

「東京タワーの倍以上の高さから、重さ200g以上のガラスの(かたまり)が5個、中身入りで、街中(まちなか)に降ってくるのですわ」

「なにそれ!?」

ぱこん、と音がする。あたしの手から、お盆が落ちた音だ。なんか、遠くのできごとのように聞こえる。

「当たったら当然危ないし、空中で割れたりしたらさらに危ないですな。というわけで‥‥了くん。責任とって行ってきなさい」

話してる途中で了さんが立ち上がった。そのまま玄関に向けて駆け出してく。

あたしははっとして、エプロンをぬぎ捨てた。

「待って!あたしも行く!!」

「ああ、和子くん。行くのならこれを」

赫さんの手から、拾ってくれたお盆を受け取って、あたしも外へ飛び出した。

キュロットはいててよかった。急な階段を二段抜かしで駆け下りながら、あたしはそんなこと考えてた。

階段を降りきったら、裏の河原の方で了さんのくうきが濃くなってる。あたしは玉石につまづきながら、そこに走った。


河原のすみ。低い木が生えたところ。そこに了さんがいた。青白い光につつまれて。

「了さん、お盆!」

なんかまぬけ。言ってから思っても遅いんだけど。

よく見ると、了さんは手を胸の前に縮めて、三本の指を小鳥みたいな形にしてた。‥‥お盆、渡すの無理みたいだね。

「一緒に行くなら、どこでもいいから(つか)まってくれ」

了さんのまわりが、青白くぼおっと光っている。よく見たら背中の後ろあたりにふたつ光の出っぱりがあったから、そこにつかまってみた。

「いいよ。‥‥たぶん」

青白い光がだんだん大きくなってる。なんか足元がゆらゆらするなあ、って思って見てみたら、いつのまにか足の下にも光が入りこんでた。 よくわからないけど、足元が地面から離れてく。でも怖くない。青っぽい光の上に乗っかって、ゆっくりと川のほうへ進みながら昇ってく。

川を半分渡ったくらいのところで、ぐる〜っとまわりはじめる。いきなり、って感じじゃないから、きっとわざとだね。

大きく回ってたら、後ろにのびてる青い光のおびが渦巻きみたいに見えた。おびの上の方はとげとげして見えて、なんか‥‥

「龍みたい‥‥」

了さんは笑って答えた。

「そう。だからこの術を『蒼竜変化(そうりゅうへんげ)』と呼ぶんだ」


「行ったのぉ」

鉄生さんがやけにのんびり言ってるのが、なんかイライラする。玄関から外へ出ると、河原の隅のほうで和子が了さんの背中に乗っかってるのが見えた。

しばらく見ていると、二人が宙に浮いていった。はじめはゆっくりと、そして、だんだんスピードをあげて。

「なに、あれ?」

「ん?‥‥おお、そうか。 見えない・・・・ のが 普通・・ じゃったな。和子君を見ているとつい忘れてしまうんじゃが」


へ!?


一瞬ぽけ、っとなったわたしの頭に、さっきの話が浮かんできた。そうだ、了さんが言ってたじゃない。『僕が飛ぶと、舞台の屋根壊しちゃう』って。

「まぁ、心配せんでも、了君なら二里くらい上がるのは造作(ぞうさ)もあるまいて
‥‥ん、どうしたな、赫君」

鉄生さんが振り返った方を見てみる。と、赫って呼ばれてたおじさんが難しい顔をして玄関に立っていた。

「先ほどからずっと考えていたのですけれども。彼は‥‥了くんは果たして、降りることを考えているのでしょうか。 パフェと和子くんつきで・・・・・・・・・・ ───」


足元はきらきら輝く青い光。まわりもぼんやり薄い青の光につつまれてる。けど傾いてくお日さまはやっぱりオレンジ色で、パフェの上に乗せたいくらい。

青い光のなかのあたしたちは、だんだん大きな円を描きながら、どんどん、どんどん昇ってく。川の向こうの大きな山からさらに奥の山が見えても、まだどんどん、どんどん昇ってく。

「もうじき目標の高さだけど、もう少し高く上がるよ」

腕と胸で押さえてたお盆がずり落ちてきたから、口で引っ張り上げたところで了さんが言った。

あたしは口が開けなくって、奇妙な音で返事する。‥‥あ、ちょっとヨダレたれちゃった。あとで()こう。

そうそう、もうじき目標‥‥ってことは、地面から750mかぁ。あたしは下を見てみた。なんか、地図、って感じ。

家はもう、どれがどれかわかんない。ごちゃごちゃしてて、モザイクみたい。ところどころ一色に見えるのは学校のグランドや小さな神社。 川はヘビみたいにくねくね曲がって、ところどころお日さまできらきら。とってもきれい。


「‥‥もうあと5分ほどだね。じゃ、出てくる場所の周りを旋回するから」

了さんの声にはっとした。いけない、いけない。なにしに来たのか忘れちゃってるわ。

でも‥‥

「きれいな空‥‥なんか、気持ちいいね」

濃い青の光の中にいる了さんが、頭を上げた。

「そうだね、本当に。今度機会があったら、成層圏まで連れて行ってあげるよ」

『成層圏』聞いたあたしは思わずくすくす笑い。だって、ねぇ。いくらなんでも、息ができなくなっちゃうじゃない?

