『男爵vs大妖精 湖上の大決戦』ですか??

 薄く目を開くと、明るい陽射しが入ってきた。

 薄暗い場所の似合う者としては、少しばかり場違いだ‥‥が、ここはどこか。やや身体が揺れているところを見ると、船の上のようだが、潮の匂いもしない。それにたしか俺は、連れと一緒に東洋あたりまで歩いてきていたはずだが‥‥

「ボウズ、ここはどこだったかな?」

 言って思わず苦笑した。『ルー・ガルー』ではなく『ボウズ』とは、俺もずいぶん人間らしい扱いするようになったもんだ。

 ボウズじゃない、オリヴィエだ‥‥その言葉を待ちながら、片手で杖を探していたが、帰ってきたのは別の声だった。

――おはよう、サラマンダー男爵。

 ん?

 いや、声‥‥ではないな。頭に聞こえてくる音、というより思念か。

 杖を掴んですっと身体を起こすと、目の前は毛で埋まっていた。見上げれば、人より大きな緑の毛玉が、上についている目玉を俺の方に向けている。

「なんの用だ、妖精」

 俺は緑の毛玉にひとこと言った。おそらくは強く思えば伝わるのだろうが、そこまでサービスしてやるつもりもない。

 そう、これには見覚えがある。あのパリでの闘いで邪魔をしてくれた毛玉だ。

――近くにお越しのようだったのでな。また若き友が会いたがっていたこともある。

「ほう。それで、その友とやらはどこにいる?見当たらないようだが」

――別の場所におる。

「これはまた勝手なことだ。会いたいと言って呼んでおいて他にいるだと?」

――不満かな?

「これを不満じゃない奴がいたら、その場で()み砕いてやろう。そんな奴には頭などいらん」

――なるほど。流石(さすが)に我が友の頭を()われてはたまらんな。ではしばらく、吾輩(わがはい)がお相手しようか。

「お前が、だと?」

――そうだ。サラマンダー男爵。

 しかし、さっきからいちいち呼び方がカンに(さわ)る。

「妖精ごときにそんな呼び方をされる覚えはないな。
 そもそも俺は負けてないし、抑えられたとしても妖精にではないぞ」

――男爵とは尊称だと記憶していたのだが‥‥こだわるところは人それぞれだ。では男爵殿とお呼びしよう。

「オリヴィエ!来てくれたのね!」

 私が温室に入ったとき、聞こえてきたのは喜びにあふれた孫娘――つぼみの声だったわ。

「ん〜〜〜〜〜んっ!」

「うわーっ、ばかばかばかばか!いきなり抱きつくなーっ!」

 あらあら、つぼみったら、制服のまま小さな子を抱きしめちゃって。なにを始めたのかしら?

「ま、こーなったらしょーがないわよ。つぼみの場合」

 そばにいたお友達――えりかさんも、あきれた顔で見ているわね。

「でも、なーんでいまごろ?世界を見て回るんじゃなかったの?」

「東洋の国から、砂の中を歩いて来たところまでは覚えてる。それがいきなり霧が濃くなって、気がついたらここにいたんだ‥‥」

 ああ、そうそう。えりかさんと子供の話でわかったわ。みんなでパリに行ったときに出会ったお友達ね。たしかオリヴィエさんと、もうひとりは‥‥そう。

「まぁ。それはきっと、コッペのしわざね」

 私はそのまま3人に近づいて声をかけたの。

「おばあちゃん。‥‥コッペさま?」

「なんで?」

 ふたりの女の子がきょとん、とした顔をしてるのを見て、私はちょっと笑ってしまったわ。そう、そういうことなのね、コッペ。

「さっきコッペから連絡があったの。場所を使わせてほしい、って」

――ところで男爵殿、ここはどうかな?

