かわのなかからこんにちは(暫定版)

「あーつーいーーー」


 セミがミンミン鳴く中、あたしは山道を歩いてたんだ。

「ほら咲、もうちょっとだから、歩いて歩いて♪」

 背中からの舞の声にせかされながらね。


 だいたい、なんでこんなことになったかってぇとさぁ――


 中学最後のソフトの大会が全部終わって、ようやく夏休みだーって思ったんだけど、家にいると手伝いだしね。

 いや、手伝いは嫌いじゃないけどさ。せっかくやること終わったんだから、ちょっとはのんびりしたいなぁ、って。でも、そとは暑いんだよねぇ。

 なんて、朝にかかってきた電話でちょこっと舞に愚痴っちゃったら、いきなりやってきてさ。寝巻のまんまで連れてこうとするんだよ。急いでシャワー浴びて着替えたけど、まいったなぁ――


「ほら、もうちょっと♪ もうちょっと♪♪」

 なーんか、背中の声がはずんでるよ。そりゃ、木が多いから家よりは涼しいけどさぁ、ちょっと前まで毎日走りこみしてたあたしより、舞の方が楽に登ってるのってどーなんだろ? 行き先も、おおぞらの樹だってわかってるんだから、のんびり登らせてよぉ‥‥

「ええと、ここで曲がるのよね。えい♪」

 ‥‥って思ってたら、いきなり横から押された!?

「うわわわっ! いきなり押さないでよ‥‥って、あれ?」

 大空の樹に行く道の手前、押されてちょっと下りになった道の先にが開けてて、川が流れてた。

 川の手前には、ひとがふたり‥‥満と薫が並んでこっちを見てるよ。いつもは、おおぞらの樹のそばにいるのに。

「早かったわね」

「ほんとは昼からの営業なんだけど。舞がいきなり連絡くれたから、準備して待ってたのよ」

 結構な勢いで飛び込んできたのに、ふたりとも落ち着いてるなぁ。

 そっか、営業ね‥‥満と薫、お金を自分で稼ぐんだー、って言って和菓子を作って、うち――パンパカパンで売り始めたんだよね。でも夏はあまり売れないとか言ってたっけ‥‥ってことは、

「和菓子に、準備?」

 あたしは思わず首をかしげちゃったよ。

「すっかり暑くなっちゃったから、最近はつめたい和菓子を作ることにしたのよ。ここから動かせないから、咲のお父さんにはごめんなさいしたけれど」

 満がちょっと残念そうな顔で言ったよ。

 そう言えば最近うちに来ないなぁ、とは思ってたんだ。てっきりあたしが部活ですれ違ってるのかと。

「咲の大会が終わったら、食べに来ようと思ってたの。暑さでうだってるから、ちょうどいいかな、って
 さぁ、薫さん、お願いね」

 舞の言葉に、薫がうなずいたと思ったら、

「ムープ、お願い」

 満が紐をつんつん、っと引っ張ったとたん、川の真ん中が盛り上がった。

 水がだんだん、流れていって、出てきたのは見慣れた丸っこいからだ‥‥って、これ、

「ムープ!? ちょっとちょっとぉ、いっくらあたしでも、仲間は食べないよ!!」

「仲間? ‥‥咲はまんじゅうが仲間なの?」

 へ?

――まだつづきます――

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