「いや、冗談じゃないよ。きみの周囲にある青い光だけど、これで外界から隔離してるんだ。だからほら、結構高いところまで上がったのに、耳が痛くならないだろう?」

そういえば、うん。こんなに勢いよく昇ってきたのに、風も感じないもんね。そっかぁ、かたいガラスみたいなものなんだ───え?ああっ!!

「じゃ、じゃあ了さん、どうやってパフェ受け取るの!?」


答えがなかった。


しばらく‥‥ほんとに しばらく・・・・ してから、小さめの声がした。

「‥‥ごめん。僕一人だけのつもりだったから、考えてなかった‥‥」


やっぱりぃ〜!!


「ああ、心配しないで。さっきの階段じゃないけど、デカい結界作ってそれに乗れば何とかなるって」

大丈夫かなぁ‥‥あたしは不安なまま青い円の真中を眺めてみた。そしたら、白っぽく光るものが見えた。

「了さん、あれ?」

あたしがそう言うよりも早く、青い円が渦巻きになっていった。光の近くに寄ってるんだ。

「それらしいな。最接近したところで術を解くから、お盆をしっかり握るんだよ‥‥それじゃ、いくよ!!」


ふわっ


いきなり、足元がなくなった。トンネルに入ったみたいに耳がキーンと痛くなる。ぴゅうぴゅう吹く風も感じる。

あたしは目をつぶった。下を見たら泣きそうだったから。お盆をぎゅっと抱きしめた。了さんとの約束だから。

了さん、早く、早くっ!!

祈った次の瞬間、おなかの脇をぎゅっと掴まれたかとおもったら、足元が できた・・・

「さ、目を開けて。正面だよ!」


あたしはお盆を持った手を、まっすぐまえに突き出した。同時に目を開けると、そこにはいつつのパフェが乗っかっていた。


「降ろす方法って、ないの!?」

一美くんが叫んでいます。‥‥無理もないことです。落ちたら死ぬような場所に親友がいて、降りる手段がないかもしれないのですから。

「あることはあるんじゃ。じゃがのぉ‥‥」

「『昇竜界』ですか?」

私は鉄生どのの言葉を引き取りました。たしかにあの術ならキロ単位でもなんとか降りられるはず、ですが‥‥

「あれを使ったのでは、今度は下におる者が危険じゃな」

私にひとつ考えが浮かびました。が、口を開こうとしたとき、

「いいかげんにして!!」

一美くんに(はば)まれました。

「考えてわからないなら、行くしかないじゃない! 和子たちはどこにいるの!?あたしが行って、マットでも安全ネットでも持って待ち構えてやるわ!!」

上空750mから落ちてくる人間二人を、マットで受け止める、ですか。私は悪いとはおもいつつも、つい口元が(ゆる)んでしまいました。

───これは、ご期待に沿()わねばなりません。

「場所なら、私がわかりますよ。では‥‥行きましょうか」


パフェはなんとか受け止めた‥‥なぜかみ〜んな凍っちゃってたけど。了さんに聞いたら、この移動方法はまだ誰も試したことがないから、なにが起こったのかわからない、みたい。納得はできないけど、なっちゃったものはしょうがないわよね。

でも凍ったパフェなら下に降りるまで崩れないし、かえってよかったのかも。


そんなことを考えてたら、了さんが言った。

「さて、どうやって降りようか‥‥」

「え?」

一瞬、あたしは言葉の意味がわからなくなった。どうやって‥‥どうやって、って、なに?

「実はね、さっきの術は一度解いちゃうとしばらく使えないんだよ」


ピシッ。‥‥って、なにかが割れる音がした。そんな気がたしかにした。


「とりあえずは、大きめに作った球に乗ってればいいけど‥‥このままだと回復できないしね‥‥
せめて、下にだれもいないってわかれば、なんとかなるんだけど‥‥」

下を見た。目に見えない球を通して、マッチ棒の頭くらいの家がいっぱい並んで見えてる。

「だれかいると、だめなの?」

「うーん‥‥そう、たとえば、ロケットを考えてくれ。上空から地面に向かってまっすぐ着陸するところだ。当然、炎は下を向いて噴射(ふんしゃ)されるよね。もし、この真下に人がいたら───
今やろうとしてるのも、似たようなもんなんだ」

