そらいろのおかゆ

 パタパタパタっ、てハタキの音が、部屋に響いた。

 わりと好きなんだよね、これ。あまり使ってないとこでやると、ゴホゴホしちゃうけどさ。

「ヒメ、終わりましたか?」

 そろそろ綺麗(きれい)になったかなー、ってころ、部屋の外から声が聞こえてきた。

「だいたいできたよ、リボン。そっちは?」

「準備はおっけーですわ。ただ‥‥どなたがお見えになるのか、それが心配ですねぇ‥‥」

 ハタキの先を払ってほこりを落としながら振り向いたら、三角ずきんかぶったリボンがそう言ってわたしを見上げてた。

 そう。実はわたしもリボンも、それを知らないんだよね。


 9月ももうじき終わりの日曜日。今日は1日、神さまがおでかけで、めぐみたちもいろいろやることがある、って言うから、わたしは昨日の夜から

 洋服のアレンジしなおしてたんだよね。そしたら神さまが、お昼の前に急に帰ってきてさ、

『お客さんが来るから、空いてる部屋を一つ片付けて』って。それだけ言ってまた出てっちゃって――


「ベッドも、一応用意はしたけど‥‥泊まってくのかなぁ、お客さま?」

 さぁ?ってリボンが首かしげてる。

 そういや、こないだはファントムが使ってたっけ、この部屋‥‥まぁ、シーツもまくらも洗いなおしたし、問題ないと思うけど。一応は大使館ってことになってるんだし、みっともないことできないよね。


 リンリンリン‥‥


 あれ?この音‥‥

「呼び(りん)、みたいですわ。このあいだ、変えましたよね、ヒメ」

 ああ、そうだっけ。きれいな音の方が気持ちいいだろうと思ったんだけど、ちょっと音が小さすぎたか‥‥


 ゴンッ!


 って何よ、その音はっ!?

「はーいっ!」

 わたしは走って、玄関に向かったんだ。

「はいはい、はーいはーいっっ!!」

 呼び鈴はさっき1回鳴っただけなんだけど、そのあとで玄関のドアがごんごんノックされて。そんな(あせ)ンなくていいじゃん。まったくもぉ‥‥

「はい、いらっしゃ‥‥って、え?」

 お客様だっていうから、とりあえずちょっとよそ行きの返事しようとして、途中で止まっちゃった。だって、ドアの向こうにいたの、

「ゆうこ? あぁ、いまお客様が来るから、片付け中なんだ。ちょっと待って‥‥って、えぇっ!」

 ゆうこの顔が、いきなり近づいてきたと思ったら、わたしの方にぶつかった。ちょ、ちょっと、これ、

「い、いきなり倒れてきたぁ!?」

 そっか。さっきのごんごんノックって、これかぁ‥‥ってことは、

「ちょっとゆうこ、大丈夫? なんでこんなふらふら‥‥熱っ!」

 身体でゆうこ支えたまま、片手で顔あげようとしたんだけど。なによこれ、すっごい熱じゃないの!!

「ヒメ、どうしたんで‥‥って大変ですわ!と、とりあえず中へ。ああ、でもどこへ運べば‥‥」

 あとから来たリボンはそう言ってわたわたするだけ。

 あーもう! しょうがないなぁ。

「リボン、さっき(かた)した部屋に連れてくわよ」

「え?で、でも、神さまのお客さまが‥‥」

「そんなの、あとでわたしがいっくらだって怒られてやるわ! ゆうこが先だよ、当然!!」

 リボンが目をぱちくりしながら、でも頷いてくれた。よし、そんじゃ!

「だ、い丈夫。おきゃくって、私だから‥‥」

 目の前の両腕かかえた手に力を入れたら、息の音といっしょに、言葉が聞こえてきた。ゆうこ?

「きょうは、うちの店でパーティ予約あるんだけど‥‥へへ、夏風邪(かぜ)ひいちゃったぁ☆」

 言った瞬間、ゆうこがちょっとむねのあたりおさえて、何度かむせ(・・)はじめた。

 なんか、せき(・・)するのおさえてるみたい‥‥☆じゃないでしょ、☆じゃ!

