のっけてはこんで

「満と薫は、何に出るの?」

「え?」

 咲が声をかけたら、薫さんと満さんが驚いた顔で振り向いた。

 ここはおおぞらの樹のすぐちかく、ふたりの住んでいる家の前。

「なにって‥‥?」

「なんのこと?それに舞も、その姿は?」

 言われて、わたしは咲と顔を見合わせたわ。

 姿って‥‥ジャージよね。だって、

「ほら、プリキュアで集まって体育祭やるから、参加してって連絡きててたじゃない?」

 わたしが言ったら、今度はふたりが顔を見合わせちゃった。もしかして‥‥

「あたしたちに声かかったんだよ。もちろんふたりにも来てるでしょ?」

「いえ‥‥」

「だって私たちは、プリキュアじゃないし‥‥」

「なーに言ってンの!あたしたち4人でプリキュアだよ?ふたりだけ違うなんて、ないない!
 だいたい、変身なしなんだから、違うって言うヤツいたって大丈夫だよ」

 咲がちょっとだけ、むっ、とした顔したけど、なんとか押さえてくれた。そうよね、プリキュアも大人数になっちゃったみたいだし、実行委員のひとたちが、単に間違えただけよ。連れて行ってあげれば、一緒に参加できるわ。

 でも、ふたりは首を軽く横に振ったの。

「それにね。わたしとかおるは、みんないっしょに競争とかできないから」

「なんで?」

 咲が言うと、満さんが足元の石を拾って、

「‥‥ほら」

 手に握った石が、ぱらぱらと砕けたわ‥‥あぁ。

「ね?変身なしだったら、そもそも勝負にならないもの」

「フェアにはできないわ。どうしたって」

 口元だけ苦笑いの顔を見てると、次の言葉が出なかった。そう‥‥よね。でも、そんなこと関係ないのに。参加して、並んで何かするだけでもいいのに。

‥‥いっしょに、するだけで? あっ!

 

「すぷーんれーすだよ」

 

 わたしが少しちっちゃい子の感じで言ったら、3人そろって目をまんまるくしたわ。ふふ。

「スプーンにピンポン玉のっけて運ぶの」

「あぁ!そっか。みのりがそんなこと言ってたっけ。小学校の運動会でやるんだ、って」

 そうそう、言ってたわよね。わたしたちがジャージに着替えてたら。

「みのりちゃんが?でも、それこそ私たちには簡単じゃ‥‥」

 ふふ。思ったとおり、薫さんが少しだけ乗ってきたわ。

「いーや。やってみなよ」

 咲がぽん、っと手渡したのはスプーンとピンポン玉。どこに持ってたんだろう?

 あ、ためいきつきながら薫さんがピンポン玉を乗っけて‥‥

「ほら、このくらい簡た‥‥」

 ころん

「あ、あら?」

 へへーん、って言いそうな顔して見てるわね、咲。

「コツはいるみたいね。でもちょっとさわれば‥‥あ」

 乗っけて、落として、乗っけて、おとして。

 ピンポン玉がスプーンと床をいったりきたりしてるの、わたしと咲でじーっと見てたんだけど。

「ほぉら!大変でしょ?」

「‥‥軽すぎるわ」

 そう言ったと思ったら、薫さんはいきなり家の中に引き上げていったのよ。満さんといっしょに。

 かーん

 

 なんだか、嫌な予感がするのよね‥‥

 

 かーん、かーん

 

「な、なにやってんだろ?」

 咲がわたしの方みて首かしげたけど、同じようにかしげるしかないわ。

 この金物たたいてる音。これってまさか‥‥

 

 かーん、かーん、かーん‥‥かちゃ

 

 音がおさまって、家の中からふたりが戻ってきたのを、わたしと咲でびっくりしながら迎えたの。

 だって、

「できた」

 そう言って、ふたりして抱えてるの、それ‥‥

「なに、そのドでっかいスプーン!?」

 そう、わたしたちと同じくらいの大きさだけど、どう見たってスプーン、よね。

「ええ、スプーン。金の精霊さんと火の精霊さんの作品だから、軽くて丈夫よ。だから‥‥みちる、ちょっと乗って」

「わかった」

 薫さんが構えた大スプーンの先に、満さんが乗っかった。それを‥‥ええっ!運ぶの!?

「スプーンでなにか運べばいいのなら、こっちがいい」

 いい、って、ちょっと、ねぇ‥‥

「たしかにね。これならピンポン玉運ぶより楽しそうだわ」

 となりに目をやったら、咲がわたしをじぃっと見てた。な、なに?

「じゃ、乗って、舞♪」

 え?

「だから、乗って、って。これこれ」

 これこれ、って、指さした先に、薫さんが持ってたのと同じ、おっきなスプーン‥‥えええぇっ!?

「わ、わたしも乗るの!?」

 驚いてちょっと動けなかったら、咲にスプーンでひょいっとすくわれちゃった。わわわっ!

「たしかに軽いや。これなら肩で調子とれば、運べるよ♪」

「わたしたち、チーム違うのよ!?」

 いや、そんなこと言ってる場合じゃないのは、わかって、る、けどぉ〜

「いーじゃないの、せっかく満たちがノッてるんだし、このまま実行委員に競技にしてもらいに行くよォ、それわっせ、わっせ

「まって!まって!!まってぇ〜っ!!!」

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