はは。なんとなくわかった。あはは。笑いが引きつってくるのが自分でもわかる。あはははははは

‥‥‥いけない。了さんが心配そうな顔してきた。少しおちつこう。

「まぁ、他の降り方も考えてみるから、和子ちゃんはとにかく、そのパフェを守ることだけ考えてくれ。
‥‥大丈夫。生き残ることにかけちゃ、僕らに勝るヤツはいないんだから‥‥」


「いけませんね。街の方まで風に流されてますよ」

赫さんって人が言った。あのマンションからもうずいぶん走ってる。走るの速すぎて、息が切れちゃう。時々とまって上空にいる(らしい)和子たちの場所をチェックしてるからなんとか追いつけるけど。

「い、いま、どのへん?」

赫さんがくるっと振り向いた。心配そうな顔。

「もう大分降りてきているようですよ。ほら、肉眼でもなんとかわかります」

汗だくの顔を手でこすりながら、指を指している方向をじっと見てみた。‥‥言われなかったらゴミとしか思えないのが、確かに浮いてる。 思わず赫さんの顔を見ると、にっこりうなづいてた。

「問題はここから下じゃの。どうも『風』が途切れてしもうておるようじゃ」

「もう、見つからずに降りるのは無理ですね‥‥」

わたしの隣で、静かな声がした。鉄生さんといい赫さんといい、あれだけ走ってなんで息切らしてないのかしら。なんか腹立つわ。

「要するに‥‥見えるようになら‥‥降りられ‥‥る‥‥ってことね!!」

はぁはぁ言いながらだと、まともに喋れないじゃない。ああ、悔しい! いいわ、見てらっしゃい。あたしにだって、できることあるんだから。

あたしは2回深呼吸してから、携帯の短縮キーを押した。何回かのコールのあと、相手が出る。

「あ、お母さん?あたし。一美。お父さんに、急いで来て、って言って。場所は‥‥」

二人があっけにとられて見てる。ふふ。

「か、一美くん、いったい‥‥?」

携帯を切って、ポケットにしまいこんでから、わたしはカッコつけて両手を広げた。

「イッツ・ショウタイム、よ!!」


もうずいぶん降りてきた。 よーく見れば、もう下にいる人の服までわかる。あたしの真下は商店街みたい。

でも、了さんはじっとあたりをにらんだまま。‥‥しかたないんだけど。

ここまで降りてくるのだって大変だったんだから。『風』って呼んでる なにか・・・ に乗っかって、すこしづつ、すこしづつ降りてきたんだ。でも、ここから下には『風』が流れてないんだって。どうするつもりかな?

こういう時に言ったら悪いけど‥‥パフェ、溶けてきちゃってる。下までもつかなぁ‥‥


そんなことを考えながら、ぼーっとしてたら、目の前のくうきがへにょっ、てなった。

風が『かたまってる』おかしな言い方だけど、これが一番あってると思う。

風文呪(ふうもんじゅ)だ。なんだろう?」

了さんがかたまりを右手で握った。目をつぶって、時々うなづきながら。

「げ、なんだと!?」

びっくりした。なに、なに!?

「うーん‥‥‥確かに、他に手はない、か。
仕方ない!和子ちゃん、片手でお盆を握って、もう片手で僕につかまるんだ。あとは僕の言うとおりに動いて」

「ねぇ、なにがあったの?」

「どうやら、一美くんがお父さんを呼び出したらしい。それで‥‥」

「それで?」

了さんがちょっと口ごもった。空を見上げて、ため息ついて、

「僕たちをマジックショーに仕立てるんだと!」


「さぁお集まりの皆さん、『まじっくぴえろ』最新のマジック、お楽しみいただけているでしょうか?」

燕尾服に黒い帽子。伝統的な奇術師服に身を包んだ一美君の父上‥‥(いつき)殿が、商店街の中央に陣取っている。

上空の二人はすでに『見えない風船で浮かせた』ことにしてしまった。三個の風船を一つづつ割って、上空四十丈からの脱出劇。

‥‥彼が到着してわずか半刻ほどでこれほどの条件を作り上げてしまうとは、なんという話術か。一流の奇術師とはこうも素晴らしいものか。

「鉄生殿‥‥」

赫君が声をかけて来た。私達は奇術の邪魔にならないよう、小さな路地に隠れている。

「風文呪は届いたようじゃ。あとは拳銃に合わせて指示を送れば良かろう」

私は、樹殿の動きをじっと見ていた。その目がちらりとこちらを見る。私は軽く首肯(うなず)く。

「まずは、左の風船!」

玩具(おもちゃ)の拳銃を宙に向け、引き金を引く。その直前に私は風文呪を使った。


パン!


軽い響きがあたりに伝わった瞬間、空中の二人が、がくっと左に傾いた。そのままゆらゆらと前後に揺れている。

脇で赫君が汗を(ぬぐ)っている。

「続いて、右の風船!」

わずかに目標をずらした指が、引き金を絞る。


パン!