 せきくらい、ちゃんとやりゃいいのよ。顔にツバでも飛ばなきゃ、わたしは気にしないんだからっ。

「お客様の前でゴホゴホされたら困るから寝てなさい、って言われたの。でも、病気のひとが家にいると、気になっちゃうでしょ?」

 ああ、そっか。パーティのもてなし側が気もそぞろ、ってわけにいかないよねぇ。

「そうしたら神さまが、ご挨拶にきてくれて‥‥大使館は部屋も余っているし、ヒメちゃんの友だちなら歓迎です、って。だか、ら、1日だけ、ごめ‥‥」

 次の瞬間、コンコンコンって音。聞いてて胸が痛くなるせきの音だよ。

「わーかったから、もうしゃべンなって! すぐベッド、連れてったげるからね」

 わたしは、首にもたれかかってたゆうこを抱きかかえた。けど、どうやって運ぼう?

 考えてたわたしの耳に、はぁ、はぁ、って息の音が苦しそう‥‥しょうがない、か!

「ひ、ヒメ、なにするつもりですの!?」

 倒れこんでるゆうこの(ひざ)のうしろに手をやると、リボンが言ってきた。そんなの、決まってンじゃん。

「こないだ、ゆうこがファントム運んだでしょ? それと同じ。たしか、お姫さまだっこ、とか言ってたっけ」

 ええと、たしか相手の腕をわたしの首に回して、背中と膝をかかえて、っと。

「お姫様だっこ‥‥そうでしたっけ?」

 あれ、リボン見てなかったっけ。わたしはばっちり覚えてるんだけどな。

「そうだよ!わたしもいおなも、あきれて見てたたんだからね」

 抱きかかえたまま大使館に行っちゃうんだもんなぁ。ふたりして口あんぐり開いちゃって、止める気にもなれなかったくらい。

 まぁ、めぐみと誠司は平気な顔してたけど‥‥多分、むかしからそういう子だった、ってことなんだよね。

「ゆうこのピンチなら、わたしがやるわ! 本物のお姫さまだっこ、みせてあげる!」

「い、いえ、それは意味が違‥‥ああっ、あぶないですわっっ!!」

 おととっとっとっ!

 首に回したゆうこの腕で調子とって、身体持ち上げようとしたら、そのまま後ろに倒れそうになっちゃった。そんなに重いわけじゃないんだけど‥‥ゆうこにできて、わたしは、ダメ?ううん!

「くっそぉ〜っ!ぜ〜ったい運んでやるっっ!」

 両足よいしょっと広げて、踏ん張りきかせて、

「ヒメったら、ガニ股にまでならなくても‥‥」

 って、いちいち突っ込まないでよね。もう!

「うるさいっ!こうなりゃ意地でもだっこしてやるわ。とぉりゃぁ〜っっ!」

 もうカッコなんて気にしてらんない。両手でゆうこの身体かかえて、っ‥‥

「ん? おおっ、できたぁっ!」

 抱えてる腕が、ちょっと軽くなった。わたしが歩けば、そのまま動いてく。よぉし!

「ヒーメ。よく見てください?」

 へ?

 歩いて階段に向かおうとしてるわたしのお腹を、リボンが突っついてきた。なにさ?

 って、リボンが指さしてる先みてみたら、ゆうこの足が床について、そのまま歩いてた‥‥はぁ。

「お姫さまが、だっこしてるから、お姫さまだっこ。文句ある、リボン?」

 そのままわたしは、さっき掃除した部屋に向かって階段を上がってったわ。


 ゆうこの足といっしょに歩いて、ね。

「さて、っと」

 客間のベッドにゆうこをもぐりこませて、タオルでくるんだアイスノン頭に乗せて、なんとか一息ついたんだけど‥‥さて、これからどうしよっかな。

「看病って、やったことないんだよね‥‥」

 される側はあったけどさ。まだ、ブルースカイ王国が無事だったころ、ね。

 病人には近寄らないのがわたしのしごと、とか言われてさ。こんな近くで病気の顔みることもなかったもん‥‥あれ、なんか顔がにこにこしてるな? あっ、

「ひとの一人ごと、寝たふりしながら聞いてンじゃないわよ! ちゃんと寝なさーいっ!」

 まったく。油断もスキもあったもんじゃない。

「ふりしてるくらいなら、どうして欲しいか言やぁいい、ってのよ」

 ぱたん、と部屋のドア閉めて階段降りながら、言葉が勝手に出てきたよ。

 そう。言やぁいいのよ、わがままくらい。病人なんだからさ!

