おっきなかさ・ちっちゃななべ

 もうすぐ体育の日。

 といっても、体育祭は季節が違うし、文化祭ももうちょっとあと。それにもう高二も中盤すぎてるから、自由な時間はないわ。

 それでも、部活はちゃんとやらないとね。なんたって、2度目の副部長なんだから。

「ねぇ、ユリコ?」

 ふりかえると、ほのかがフラスコ持って立っていた。

「今年はバイトしたの?」

 ああ、去年はいろいろやったものねぇ。

「いいえ、今年は勉強に集中よ。あと部活ね」

 そして、体育の日が近いってことは‥‥

「でもプレゼントの資金くらいはなんとかなるわ。で、そのプレゼントをもらう人(なぎささん)はどうなのかな?」

 私が(たず)ねたら、いつの間にか私の隣の実験机に腰かけて、

「なぎさはここのとこ、藤村くんといっしょー」

 なんか投げやりな感じで足をぶらぶらさせながら、ほのかが言った。

 ひょっとして、イヤだとか?

「イヤってことじゃないのよ。べつに」

 口に出す前に、ほのかに先回りされたわ。けどね、

「ただやっぱり、去年と同じにはいかないなぁ、って」

 ちょーっと、口調(くちょう)が速いなぁ。やっぱり、気にはしてるのかな?

「それは、私たちだって同じでしょ?永遠なんかないもの。銅があがいたって酸化銅になるだけよ」

「ろくしょー、ろくしょー」

 ろくしょう‥‥『緑青(ろくしょう)』、ね。ふざけた声でお互いわらったけど、私には見えちゃった。ちょっとさびしい笑顔、かな?

「‥‥うん。今度は、ちゃんとやらないとね」

 ほのかに聞こえないくらいの声で、私はうなずいたのよ。

 半年前、今年のほのかの誕生日は、失敗しちゃったからなぁ。なぎささんをプレゼントにしたてるつもりが、自分がプレゼントにされちゃったんだから。

 まぁ、それは私のせいでもあるんだけどさ。

 だから、今度こそなんとかしてあげるんだ、私が。

「ほのかもバイトはしないんだよね?今年はやっぱ塾いっぱい?」

「ええ、まぁ‥‥」

 卒業したら、遠くに行くようなこと言ってたものね。勉強がんばらなきゃ、ってなるのはしかたないんだけど。

「部活どうする?私が部長のしごと代わってもいいけど‥‥肩書きなんて関係ないしね」

 3年の先輩たちは、半分引退しちゃったような感じだけど、ほのかが所属してさえすれば、だれもが納得するのよね。それこそ、ぬいぐるみに『ほのか』って書いて化学室に(ころ)がしといてもいいくらい。あとのことは、私ひとりでも問題ないわ。