 どうやらこの妖精、俺の呼び名を勝手に決めたらしい。危害を加えるつもりもなさそうだし、そのくらいは許してもいいが。

 ここはどうか、か。

 言われて見渡せば、三方は広い水。真水のようだがわずかに波があるだけの(みずうみ)、か。

 残りの一方にはやや緑もあり、ずいぶんご立派な建物もある。妖精の口調からすれば、自慢の場所なのかもしれんな。

「一見、悪くない場所に見える、が‥‥」

――が?

「だめだ。まるっきりな」

 俺は両手を大きく広げて、言葉を放り投げた。

――ほう、どこがかね?

「明るすぎる。ゴミひとつ、枯れた花や葉の一枚もない。湖なんて見てみろ、動くものひとつないじゃないか。こんなところにいたらダメになるぞ。化け物だろうが、人間だろうがな」

――ふむ。気に入ってもらえるかと思ったのだがね。

 妖精は淡々と(こた)えてきた。確かにここは、妖精にはいいところなのかもな。それ自体、気に入らないが。

「『よいこころ』とやらを集めようとした場所なんだろうが、そんなとこには居たくないね。『悪いこころ』がなくては」

――悪いこころか。それなら、あそこにある。

 妖精がまっすぐ手をかざした先は、先ほど見た立派な――宮殿と言っていい建物。その手がぐい、と上下すると、俺の目に、宮殿の中の風景までが遠見(とおみ)眼鏡(めがね)のように映しだされてきた。中には人間の、女性らしき像が何体も‥‥

 待て。この姿は覚えがあるぞ。いや、覚えどころじゃない。忘れもしない、あのキュア・アンジェの姿!

 ということは、つまり、ここは‥‥

「プリキュア・パレスか!?」

「ええっ! サラマンダー男爵をプリキュア・パレスに呼んだのぉ!?」

「正しく言うと、パレスのそばにある湖に、よ」

 私がにっこり笑いかけると、つぼみが何やら考えだしたわ。

「ええと、それじゃ‥‥『男爵vs大妖精、湖上の大決戦』、ですか??」

「つぼみ‥‥あんた、なんか楽しんでない?目がキラキラしてる、っての」

「いえ、べつに、その‥‥」

 あらあら、ふたりとも緊張感ないわねぇ。オリヴィエくんの方が、ぎゅっと両手を握って緊張しているくらい。

「だいたい、なーんで男爵が先なのよ。こーいうのは善いモノが先で悪モノがあとでしょ?」

「男爵は悪者じゃないっ!‥‥うわわわわっ!」

「そう、そうよね、オリヴィエ〜。ごろごろごろ〜」

「やめ‥‥やめろって、もう!」

 また抱きついて、撫で回してるつぼみを見ていると、苦笑するしかないわね。でもね、つぼみ。あなたの言葉、正解ですよ。

「ふふふ。たしかに、大決戦かもしれないわねぇ。コッペにとっては、ね。」

――いかにも、ここはプリキュア・パレス。来たかったのではないのかね?

「ああ」

 俺の目は、真っ直ぐ宮殿を(とら)えていた。俺たちにとって、こころの大樹と共に叩くべき場所、プリキュア・パレス。

 だが、その手前には妖精が、人間にとっては大きな身体を盾に俺を見下ろしている。

「パリで俺が闘いをやめたのは、プリキュアたちのせいだ。おまえ、俺の邪魔をちょっとできただけだ、っていうのを忘れてないか?」

――覚えているとも。それでも、だ。

 それでも。

 妖精は動かず俺を見ている。

「確かにおまえは普通の妖精よりはデカいな。だが、キュアアンジェの妖精はもっとデカく、そして強かった。それでも俺に傷ひとつつけられなかったんだぞ?」

――だろうな。吾輩も、偉大なる大妖精たちのことは知っておるし、一人だけだが会ったこともある。吾輩など及びもつかぬ方だった。

「それでも、か?」

――無論、それでも。

 それでも。

 それでも盾になる。それでもひとりで俺をここに呼んだ。か。

「‥‥やめとこう」

 ごろん、とその場に寝転ぶと、緑の毛玉の気配が近づいてくる。俺はそこにひとこと声をかけた。

「妖精、ひとつだけ()きたい。俺が火竜(サラマンダー)だから水上を選んだのか?」

――そういった姑息(こそく)な考えもなくはないが‥‥宮殿(パレス)が見える場所である以上、火炎をひと息かけるくらい、貴殿には造作もあるまい?