「ま、それを言わないのがゆうこなんだけどね」

 言ってから、ちょっと笑っちゃった。ゆうこだけじゃないか。めぐみもいおなも、それに誠司まで。みーんないじっぱりなんだもんなぁ‥‥って、わたしもか。

「これでよくもってるなぁ、ハピネスチャージチームは」

 それも、ゆうこのおかげ、ってとこあるんだよね‥‥


「よし!今日くらいはお世話しましょっか!」

「ねてる‥‥かなぁー?」

 おおきなカゴ抱えながら、ちいさめの声でゆっくりドアを開いたら、奥のベッドの上でアイスノンがちょっと持ち上がった。

 うん、ちょっと顔色よくなったね。それじゃ、っと

「はーい、お着替えの時間ですよー」

 寝てる間に、むかし病気だったときのこと思い出しながら、いろいろ(そろ)えてみたんだ。

 とにかく寝かせるのが先!だったから、来たときの服のまんまでベッドに放り込んだんだもんねぇ。

 一応ちゃんとした寝巻も持ってきたし、さっさと着替えさせないと。

「お風呂は入れないからね。おしぼり持ってきたよ。ちょっとあったかくするから、さぁ、脱いで脱いで」

 エアコンちょっと弱くして、寒くないようにしながら、(あった)めといたおしぼりだして‥‥

「ん〜‥‥」

 あ、こら!

「あぁ!もう、カードで変身しようとかすんじゃないの!ちから使っちゃうから、治り悪くなるじゃないさ?」

「そうかな‥‥でも、着替えって、ある?」

 ああもう、ちゃんと起きれるようにはみたいだけどさぁ、

「あるよ、ほら!サイズはいろいろ。こっちで買ったのもあるし、リボンが作ったのもあるし」

 病人がンな心配すんじゃない、っての!

「もう汗びっしょりじゃない。ほら全部脱いで、カゴ入れちゃってさ」

 持ってきたカゴから寝巻とか出して、ベッドの脇に置いて、と。ええと、おしぼり冷えてないよね‥‥


「ヒメちゃんのぱんつって、ヒメちゃんが洗ってるの?」


 へ?

「だから、ぱんつ」

 一瞬、なに言ってるのかわからなかった。けど。

「ぱんつ‥‥パンツぅ!?」

「そう。下着の方の。いま、脱いでって言ってたぱんつ。どうかしたの?」

 ‥‥どうもしてない、よね。うん。単にパンツの洗濯のはなしだもん。

「リボンが洗ってるのかなぁ、とも思ったんだけど」

「わたしのぱん‥‥下着は、わたしがちゃんと洗ってます! ブルースカイ王国でだって、ひとにまかせたりしてないんだから」

 って、言った瞬間にゆうこの顔がハテナになった。

「なによ、その顔は」

「ううん、ちょっと、意外で」

 あ、なんかカチンとくるな。

「わーるかったわねぇ。やってそうでなくて」

「そうじゃなくて‥‥まわりの人が止めるんじゃないかなぁ、って。そっか、自分で干してるのか‥‥じゃ、神さまのぱんつも、ヒメちゃんが?」

 神さまのぱんつぅ!?

「いやぁ‥‥そう言えば、見たことないなぁ、神さまの洗濯ものって」

「替えてない、わけじゃないわよねぇ」

 そんなわけは‥‥でもほんとだ。なんでわたし、知らないんだろ?

「それはですね。ブルーさまは、ご自身で洗濯なさるからなのですわ」

 あれ、リボンの声?

 ドアからとことこ歩いてきたリボンが、わたしの肩にひょいっと飛び乗ってきた。

「そうだっけ? だから洗濯機に男物入ってたことないのかぁ」

「あれでも気を使われてるんです。ブルーさま」

 あれでも、だって‥‥けっこう言うなぁ、リボンも。

 ‥‥ああ、いけない。そんなことより着替えだよ。さっさと脱いでからだ拭かなきゃ。


「中学生の女の子には、男物はさわされられない、ってことかしら。逆は問題ないのにね。相楽くんとか」


 いぃっ?

「せ、誠司が、なに?」

「よく女の子のぱんつ、洗ってるものね」

 え〜ぇっ!?

「ほ、ほんとに? まさか、めぐみのを‥‥」

「めぐみちゃんのは洗ってないなぁ。お隣さんだから、干してるのはよく見てると思うけど。洗ってるのは妹さんとか、お母さんのよね、自分のといっしょに干してるんだもん。普通に」

 あ、あ、あぁ。そっか。そりゃそうだよね。

 っていうか、なにほっとしてんのよ、わたしは!