「うん‥‥」

「歯切れ悪いなぁ〜えいっ!」

「ひゃっ!?」

 脇をしたからつついたら、ほのかのからだが飛び上がった。よしよし。

「くすぐるぞー」

「もう、や、やめてよなぎさ‥‥あ!」

 驚いた顔といっしょに、ぴたっ、とほのかの動きが止まった。

 あ、あははははは。やっぱ、こころはいっぱい、か。

「いいのいいの、気にしないから」

 ま、わかっちゃいるんだけどね。ええ。

 私はほのかから半分背を向けて、

「あーあ。ほのかにオトコができたら、なぎささん大変だろうなぁ」

 実験机に背中もたれながらちょっと伸びをしたら、

「え?な、なんで?」

 両脇を手でガードしながら、ほのかが訊いてきた。しばらくはさわれないか‥‥それはまぁいいけど。

「なぎささんなら、まずケチつけるわね。顔がすっごくよかったら『裏でなんか考えてそう』、よくなかったら『ほのかと並べられるヤツじゃない』かな」

「なぎさは顔で差別なんかしません!!」

 両手をこぶしにして、ほのかが近寄ってきた。

 はいはい。わかってます。ほんとはそうでしょ、でも。

「でもとにかく、まずケチはつけるわよ。‥‥次はそうねぇ、『頭でっかち』とか『外面だけのヤツ』とか、とにかくどんな人でも悪い部分見つけようとするんじゃない?」

「そんなこと‥‥」

 ちょっとむすっとしちゃった顔を見て、私は見えないように苦笑いした。ほのかには、そうなのよね。

「でもね、たとえば‥‥私がオトコつかまえてきたら、なぎささんはきっと、思いっきり応援する側に回ると思うわ」

「ん? あ!」

 むっとした顔の、眼だけがぱっと広がった。

「わかった?そういうこと。お父さんよねぇ、なぎささんって」

「せ、せめてお母さんって言ってあげてよ」

 ちょっと困って、でもちょっとうれしそうな顔、か。


 そっちも、考えなきゃね。

 夕方のラクロス部室。練習終わったとこに押し掛けたんだけど、私を見たらみんなぱーっと帰っちゃって、残ったのはひとりだけ。

 志穂さんや莉奈さんが中心になって、みんなに目配(めくば)せして部室から追い出しちゃってるんだもの。私がなにしようとしてると思ったのかな?

「‥‥で?あたしにどーしろ、っていうのよ?」

 なんて考えてるひまもないわ。

 ラクロス部のユニフォームを着て、クロスを抱えたまま両手を腰にあてた なぎささんを見ながら、私はちょっと失敗したかなぁ、って思ってた。

 そう、なのよね。なぎささんにどうこうできる問題じゃないんだもの。言っても困るだけじゃない。

「らぶらぶちゅっちゅな関係を控えて、とは言わないけどさー」

「だ、だ、だ、だーれがらぶ‥‥」

「わかってます。これからなんでしょ?そのレベルは。

 なぎささんくらいになると、もう幸せをねたむ気にもならないから安心して」

 そう言うと、なぎささんはむーっ、って口むすんでこっちにらんできた。さっきのほのかとおんなじ顔。やっぱりお似合いよね。

「少なくとも、その点に関して化学部は全員なぎささんの味方よ。‥‥ほのかを傷つけない限りは、ね」

「そんなこと、あるわけ‥‥」

「意識して傷つける(するなんて誰も思ってないわよ。でも人間、うっかりはあるから。ね、なぎさおとーさん(・・・・・)

 私が片目をつむると、なぎささんのむすっと顔が口をとがらせたわ。

「さっき、ほのかに言ったんだけどね。もしほのかにオトコができたら、なぎささんがお父さんみたいになるなぁ、って」

「ほんっと、心配性なんだからなぁ」

 すとん、とイスにこしかけて、頭をかきながら、なぎささんがそう言ってくれた。

 ほのかのことになると、カンがいいのよね、この人は。本当に。

「そーよねー。なぎささんなら心配ないんだしさー」

「ん?なーにさ。変な言い方じゃない」

 私はちろっと、目だけ動かして、

「藤村先輩が相手じゃぁ、文句つけたくてもつけられないからねぇ、ほのかには」

「い、いろんなとこ知ってるじゃん。幼なじみなんだから、文句くらい‥‥」

 ひとこと言ったら、ムキになった。やっぱり‥‥

 そんなこと感じながら、私は言葉を続けたの。

「だから、よ。悪いとこも知ってて、でもなぎささんとなら大丈夫だって、わかっちゃってるんでしょ」

「あー‥‥うん」


 でもね、私なら文句つけられるんだよ。


「もしも、だけどね」

「ん?」

「その‥‥藤村先輩が、なぎささんの身体(からだ)だけが目当てだ、とかだったら、どうする?」

「そんなわけ!」

「実際にそうだとは言ってないわ。もし、よ」

「もしだってそう!考えられないよ!!」

 ‥‥だよねぇ。

 中学のころから、もう3年以上だもんね。近くで見てるわけじゃない私にだって、ちゃんとしたお付き合いってこういうものなんだな、って思えるくらいだもの。でも、

「そんな趣味はないけど。女の私だって、なぎささんがその、『おいしそう』っていうのは理解できるのよ?」

「それは‥‥そう、思ってくれるなら、ちょっと、うれしい、かな」

 目の前の顔が、ぽーっと赤くなった。思ってくれるって、私が、じゃないわよね。

「のろけてンじゃないの」

 思わず持ってたプリントでぺしん、とたたいちゃった。このくらい、いいわよね?