 なるほど。ま、甘く見られてるということでなければいい。

――それで、火を吐く準備かね?

「貴様は俺に何をさせたいんだ」

――ただの確認だ。一応、吾輩も準備はせねばならんからな

「火を吐かれる準備をか?」

――無論。言ってくれればやってみるが。

 目を開ければ、覗きこむ緑の毛玉。

 今すぐ立ち上がって竜に戻り、こいつを焼くのは簡単だろう。だがこいつは以前、俺のその姿をごく間近で見て、一度は弾き飛ばされた。その上で言っているんだ。『火を吐かれる準備』と。これほど平然と!

「やらんと言っている。変身は疲れるんだ」

 俺はごろん、と寝返り打って、妖精に背を向けた。

――ふむ?負けてはいないのではなかったのかな?

「負けてなくても、勝ってもいない。そのくらいの誇りは残ってるさ」

――なるほど。『男爵殿』だな。

 嫌味か‥‥まぁいい。

「大決戦って、それ大丈夫なの?あたしたち行かなくても‥‥」

 えりかさんの声が、さっきよりちょっと心配そうになったわ。そうね、まったく心配してくれないのも寂しいけれど、

「大丈夫」

 安心させてあげよう、と私が口を開きかけたとき、すぐ下から声が響いてきたわ。あら、オリヴィエくん?

「男爵は、認めた相手に変なことはしない。つぼみたちの仲間なら、大丈夫」

 ふふ。つぼみに抱きつかれてボサボサな髪だけれど、まぁ、まだ本気で嫌がってるみたいじゃなさそうね。少し放っておきましょうか。

「一度認めれば、もうからかったりしないから」

「ええ、わかってるわ。コッペも認めてもらいたかったのかもね」

「あのおっさんか‥‥カッコさえつけなければ、もう認めてると思うけど」

「なら大丈夫。コッペは恰好(かっこう)なんて気にしないわ。だれかさんが望まなければ、ね」

 私がちらっ、とつぼみに目をやると、えりかさんがにやっ、と笑ったわ。

「実のおばあちゃんに言われるんだから、あんたのイケメン好きもたいがい(・・・・)よねぇ。って、さっきから気になってたけど、この匂い‥‥ちょっとオリヴィエ。あんた(くさ)くない?」

 言いながらくるりと半回転。いつもながら、えりかさんの動きには驚かされるわね。

「こういう匂いだと思ってましたけど、言われてみれば、臭い、でしょうか?」

「ふ、ふたりしてクンクンかぐな!犬かっっ!?」

 そろそろ大人として止めてやるべきかしら、なんて思ったころ、ふたりの女の子が顔を見合わせて言ったのよ。

「これは」

「やるしかありませんね

「え、な、なにを‥‥うわわっ!」

「おばあちゃん、温室の大浴場借りますね〜っ!」

 ふたりして、オリヴィエくんの手を掴んで、そのまま駆け出して行っちゃうんだから。

 はいはい、と答えはしたけど、どこまで聞こえていたやら。

「まぁ、平和でいいわよね。コッペ

 しばらくの(のち)、俺は船の横で釣り竿(ざお)を持ち、糸を()れていた。

 遠くにプリキュア・パレスを見ながら、何もいない湖で釣りなど、暇人もいいところ‥‥だが、

――少しは、落ち着いたかな?

「そうだな。たしかに」

 いう間にも、釣り糸はくいくい、と引いている。何もいないはずなのに、まるで俺が飽きないように遊んでいるかのようだ。が、心地悪くもならない。これも、この場所の空気のせいか。

――ならば、吾輩も少しは役に立ったということか。
妖精の本分は、友たるプリキュアの願いに沿うこと。多分フラワーなら、このような願いはしなかっただろうが。

「ボウズを籠絡(ろうらく)したプリキュアか」

 わずかに目が上がった。笑っているのか?