空中の二人が、今度は右に傾いた。平衡を失ったように、ゆっくりだがくるくると回りはじめる。

周囲の観客からは、喧騒と息を飲む音が半々に聞こえる。

「さぁ、いよいよ最後です。この高さからの脱出なるか!?よくよくご覧ください!!」

赫君が左手に持った杖の頭に、そっと右手を添えた。了君が失敗した場合を考えているのだろう。 無論、私も準備する。了君も、赫君も失敗した場合。最後の最後は私の出番だ。

樹殿の右指が最後の引き金に掛かった‥‥


最後の一発‥‥あたしを抱えている了さんの腕に力が入った。

「いっくぞぉ!」

了さんが右手をさっ、と上げた。とたんに足元がなくなる。おちる。おちる。おちるぅぅぅ!しっかり抱えられてるって言ったって、いっしょに落ちてちゃ意味ないっ!!

‥‥でも、あたしは目をつぶらなかった。そのかわり、目の前のパフェをじっと見る。パフェが崩れないように。願うのは、それだけ。

「4・3・2・1‥‥どうりゃっ!!」

変なかけ声といっしょに、 なにか・・・ があたしたちを持ち上げた。

最初は風かと思った。けど、ちがう。手の中のお盆もゆれてないし。下から押されてる感じ。

「もう一度落ちるぞ!」

ふわっ、とまた足もとがなくなった。こんどは2秒もしないうちにまたブレーキがかかる。

「次で最後だ。和子ちゃん、笑って」

へ?

「笑うんだ」

え、え?ええっ!?

「いいから笑う!これはショーなんだから!!」

はっとした。そう、そうだ。下にいる人たちにはショーなんだったわ。了さんはマジシャン。あたしは‥‥アシスタントの女の子。

了さんもネクタイをきゅっ、と締めなおしてる。よぉし、あたしもいくわよぉ〜‥‥せぇ、のぉ、にこっ!!

「よし、落ちるぞ。笑ったまんまで‥‥そぉれっ!!」


「───我ら『まじっくぴえろ』の新メンバーに、盛大なる拍手をお願いいたします!」



商店街の真ん中に、割れんばかりの拍手が響き渡った。

僕は樹さんに腕をつかまれるまま、あちこちを向いてお辞儀をする。地面に降りた瞬間にかぶせられたピエロの仮面が左右にずれるのを、なんとか抑えながら。

そばにいるのは一美くん。いつの間に着替えたのか、立派なステージ衣装で笑顔を振り撒いている。

和子ちゃんは降りしなに赫さんのところに飛ばしたのでここにはいない。今ごろはきっとみんなとパフェを食べているのだろう。まぁ最初の一口は僕の口に放り込んで行ったから、その点で不満はないけど。


それにしても、まさかマジックサークルに所属することになろうとは。自分の身の上を考えると妙な笑いがこみ上げてくる。 僕たちがあまり目立ったことをすれば、居づらくなるのは目に見えているんだ。特に現代の日本では。


このままマジックをやり続けたとして、騒ぎを起こさないでいられるのはせいぜい───

「一年」

「?」

低いつぶやきに振り返る。

「最長一年。朋さんにはそう伝えるとしましょうか」

壁に立てかけてあった杖を取ると、赫さんはそのまま駅のほうに歩いていった。

「一年。か‥‥」

その背中を眺めながら、僕は思わずつぶやいた。一美くんに腕を引っ張られて、形だけ即席マジシャンに戻しておく。



四月一日。パフェが空から降った日。この街で過ごせる期限が決まった日。


成功しても失敗しても、あと一年‥‥‥


お客様への最後のごあいさつが終わって、わたしはステージ代わりの台をトラックへ運んでいる。

だいたい片付いたところで、聞きなれた声が聞こえてきた。

「一美ぃ〜!」

声のほうを振り返ったら、和子と鉄生さんが一緒に歩いてた。手にはパフェ‥‥の うつわ・・・ を持って。

「ごめ〜ん。溶けちゃったぁ」

‥‥‥

「代わりに、あまりのイチゴ、あまったホイップと混ぜてみたの。ほら!」

わたしは、和子の目を上目づかいに、じと〜、っと見てた。けど、途中で吹き出しちゃった。

まったく、さっきまであんなに高いところにいたって言うのに、もう笑ってるんだから‥‥だから、かなわないんだな。和子には。

うん。和子は無事だし、了さんは『まじっく・ぴえろ』に入ってくれるし、わたしは久しぶりにステージ衣装が着られたし。パフェはなくても、ま、いっか。



四月一日。パフェが空から降った日。面白い人たちと知り合えた日。


暗い中三も、これで結構楽しくなるかも♪