「‥‥やっぱり、こころはいっぱい、か」


 ぱたん、と部室のとびらをしめた瞬間、私の口から言葉が勝手にこぼれてった。

 はぁ、誕生日プレゼント、なんて考えてる場合じゃないわ。どうすればいいのかなぁ、これ。

「ねぇねぇねぇ!ユリコちゃんユリコちゃんユリコちゃん

 次の日のお昼休み。口に放り込もうとしたおにぎりのすぐ向こうに、志穂さんの丸い顔が近づいてきた。

「ほぁ?はひよ(なによ)

「化学部、貸してくんない?」

 ぐっ、げほげほっ!!

「ああ、ごめんごめんごめーん」

 背中が少しあったかくなった。なでてくれるのはありがたいけど、いきなりなによ、それ?

「いやぁ、化学室の奥〜のほうにたからものがある、って聞いちゃったんだぁ、あたし。
 莉奈に言ったらばかばかしいって聞いてくれないんよ。ユリコちゃんなら聞いてくれるよね、ね

 ああ、はいはい。

 志穂さんも、なかのいい莉奈さんと別のクラスになっちゃったから、よく私にからんでくるようになったわ。私は私で、ほのかとクラスがわかれたから、ちょっとした時間の話し相手にはありがたいんだけど。

 それにしても、化学室の奥、ね。

 化学準備室の向こう、立ち入り禁止の部屋はたしかにあるわ。のぞいても壊れたイスとか机とかが積み上げられてて、とてもたからものとは関係なさそうだけど‥‥

「でもねでもねでもね、その向こうにあるんだって」

「なにが?」

「むかーしね、大好きどうしのふたりが、もぉっとなかよくなりたくて作って、ずぅっとなかよしでいられた、ひみつの部屋なんだって!」

 もっと、ずっと、なかよく?

「ほらぁ、わかるっしょ?その名前なんだから。ユ・リ・コ・ちゃ〜ん

 ‥‥ああ、そういうこと。

「なーんか反応よくなーい。あれあれあれ?ひょっとしてそういうの嫌いなひと?」

「嫌いってことはないけど‥‥私とは関係ない世界だから」

 ほのかとなぎささんのこと考えてたから、なかよく、に反応しちゃっただけなんだけど。そっち行っちゃうんじゃ、ねえ。

「ふーん。じゃしょーがないか。ノッてくれたら探検したかったんだけどなぁ」

「ひとりで行けばいいじゃない」

「ほらほらほらぁ、化学室の奥だからさ、一般生徒は近づけないんだよ」

 化学室は、授業じゃないときは部員以外立ち入り禁止。扱ってる薬とか――特にほのかが暴走すると――危ないから、なんだよね。

「ま、そんならしょーがないね。ほかいってみるよ。じゃねー」


「はぁ、あいかわらず、志穂さんは嵐みたいな子よねぇ」

 他の子のお昼グループにもぐりこんでる姿を見ながら、私はちょっと笑っちゃった。あれだけ話しておいて、あっさり他に行っちゃうんだもの。まったく、なかよくなるたからもの、なんて‥‥

 でも待ってよ。ベローネ(うち)って一応お嬢様学校だし‥‥私みたいな例外もいるけど、そこそこメルヘンな方もいらっしゃるわ。っていうことは、よ。

「本当に、なかよくなるためのものが、残されてるかも‥‥」

 もし、もしも、よ。

「なぎささんは大学‥‥藤村先輩と同じとこ、だっけ? でもって、ほのかはフランスに留学、だよね」

 なぎささんとほのかが、離れていてもなかよくいられるもの。もし、それがあるとしたら。

 このまま離れてしまう前に、もし、それがプレゼントできるとしたら‥‥


「しょーがない。私が行きますか!」

「よっ、とっ、このっ!」

 放課後の化学室。

 化学部は本日お休みの張り紙を入り口にしっかり貼って、上下ジャージに着替えて、私は準備室の奥のとびらを開けた。

 机とイスで壁みたいになってて、とても入れそうには見えないけど、

「なかなか、進めな‥‥うわわわわっ!?」

 机と机の隙間をねらって身体を押し込んでたら、不意に周囲が軽くなった。

 思った通り、通れる道があったんだ。‥‥とはいえ、

「いった〜っ! って、なにこれ?これが、化学準備室の奥??」

 ほこりで曇ったメガネを拭いて、もう一度見なおしてみたけれど、落っこったところには大き目のソファーがひとつ。すぐとなりには本棚と机。本棚にはティーカップとポット‥‥狭いけど、まるで、お茶会のための小部屋みたい。