――つぼみ君の望みは、『自分が関わった者すべての平穏』。もっともいま、かの少年が平穏な状態かどうかは定かで無いがな。

「関わった者すべての平穏、か‥‥それはまた、だいそれた願いだ」

 俺の口元が、勝手に笑みを浮かべた。誰にも平穏などとは、神様でも難しい。

――うむ。だが無邪気にそう言われては、退()くわけにいくまいよ。名ばかりの大妖精でも、な。

 俺の横に立って、手から直接釣り糸を垂れている姿は、確かに大妖精にはほど遠い。

――地上に降りたくなったら、かかとを三回鳴らせば連れて行ってやろう。

「オズか」

 またわずかに、口もとが笑みを含んだ。穴から出て以来、いくつも話を読んだ。ボウズの教育とやらにも相応しい物‥‥物語も、そのひとつだ。

――知っているか。さすがに故郷には戻せぬが、出入りくらいならできる

「プリキュアパレスに好き勝手に出入りか?はっ!どれだけの化け物がそれを望んでいることか」

――だが男爵殿は、そんな化け物には教えまい。

 念を押しているわけではない。確認をしているわけですらない。淡々とした口調を聞いていると、俺にもそれがわかる。

「まぁ、ボウズもいることだしな‥‥ん?ところで、ボウズはどうした?」

――あの子か。フラワーの孫娘‥‥つぼみくんたちと、楽しく遊んでおる。楽しく遊ばれている、の方が正確かもしれんが。

「ふぅ。女の遊びは容赦がないからなぁ」

――‥‥その点には同意する。

 ん?

「そうか。お前も苦労しているか‥‥」

――コメントは控えさせてもらおうか。

 ふふふ。

 語ってもわからん相手かと思っていたが、そうでもなさそうだな。

――あまりに(ひど)い遊び方ならば、吾輩からも苦言を呈させてもらおう。心配なさるな、男爵殿。

 わずかに笑って、妖精が言った。俺はそう感じた。

 かぽーん‥‥


 よく音の響く場所――日本の風呂というところで、僕はお湯に浸かってた。

 ふたりして無理やり連れてきて、いきなり着てるもの脱がせられて、

 いつの間にか、自分たちだけ水着に着替えちゃってさ。‥‥別に、ヘンな期待なんてしてないけど。

 けど、ね。


『さぁ、流しますよっ!』

『まってよこら!つぼみは恥ずかしくないの!?』

『なんで恥ずかしいんですか?』

『いや‥‥だって‥‥はだか』

『なーに色気づいちゃってンの。赤ちゃんのオムツとっかえんのと同じよ、同じ』

『僕は、赤んぼうじゃなーいっ!!』


 ああ、思い出したら落ち込んできたよ。犬とどっちがいい扱いなのかわからないや、もう‥‥

「それで、オリヴィエ。どう?世界は?」

「無理やりお湯につけといて、なに、その質問?」

「いーじゃないの。はぁ、温室にこーんなお風呂がついてたなんてねぇ。気持ちいいわぁ。あんたも、そう思わない?」

 えりかがあくびしながら言うのを聞いてると、僕もなんだか気持ちよくなってきた。けどさ。

「そうです。世界をまたぐるーっと回って、疲れたらこのお風呂に入りに来てください。ね、オリヴィエ」

「お風呂だけ?のんびりさせてあげればいいじゃん。1日2日くらいさ」

「えりかが泊めてくれるんですか?」

 つぼみとえりかが、顔を見合わせてそう言うのを、僕は遠くの世界のことみたいに見てた。実際、遠くの世界なんだ。僕たちは、この世界――普通の人たちの中で居続けるのが、難しいから‥‥

「ん〜‥‥あぁ!」

 そんなこと、ぼーっと考えてたら、ぽんっ、とえりかが耳元で手を打った。なんだよもう、いったい。

「それだよつぼみ! だから、コッペ様‥‥」

 のんびりと釣れない釣りをしていると、陽がゆっくり(かたむ)いてきた。

 さっき聞いた説明では、好きな時間で止められるのだそうだが、俺が断ったんだ。そこまでされては、本当にダメになりかねんからな。

――して、男爵殿。ここを()ってどちらへ行かれるかな?