「あ、そういえば、相楽くんのぱんつの色、知ってる?」

「知ってるわけないでしょ!!」

 思わず声が荒くなって、口おさえちゃったよ。いけないいけない。

「そっかぁ。白、なんだよねー」

 しろ?へぇ。意外だな。

「走ったりしてるし、汚れるから色付きかと思った。白なんだ‥‥で、なんでそれ知ってるの?」

「めぐみちゃんが言ってたぁ。きょうも白ぱんで、妹さんとお揃いだな―って」

 思わず天井見上げちゃったじゃない。男子中学生が、女子小学生とおそろいって、あんた‥‥

「かわいいよねぇ

 ん〜‥‥かわいい、ねぇ。まぁ、わからないこともないけどさ。

「で、ヒメちゃんは、白?」

「ううん、今日はピンク‥‥って、なんの話よ!?」

 がばっと顔もどしたら、脱ぎ終わったゆうこが立ってた。

「あー、じゃわたしの替えもピンクでいいよ。おそろい、おそろい♪」

「いいから、とっととからだを拭いて下着に寝巻着て寝てろっっ!

 ってこらぁーっ!すっぽんぽんのまま抱きついてくるなーっ!!」

 いきなりなにすんのよ。もうそんな熱ないじゃないのっ!

「ヒメちゃんあったかいし、だめぇ?」

「だーめに決まってンでしょーがぁ! ったく、からだ押し付けて、なに考えてんのよ‥‥」

 ゆうこのからだを押しのけた瞬間、ふっと手が自分の胸にとまった。‥‥もうっ!

「かわいいよねぇ

「イヤミかこらぁっっ!!」

 いや、いやいやいや、もう(だま)されないぞ。こんなときイヤミなんか言う子じゃないって、知ってンだかんね!

「ひとりになりたいなら出てったげるからさ、もちょっとちゃんと言ってよね!

 ‥‥わたしだって、心配してんだから」

 リボンが持ってきた、暖かいおしぼりをゆうこに渡して、わたしは背中向けたんだ。

「ん。ごめんね


 わかってるよ。わたしたちは、チームなんだもん。

 台所でエプロンつけて、まわりをぐるっと見回しながら、使いそうなもの並べてみた。

 ああ言っとけば、ゆうこもちゃんと着替えて寝てるだろうし。そのうちお腹もすくだろうから、からだの中もあっためないとね。

 さて、

「おかゆ、か‥‥」

 せともののナベを見てると、ファントム思い出しちゃうな。あのとき、おかゆ作ってたゆうこは、ええと、まず‥‥

「材料は、お米、だっけ?」

「本も見ないで大丈夫なんですか、ヒメ?」

 へ?

 振り向いたら、リボンがじっとこっち見てた。

「だーいじょうぶ。まずはお米をナベに入れて洗って、と」

 ざーっ、とナベに半分くらい入れてから、流しに持ってったら、

「ヒ〜メ、台所洗剤なんかで洗ったりしちゃダメですよ?」

 言うと思った。はぁ。

「失っつ礼ねぇ、わたしだって漢字くらい読めるわよ。米を(みが)くんだから、クレンザーでしょ?」


 すぱかーんっっ!!


「あいたたたたた、なーにすんのよリボン!」

「なーにすんのよ、はこっちのセリフです!

 お米は『みがく』んじゃなくて、『とぐ』んです。お水だけで!」

 あ‥え?

 わたしがちょっと迷ってたら、目の前のリボンがため息ついた。ふぅ、って。

「ヒメ? お米ははお祈りしながら洗うんですのよ」

 え?

「お祈り?」

 そのまま流しに入って、お水いれたナベの中に手を入れて、

「そうですわ。ほら、こうやって‥‥」

 あ、両手で水の中のお米をはさんで‥‥ええっ、ほんとにお祈りしてる!?

「こうするとですねぇ、お米とお米がスリスリされて、やさしーくきれいになってゆくんです」


 スリスリ、スリスリ‥‥


 うん。わかるよ。少しづつきれいになってくの。

 リボンの、こんなにちっちゃな手で、少しづつ、少しづつ‥‥

「代わるよ、リボン」

「はい?」

 そうだよ。わたしの方が手が大きいんだもん。

 いままで、こんなちっちゃな手のおっきな思いを、わたしはずっと受けてきたんだもん。

「できるよ、わたしには。やってもらいっぱなしになんて、なるもんか!」

 ばたーんっ!!