「ああ、やっぱり、うちにはこういう方々がおいでだったん‥‥ん?」

 部屋を見回してほっとした私の目に、違和感があったの。机の上、なんだか見たことがあるような‥‥ないような。

 机の上に何本も行儀よく並んだ、長細くてちょっと曲がってるもの(・・)から私はひとつ手にとって、となりに置いてある単3電池をぼーっとしながら組み込んで、スイッチをオン。

 そしたら、うぃんうぃん言いながら、細長いもの(・・)がぐるぐる動いてるじゃない。あーそっかぁ、そうだよねぇー‥‥

「‥‥えぇっ!?」

 思わず目がさめたわ。これってその‥‥アレ(・・)、よね? みんなできゃいきゃい騒いで、先生に没収されてたティーンズ雑誌に載ってたアレ(・・)。本物を見るのははじめてだけど。

 まさか、これが、『もっとなかよく(・・・・)なれるもの』、って‥‥!!


「そのまんまかーいっ!!!」


 はぁ、はぁ、はぁ、手が勝手にブン投げそうになったじゃないの!

「まったくもう!ベローネ(うち)にはもっとメルヘンな人っていないのっっ!?」

 うぃんうぃんと動いてるアレ(・・)を見てると、ちょっと頭が痛くなるけど、でも、待ってよ?

 これを思い出に‥‥いやいやいやいや!何考えてんのよ私はっ!

 なぎささんはちゃんと彼氏いるんだから‥‥ほのかならまだしも。って!

「ダメだって!そんなんじゃない、そんなんじゃない、そんなのあるわけないないったらないっ!!」


 どささっ!


 ‥‥っ痛たぁ! ぶんぶん手を振っちゃったから、どこかに当たったのかな。なによ、このいきなり上から落っこってきたの、あら?

「本‥‥?」

 かっちりした表紙でタイトルのない本。開いてみたら、ここを作った子の書いた日記だわ。

 何枚かページをめくると、まるっこい文字の並び。1ページに1日ぶん、なにを見て、なにを思っていたのかをずっと、ずっと追って‥‥私は、ぱたん、と本を閉じた。最後までは読まないで。


「‥‥ごめんね。メルヘンじゃない、なんて言って」


 日記をたぶんあった場所に戻してから、電池入れたアレ(・・)のスイッチを切って、私はなんとなくポケットに入れた。もう、ブン投げる気にはならないから。


「さぁ、それじゃ戻ろっか」

 メガネをもう一度拭いて、顔を上げて、私はまた、机の隙間にからだをねじ込んだの。

「あ‥‥きた!」

「きた!来たよ、帰って来た!!」

 あれ?誰かいるのかな。よい、しょっ、と、え!?