 俺が釣り竿に糸を巻き取るのを見て、妖精が言った。

「世界だな。色々目にして、色々音に聞いて、退屈する暇などない旅に戻るさ」

 退屈なはずの釣りも、なかなか楽しかったが‥‥そこまでは言ってやらないことにした。だが妖精は、宙を見上げて言ったんだ。

――世界か‥‥若き友は、また宇宙に行きたがっておる。だが吾輩には連れて行けぬ。

 苦笑する姿が、やや寂しく見える。そうか、デューンとの闘いには参加できなかったのだったな。

「俺も同じだ、というのか?ふむ‥‥」

 言われてふと考えた。違うというのは簡単なんだが、似てはいるかもな。

「世界を見せるのにも限度はある。見せられるのは所詮(しょせん)、『俺と一緒に見る世界』までだ」

――左様(さよう)。吾輩たちが行けぬ世界は見せられぬ‥‥行けぬ世界へと行くのなら、残されたものが、また先へ進む者が、疲れたときどこかに戻るべき場所が要るのではないか‥‥そう思ってな。

 いつの間にか、妖精の目は真っ直ぐ俺を見つめていた。戻るべき場所、だと?

「ここを、そのために、っていうのか?」

――(かな)うならば。

 無音かと思ったが、耳をすませば聞こえるものだ。水音と空気の音、風が宮殿の――像の間を流れる音。

「ふぅ」

 あのプリキュアの像が並ぶこの場所を、化け物の休み場所に、か。

「お節介(せっかい)もいいところだが‥‥妖精。まだ名前を訊いていなかったな」

――吾輩の名はコッペ。プリキュアの(とも)にしてプリキュアの友だ。

「コッペ、か‥‥覚えておこう。ではそろそろ、かかとを鳴らしたいところだが。いいかね?」

――構わん。しかし、また来れるかね?

「いずれまた、東洋に俺たちの気配がしたら、引っ張ってくるがいいさ。ああ、そのときには『殿』はいらん。『男爵』だけでいい」

 妖精――コッペが目を上げに振った。笑っているのだろう、と俺は解釈した。

 間違っていても、別に構わないがな。

 ばいばーい、と温室の前で手を振るプリキュア達に見送られながら、俺たちはまた歩き始めた。

 ボウズは真っ直ぐ手を上げて振り返している。俺も、まぁ右手を少しぐらい振ってやらんでもない。

 やがて、女達の視線も感じなくなった頃、俺はボウズに声をかけた。

「ずいぶんこぎれいになったじゃないか、ボウズ」

「ボウズじゃない。オリヴィエだ」

「なんだ、気に入ったのか、その名前?」

「そんなんじゃない。ただ‥‥この土地(ここ)じゃそう名乗りたいだけだ」

 いつもとは匂いも態度も柔らかくなったボウズだが‥‥

「モテないぞ、ボウズ」

「何百年もモテてない男爵に言われたくないよ」

 うん、あいかわらず素直にはなれないか。変わらないのは、いいことでもある、な。

「‥‥どうだ、またここに寄ってみるか?」

 俺は空を見上げて、軽く口に出した。そう言えば、あのプリキュアのひとりは、この空のさらに上を目指してるんだったな、などと思いながら。

「たまにでいいよ」

 すぐにかえってきた答えに、思わず頭を戻して覗きこんだが、

「ほう‥‥?」

「ほんとに!たまにでいいんだよっ!」


 赤くなった顔に免じて、もういちど口に出すのはがまんしてやろう。

 『それじゃモテないぞ』とはな。

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