 いけね、ドア()っちゃった。しょうがないんだけどさ、両手ふさがってるんだから。

「はいおまちーっ!」

 ちょっとヤケぎみに声あげたら、向こうでベッドから起きた人影がみえた。

「わ、きたきた。おかゆね♪」

 うん。さっきよりいい顔になってるよ。それじゃ、ナベをテーブルに置いて、そのままゆうこの前に、と。

「はい、わたしのおかゆ。文句言わずに食べてよね」

 スプーンを渡してナベのふたをとりながら、わたしはできるだけ元気に言ったんだ。

 徹夜したからちょっと眠いし、それ以上に‥‥味見はしたけど、そんなに自信ないから、ね。

 そしたらゆうこが、スプーンですくったおかゆを、わたしに見せてきて、

「ふふふ。おかゆに、ヒメちゃんが映ってるわ。

 空色の髪の、空色のおかゆ、ね

 ほんとだ。青い、おかゆ、か。

「わ、わーるかったわね。どうせ食べにくい色ですよーだ。味だって、慣れてるひとよりさぁ」

 ぱくっ

 青いおかゆを口にいれて、ゆうこがちょっと笑った。

「んーそうね‥‥実はいちばん上手なのは相楽くんなんだけど」

 また、ぱくっ

 え? やっぱ、ゆうこって‥‥

「え? ちがうちがう。相楽くん、妹さんの世話でむかしから料理してるから、慣れてるのよ。きっと、ぱっと作ってぱっと持ってきてくれるわ」

 またまた、ぱくっ

 めぐみよりうまいんだ。なんか、納得しちゃうけど、いいのかなぁ?

「あ、他のひとのこと考えてるでしょ。めぐみちゃんはもちろん作れるわ。でも、おりゃ〜って感じで作るから、病気の人にはちょっとね。いおなちゃんは‥‥よくわからないけど、なんとなく、おっかなびっくりな感じじゃない?」

 もひとつ、ぱくっ

 ふぅん。よく見てるなぁ‥‥ってことはもちろん、わたしのことも見て想像してたんだよね。どーせ想像どおりですよ。

「はいはい、病人なんだから、好き嫌いくらい言ったっておこらないわよ。まっずいおかゆ食べて、ちゃんと寝ちゃえ!」

「ふふ。でもね、このおかゆは、おいしいわ」

 もう、なんで昆布もつままないで、おかゆだけどんどん食べるのさ。

「いやだから、そんなに無理して食べないでよ!」

 ってあれ?引っ張られて、そのまま取られちゃった?

ここで食べる(・・・・・・)このおかゆは、ほんとうにおいしいの。ごちそうさまでした

 ずいぶん熱もひいたけど、お言葉にあまえて、寝かせてもらいましょうか」

 そう言って、カラになったナベをテーブルに戻してから、ゆうこがまたベッドに横になった‥‥

 のはいいんだけど、うわわっ!?

「こらこらこらっ!わたしは抱き枕かっての!!」

 わたしごとベッドの上に倒れ込んで、そのまま寝息立て始めちゃってるんだもん。寝つきいいなぁ‥‥いや、まだ起きてんのつらいのかな。

「しょうがないなぁ。まったく、こうやって寝てる分にはかわいいんだから

 ふわぁ。

「あー、寝てないのがそろそろきちゃったかぁ‥‥」

 なんだか、ちょっと目が重くなってきたなぁ‥‥ちょっとだけ、いいよね。

「こんにちはー、めぐみでーす。ゆうゆうがここで寝てるって、ほんと?」

 大使館の扉にカギかかってないの、不用心だなぁ、って思いながら、あたしは中に入ってみた。

 電話にも出ないし、どうしたんだろうなーって思いながら おおもりご飯で話を聞いて、大使館にやってきたんだけど‥‥


「ええっ!?」

「しーっ」


 ひとの気配のする部屋に入ったら、驚いちゃった。

 だって迎えてくれたのは、その本人なんだもん。

 それに、ちょいちょい、って指さした先を見たら、

「寝てるね‥‥ゆうゆうじゃなくて、ヒメが」

「ええ、ねてるわ。満足して、ね」

 満足?なんのことかな、ってちょっと思ったけど、ゆうゆうがいつもの笑顔になったから、それ以上は聞かないよ。きっと‥‥

「ひっどいなぁ。なんであたし呼んでくれなかったの、ゆうゆう?」

「いいのよ。わたしも、ごちそうさまを返したかったんだから」

 ‥‥そっか。

 ゆうゆうの笑顔が、いつもより優しい感じになって、あたしもちょっと嬉しかった。


「ほんとうに、ヒメちゃんがいてよかったなぁ。ふふ

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