 化学準備室に転がり落ちたと思ったら、ぼふっ、となにかにつつまれた。

「なにやってるのよ、ユリコはもう‥‥」

 薬用アルコールとせっけんのにおい‥‥ほのかのにおいに。

「え?なんで?」

「なんでじゃないっ! もう、崩して埋まったら危ないからって、追いかけることもできなかったじゃないさっ!」

 今度はなぎささんのにおい。

 両側から抱きつかれて、私はしばらく動けなくなっちゃってた。

「志穂に会って話きいてなけりゃ、知らずにいたとこだよ! ったく、なにやってンだかなぁ‥‥」

「もっとなかよくなれるもの、ですって? きまってるじゃないの!絶対信じられるともだち‥‥あなたもよ、ユリコ

「ほんと、わかってないんだよ。ユリコはさ。あたしが化学部で信用してンのは、ほのかとあんただけなんだから。言わせんなっての

 信じてくれてる、か‥‥

「じゃ、はい、これ。おみやげ」

「ん?」

 スイッチをオンにしながら、私はポケットのもの(・・)をなぎささんに渡した。

 ま、私のものじゃないし、誕生日プレゼントとは言わないけど。

「なに、この音立てて動いてるの。って、ちょっと、これっ!?」

「知り合いに、ほかに彼氏もちはいないから、ね」

 メガネのほこりを拭いて、できるだけにっこり笑ってあげたら、なぎささんの顔がゆでダコになってったわ。

「まだいらないよっっ!!」

「はいはい。まだ(・・)、ね

 ほおら、なぎささんは、なぎささんだわ。藤村先輩でこころがいっぱいでも。ね、ほのか


「ああもうっ!そういうヤツなんだよ、ユリコはさぁっっ!!」

 真っ赤になってアレを放り投げたまま帰っちゃったなぎささんを、私がしばらく目で追ってたら、

「ねぇ、ユリコ。これって‥‥」

 となりから、不思議そうな声がかかったわ。

 あ、気がついたな、ほのか。

「そうね。いちども使われてないわよ、それ」

 シリコンの部分はビニールで覆われたままだし、ホコリと違う白いコナ、作ったときの保護用のが薄くおおってるし。

 それに、さすがの私も、使用済みのアレ(・・)を友達に手渡したりはしないもの。

「どうしてかしら?」

 両手でアレを持ち上げて、ふしぎそうに眺めてるほのかを見てて、私は言うことにしたの。

 ‥‥たぶん、だけど。

「気づいちゃったのよ」

 あの部屋で見たものを思い出していた私のあたまの中が、勝手に言葉になっていった。

「気づいた?」

「そう。ふたりでもっとなかよくなりたい、ってテンション上げちゃって、いろんな道具をどこからかそろえちゃって、専用の部屋まで作っちゃって。それで、さあ、‥‥ってとこで気づいちゃったのよ。
 自分と相手のからだじゃないものなんか、必要ない。なかよくなるのに、ものなんていらない、って」

 あの日記に、そこまでは書いてなかったけど、なんとなく私にはそう思えたの。もの(・・)のことが途中からなくなって、相手の手と、きもちのことばかりになっていったから。

「な、なんか、見てきたみたいに言うのね、ユリコ」

「そりゃまぁ、いろいろとね‥‥」

 さっすがに、日記のことは言えないけど。先輩がたの名誉のためにも、ね。

「そっかぁ‥‥誰か、いるのね、ユリコ

 ‥‥へ?

「応援するわ。だれが反対しても、わたしだけは」

 ほのかがそっと、私にアレを手渡した。ほんとうのたからもの(・・・・・)みたいに‥‥って、いや、あの、ちょっとぉ!!

「絶対信じられるともだちだもの、ね

 にっこり笑って言ってるけど、ちょっと

「信じなくていいから、そんなのっっ!!」


「それじゃそれじゃそれじゃ、もう必要ないよね?もらってくからー」


 私の手から、いきなり重さが消えた。例のアレ(・・)がなくなってる‥‥って、振り返ったら、ええっ!?

「し、志穂さん!?」

 まぁるい顔が、にっこり笑ってる。な、なんで?

「もっともっと、ずぅっとなかよくなれた、でしょ、ユリコちゃん?
 じゃ、化学部に残しといたら大変なものはひとそろえ、かいしゅーかいしゅー♪」

 よくよく見たら、志穂さんの手に下げてる袋には、あの部屋にあったアレ(・・)がぜんぶ入ってる‥‥

 じゃ、じゃぁ、あの部屋って他にも入口があって、あのたからものって全部、あとから置いたもの?

 そういえばそうよ。あれだけ(あお)っておいて自分は行かないなんて、志穂さんらしくないわ。莉奈さんがダメでも、ほかに友達いっぱいいる子なんだもの。

 でもだったら、あの日記も、全部‥‥

「あ、それとね。日記は本物だから、って書いた本人(・・・・)が言ってたよ。安心して。じゃぁねー


 え? 本・人?


「日記‥‥って? まだなにか隠してるわね、ユリコっ!」

 ほのかの声でわれにかえったけど、もう志穂さんは化学室にいなかった。

 ふふ。そっか、いたんだ、書いたひと。もっとなかよくなって、そのままなかよしでいられているひと。ふふふふふ。

「聞いてるの、ユリコ?」

 それならだいじょうぶ。ほのかとなぎささんにだって、私たちがいるから、

「また危ないことしたら、今度は許さないわよ!」


 だからおとなしく、怒られててあげるわよ。ほのか

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